第15話 ミッションが始まる

文字数 987文字

「学校の裏山にあった倉庫が最も被害が大きかった場所で、
透子くんがそこに向かうのを目撃した人もいた。
母親から捜索願いも出されて、
かなりの大人数で捜索活動がなされたが、
君の体はどこにも見つからなかったんだそうだ」

理事長は話しづらい事を丁寧にあたしに伝えた。

「って事はやっぱり時空を超えたテレポーテーションって本当なん?」

翠さんは言った。

あたしはガクガクと手や足が震えていたが
気になっている事を質問した。

「それじゃ、あたしの家や集落はそれでどうなったんだよ」

「うむ、大半の家が土砂に潰されて住めなくなった。
ほとんどの住民は集落から出て行ったらしい」

翠さんはすっとあたしの後ろに立ち、背中をさすった。

「梓山に帰ってみるか?」

理事長はあたしに聞いた。

「あ、あたしは…… なんか怖えよ。
それにみんなに会った所でみんな年取ってんだろ」

あたしは両手でガクガク震える両腕を抱えた。

それに……
35年経った世界で、35年前のあたしが受け入れられるのだろうか?
母さんは再婚して新しい家庭を持っているかもしれない。
一茶も、コータローももう一家の主人(あるじ)になっているかもしれない。
そんな所にあたしが顔を出した所で
みんなを困らせるだけなんじゃ?

「なぁ、爺ちゃん、しばらくうちで面倒見てやるのは駄目か?」

大河が思いもよらない提案をした。

「できない事はないがしかし……」

理事長が言うと

「俺が透子を元の時代に戻れるようにしてやる。
少し時間かかるかもしれないけど」

「え?」

あたしは驚いて大河の顔を見た。

「これは真面目にテレポーテーションの研究に打ち込め!って言う
神のお告げかもしれない。
こんな凄いサンプルがうちに来たんだぜ!
もしかしたら俺、将来ノーベル賞取るかもよ!!」

そう意気込んで大河は理事長に言った。

「透子くん、君はどうしたいかね?」

理事長は優しく微笑んで言った。

「あたし…… わかんねーよ。 そんな急に。
でも、…… 元の時代に帰れるなら帰りたい」

その言葉を聞き、大河は「うむ」と納得したように頷いた。

「今の梓山を訪ねるにしても、
透子ちゃんの気持ちが落ち着いてからでええんちゃう?」

翠さんはぽんぽんとあたしの背中を叩いた。

「俺に任せろ! 必ず何とかしてやる!」

向かいに座る大河はテーブルをバン!と叩いて決意表明をした。

その言葉の信憑性はいかほどかわからないが、
あたしはとりあえず今後の運命を大河に託す事にした。
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