第188話 絵奈と紗羅

文字数 2,081文字

出産後、1年は山本家、藤堂家お隣同士のマンションに住んでいた。


産後落ち着いてからという結婚式も無事に終わり、私達な横浜の丸山台の一軒家へ家族で移り住んだ。


修也は車や電車で都内の藤堂総合病院に通っている。


千鶴さんや師範、紗絵ちゃんにお父さんは頻繁に誰かしら遊びに来るので、この数年、大変なのかもしれないけど、すごく大変だとは感じずに子育てしてこれた。


5年の月日が流れ、絵奈と紗羅は6歳になった。


双子の姉妹で見た目はそっくりだけど性格がまったく違う。


絵奈は髪が少し長めで、紗羅の方が髪は短い。顔は双子だけあって、ほぼ変わらない。

双子の姉の絵奈はいつも少し冷静で落ち着いていて、堂々としている。飲み込みも早くて感覚で何でもこなせてしまうような、天才肌の様な感じがする。小学生になって、テストはずっと95点以上しか取っていない…


私の頭脳ではない…修也も子どもの頃はどっちかというと勉強できる方じゃなかった…


どちらに似たのか…


ピアノも幼稚園の頃から習っていて、ピアノの先生からもいつも褒められている。


優等生タイプの姉。


対照的なのが妹の紗羅。


紗羅は少し落ち着きがなくて、いつもソワソワしている…結構緊張しやすいタイプなのか、よくお腹を壊す。双子なので姉の絵奈と同じ小学1年生。


小学生にしてテストはいつも50点くらいしか取ってこない…


ピアノを自分もやりたいと言って姉の絵奈と一緒に倣ったのだが、めでたく1年で飽きたのか、姉と比較されて嫌なのか挫折。


今は友達と遊んでばかりの生活を送っている。


そんな二人が通う丸山台小学校は私の母親である、成瀬 絵里、藤堂 紗絵(旧姓成瀬 紗絵)の母校でもある。


私も転校して東京に行くまでは昔のことなので曖昧だけど小学1年生、2年生は途中だったのかどうだか、丸山台小の生徒だった。

家の周りの当時のご近所さんは、当時から、もう20年以上も経っており、皆知らない人ばかりになっていた。
私は大学にも言ってないし、高校だって堀北学園。教育ママになるつもりもないし、伸び伸びと育ってくれればそれでいいと思っている。
義父の師範(山本 登)は紗羅からゴリラじいちゃんと呼ばれている…


勉強できなくてもいいから、それだけはやめなさいと言っても、なおらない…


父親の修也は二人の娘に甘すぎて、「ゴリラみたいだからゴリラじいちゃんでいいじゃん」ってしか言わないので、どうしようもない…


絵奈は空気が読めるのかじいちゃん、ばあちゃんってしか呼ばない。

絵奈も紗羅も紗絵ちゃんのことはすごい美人だと褒めるので、紗絵ちゃんは二人にとことん甘くて、いつも好きなものを何でも買い与えてしまう…


絵奈も紗羅も苗字が違うから知らない。


テレビでたまに懐メロが放送されたり、当時の映像が出たりするけど、成瀬 紗絵がまさか自分達のおばあちゃんだなんて思っていない。


山本家の人もそのことについては何も言わないし、私も紗絵ちゃんも子供達に話したことはない。

小学生になって学校でも流行っているのか、絵奈も紗羅も成瀬 千春の曲をよく聞いている。


成瀬 千春は現在、28歳。21歳の頃、私から女王の座を勝ち取り、その後、女王として活動しながらも22歳で単位を落とすことなくみごとに東大を卒業。


ずっと才色兼備のマルチタレントとして、トップを走り続けている。

今でも千春ちゃんとは連絡も取り合うし、子供達がいない時に、この丸山台の家に遊びに来たことすらある仲だ。
でも、私は子供達には成瀬 千春と仲が良いことも言わないし、私自身が芸能界にいたことも内緒にしているというより、余計なことは言わないようにしてる。


修也は察してなのかわからないけど、子供達が成瀬 千春の話をしても知らないフリをあわせてしてくれている。

今日、修也は当直で病院に泊まりこみでの勤務。


夕食は私と子供二人の3人。


子供達がテレビを見て、その番組に成瀬 千春が出ているので、私に言ってきた。

ママ、成瀬 千春がでてる。小学校でも好きな子多いんだよ!


今度ね、横浜スタジアムでライブがあるんだって!観に行きたい!

最初にそういったのは紗羅。
紗羅だけずるいよ!紗羅が行くなら、私も行きたいよ!
続いたのは姉の絵奈。
はいはい。パパに聞いていいよって言われたらね。


今日はお仕事でいないけど、明日には帰って来るから、明日聞いてみなさいね。


ママに言ってもね〜(笑)


それにチケット取れるかもわからないでしょ?成瀬 千春は人気歌手なんだよ?


そう簡単にチケットとれるか分かんないよ?

え〜ママで決めてくれないのか。


チケット、ママのじいちゃんとか、ばあちゃんに言うもん!


じいちゃん偉い人なんでしょ?なんとかしてくれないかなぁ?

紗羅、あんまりおじいちゃんに無茶苦茶なこと言っちゃだめだよ。
(紗羅はこの歳で藤堂の権力を使えばなんとかなるとか思うようになったのか…そんな子になられては困る…先手をうってお父さんやお母さんには先に駄目だよって言っておこう…本当は私も千春ちゃんにお願いすればなんとか出来なくもないだろうけど…)
※山本 絵奈 6歳 丸山台小1年
※山本 紗羅 6歳 丸山台小1年
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登場人物紹介

成瀬 紬(なるせ つむぎ)。

物語の主人公。紗絵の姪。内気で気弱。

成瀬 紗絵(なるせ さえ)。紬の叔母。

アーティスト、マルチタレント。

T.Kレコード所属RISE-1のメインボーカル。

山本 登(やまもと のぼる)。山本道場師範。修也の父親。絵里や紗絵の恩師。

山本 千鶴(やまもと ちづる)。修也の母親。

山本 修也(やまもと しゅうや)。のちに紬の幼馴染となる人物。初恋の人は茅ヶ崎 恵美。

沢田 水子(さわだ みずこ)。T.Kレコード会社マネージャー。紗絵の所属するグループRISE-1の担当マネージャー。

茅ヶ崎 恵美(ちがさき めぐみ)。

アーティスト、マルチタレント。紗絵と同じRISE-1のメンバー。紗絵とは親友でもありライバル。

佐々木 虎男(ささき とらお)。ギャング組織での一員。のちに紗絵の舎弟的存在となる。

藤堂 英玲奈(ふじどう えれな)。

美少女コンテストで紗絵が負けた相手。

美少女コンテストグランプリ受賞者。

紗絵より年齢は1つ上。

藤堂グループの令嬢。高飛車で性格は悪い。

安西 楓(あんざい かえで)。紬と修也と同年代で二人が高校生の頃に登場する人物。

紬の恋敵。

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