第13話 スマホ

文字数 761文字

お風呂から上がり、
翠さんが用意してくれたスウェットを見てあたしは絶句した。
理事長が着ていた物と同じ犬のキャラクターの
女の子バージョンがついた上下真っ赤なジャージ。

「これしかないのか……?」

あたしはヤンキーだったけど私服はこういうんじゃない!
げんなりした心持ちで袖を通した。

リビングに戻ると
漂がソファに寝転んで手元の何かを見ていた。
それはさっき大河が警察を呼んだ時に
耳に当てていたものと同じ機械だ。

おずおずと近づくと、あたしに気づいた漂は
こちらを見て「あははは!!!!」と爆笑した。

「ヤンキー丸出しじゃねーか!!
ジャージ似合いすぎ!!」

そう言って機械をこちらに向けると、
カシャ!とカメラのシャッター音がした。

「翠さんのセンス!!
爺ちゃんも同じの着させられてただろ!?」

「ククク」と必死で笑いをこらえながら漂は言った。

何だかバカにされているようで腹立たしかったが、
それ以前に漂の手の中にあるその機械が気になった。

「それ、何?」

思わず話しかけると

「これ? スマホだよ」

とその機械をあたしに向けて見せた。

「そっか、知らねーのか」

と漂は上半身を起こした。

「元々は携帯電話って言って電話がメインだったんだけど、
今は文字でメッセージを送ったり、動画見たり、ゲームもできたり、
位置情報もわかったり何でもできる」

そしてポチポチと画面を触り、スマホとやらをこちらに向けると、
カシャ!とまたカメラのシャッター音がした。

「写真も撮れる。
このすっとぼけた顔! おもしれー!!」

そう言って漂はケラケラ笑った。

勝手に写真を撮られた事にイラついたが、なんだか凄そうな機械だ。

「すごい! 
ドラゴンボールのブルマが持ってるのより凄くない!?」

あたしが言うと、

「あー、そうかもな!
どらえもんの道具みたいなのも今では結構実現されてるぜ」

そう得意そうに漂は言った。

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