第11話 ペントハウス

文字数 1,326文字

「なになに? どういう事!?」

あたしは双子とともにペントハウスに戻ると、
先ほどリビングにいた女性が目を丸くして言った。

「いきなり大河の部屋に現れたと?」

おじさんも首をかしげてあたしをまじまじと見た。
おじさんはよく見るドッグフードのパッケージみたいな
犬のキャラクターが付いた黒いジャージを着ている。

女性は綺麗な人だったが、
ライトブラウンの髪色はどことなくあたしらと同じ匂いがした。

「やっぱりテレポーテーションってあんだよ!
この子はテレポーテーションで俺の部屋に来たんだよ!!」

大河が鼻息を荒くして言った。

「またか……」

おじさんは呆れたような顔をした。

「この子、科学おたくなんよ」

女性が言い

「さっき聞きました」

とあたしは答えた。

「君、それは昔の梓山高校の制服だね?」

おじさんが言った。

「昔って言うか今のだけど?」

あたしは自分の制服を確認するように袖やスカートを見回すと、
四人は神妙な面持ちで顔を見合わせた。

「君は梓山に住んでいるのかい?」

おじさんがまた尋ねた。

「あぁ、梓山高校の近くに住んでる」

あたしが答えるとおじさんは
「うーむ」と考え込むような顔をした。

「まず、自己紹介からしようか」

ソファに座るおじさんは前のめりに体勢を変え、
膝の上で手を組みながら言った。

「私は洸星学園うまや橋高校の理事長、東郷銀次郎(とうごうぎんじろう)という者だ。
梓山高校も姉妹校として一緒に経営管理している」

このおじさんが洸星学園の理事長!?

「でも、梓山高校が洸星学園になるのって来年なんじゃ!?」

思わず大きな声を出した。

「いや、うまや橋高校と梓山高校が姉妹校になったのは
もう34年も前だ」

「は!?」

こいつら家族ぐるみであたしをおちょくってるんじゃないか?
そう思った。

「ちなみに今日は何年何月何日?」

大河が聞いた。

「えっと、確か今日は昭和61年10月13日だったかな?」

また四人は顔を見合わせた。

「それ、マジで言ってんの?」

今度は漂が聞いた。

「嘘ついてどうすんだよ!」

少しイラつきながらあたしは言った。

「落ち着いて聞いてな。
今は2021年で令和3年。 
あんたの言う日付から35年後よ」

女性が言った。

「2021!? れいわ!?」

私はますます何が何だかわからなくなった。

「そうや……ってあぁ、私も自己紹介せなあかんな!
私は東郷理事長のお目付役の高槻翠(たかつきみどり)です」

「お目付役って言うか内縁の妻ね」

漂が言うと

「そんなストレートに言わんといてよ!!
あ、そんでこの子らは私の相棒のレモンとライム」

そう言ってベージュ色のチワワと黒いチワワを抱き上げた。

「白い子がレモンで黒い子がライムな!」

翠さんの腕の中のチワワは常にベロがちょっと出ていて、
焦点も定まっていなく、大人しいというか
ちょっとネジが緩んでいる様な顔をしている……。

「理事長は俺らの爺ちゃんで、
爺ちゃんの娘が俺らのお袋なんだけど、
今は洸星学園ロサンゼルス校立ち上げのため
親父と一緒にアメリカに行ってるんだ。
その間俺らはここで生活してる」

漂が言った。

「まぁまぁ自己紹介はその位にしといて、
どうやら聞いてると君は場所だけでなく、
時空もテレポートしたみたいだな」

大河があたしに向かって言った。

「何だって!?」

あたしは何と言っていいかわからず、
それ以上の言葉を失った。

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