第105話 今日から勝負

文字数 2,211文字

安西さんは私に気づくと近づいてきた…
突然すいません。今日は病院行きますか?
あ、はい。行きますよ。わざわざここまでどうしたんですか?
今日は、お嬢様なのに運転手ついてないんですね。


車じゃないなら、病院一緒に行きませんか?

(え?病院に一緒に?ちょっと気まずいんですけど…)
あ〜私、あぁいう車慣れてなくて苦手なんです(笑)


一緒にですか?ちょっと私入院に必要なものまだ足りてないんで、色々揃えてから病院に行こうと思ってたんですけど…

私も買い物付き合いますから。
(買い物まで一緒なの…ちょっとなぁ…)
港区のマンションにも寄りたいんですけど…着替えとりに行かなきゃないので…


あっちこっち寄ったら大変ですよ?

全然構いませんよ。
(二人気まずいから嫌なのに…しょうがない…)
わかりました…


では、まず紗絵ちゃんの着替え取りに行くので駅に行って電車に乗りますね。

はい。構いません。
私が歩きだすと、安西さんは横に並んで付いてきた。
いいんですか?私が成瀬 紗絵の家を知ってしまって?
何でですか?あなたは別に悪い人には見えないので、大丈夫だと思ったんですけど?
まぁ特に私は家をリークしたりとか、スパイとかじゃないんで気にしないでもらっていいですけど。


でも、隣は修也君の家なんですよね?行ったことないですけど。


あなたはたまに泊まってたりしてたんですよね?修也君から聞きましたよ。


付き合ってからも親公認でお泊りしてたんですか?

(いや、それは付き合っているわけじゃなくて、偽物の彼女役なだけで…)
それなりの年齢になってからは、あんまり泊まりには行きませんでしたよ?


安西さんは彼女なのに家に行ったことないんですか?


修也の両親は凄くいい人たちですよ。


きっと遊びに行ったら暖かく迎えてくれると思いますよ?

それは私は彼の親とも仲良かったんですみたいなアピールですか?マウントとってます?
(そういうわけじゃなくて…安西さん、私に喧嘩でも売りに来たの?)
そういうわけじゃないですよ…


あの〜今日は私なんかに何の用なんですか?

切符を買って電車に乗ると、安西さんは一旦途切れた会話を再開した。
私はあなたに勝ちに来たんです。
(はい?何で勝ちに来たの?なんか勝負するの…?)
あの〜何か勝負しなきゃないんですか?


結構、今日時間ないんで、良く分からないですけど、今日じゃなきゃ駄目なんですか?

はい。今日からです。この間、初めてあなたに私は会いましたけど、修也君は気づいてないですけど、私は気づきましたよそれ。
そう言って、安西さんは私のカバンに取り付けられた、キーホルダーを指さした…
(この人するどいな…これ昔もらったんだよね…)
それ、修也君から昔もらったんですよね?


私色々話聞いてるんで知ってます。


何で別れたくせに未だにつけてるんですか?


しかも自分から振ったくせに。

このキーホルダーは昔、私の誕生日に修也からもらったもの。


このキャラクターが好きで、なんだかんだ捨てられずに、つけてしまっていた…


新品じゃないから、何年もつけていると余計にわかったたんだろう…

気に障ったならごめんなさい。すぐ外しますから。


このキャラクターが好きなんで、なんとなくつけてました…


その、安西さん。私と勝負なんてする必要ないですよ。


だって修也は安西さんと付き合ってるんですよね?


修也は相変わらずモテてますか?身長また伸びたんじゃないですかね。


結構頭悪いんで、同じ学校なら勉強教えて上げてやってくださいね。


あと、色々と世話焼いて余計なことに巻き込まれやすいので、気をつけてくださいね。


修也のこと幸せにしてあけてくださいね。本当にいいやつなんで…

そう言った私の目には勝手に涙が滲んできたので、ぬぐった…
私がキーホルダーを外そうとすると安西さんが私の手を止めた…
そういうことしなくていいです。言いましたよね今日から勝負だって。


フェアに戦いましょう。


私は、ずるい人間です。同じ学校で、クラスも一緒で色々と彼の近くにいるので有利です。


私彼女じゃないです。あなたが、勝手に誤解してるだけです。


このまま彼女だって誤解させてたら、あなたは彼を諦めてくれると思って何も言いませんでした。


何があってあなたが彼から遠ざかっていったのかは知りませんけど、まだ好きなんですよね?


この間、会った時も、辛そうな顔してましたよね。


私にはわかりましたよ。


今だって、何も未練なんてなかったら、泣かないですよね?


この間は失礼なこと言ってすいませんでした。


私は正々堂々あなたに勝ちます。


今日はあなたがどんな人なのか知りたくなったので来ました。

(え?!そうだったんだ…でも…安西さんは好きなんだよね…もしかしたら二人は両思いかもしれないし…)
はい…でも私なんかライバル視する必要あるんですか?


他にも周りにはいっぱい女の子いるんじゃないんですか?


わざわざ違う高校で、今は隣に住んでもいない近くにいない私なんかライバル視する必要ないんじゃないですか?


安西さん可愛いですし。

その後電車が駅に着くまで、何かしら話すと電車は住み慣れた駅に着く。


私は数ヶ月ぶりにこの場所に足を踏み入れた。


(懐かしいなぁ…みんな元気にしてるかな?)


私が干渉に浸っていると安西さんに急かされた…

早くしてください。干渉に浸らないでください。


荷物取りに行ったら、買い物して、病院にも行くんですよね?

すいません…
せかせかと歩き、マンションの部屋の前に着く。久しぶりに私はこの家の鍵を開けた…
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登場人物紹介

成瀬 紬(なるせ つむぎ)。

物語の主人公。紗絵の姪。内気で気弱。

成瀬 紗絵(なるせ さえ)。紬の叔母。

アーティスト、マルチタレント。

T.Kレコード所属RISE-1のメインボーカル。

山本 登(やまもと のぼる)。山本道場師範。修也の父親。絵里や紗絵の恩師。

山本 千鶴(やまもと ちづる)。修也の母親。

山本 修也(やまもと しゅうや)。のちに紬の幼馴染となる人物。初恋の人は茅ヶ崎 恵美。

沢田 水子(さわだ みずこ)。T.Kレコード会社マネージャー。紗絵の所属するグループRISE-1の担当マネージャー。

茅ヶ崎 恵美(ちがさき めぐみ)。

アーティスト、マルチタレント。紗絵と同じRISE-1のメンバー。紗絵とは親友でもありライバル。

佐々木 虎男(ささき とらお)。ギャング組織での一員。のちに紗絵の舎弟的存在となる。

藤堂 英玲奈(ふじどう えれな)。

美少女コンテストで紗絵が負けた相手。

美少女コンテストグランプリ受賞者。

紗絵より年齢は1つ上。

藤堂グループの令嬢。高飛車で性格は悪い。

安西 楓(あんざい かえで)。紬と修也と同年代で二人が高校生の頃に登場する人物。

紬の恋敵。

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