第134話 The Queen is back 

文字数 2,248文字

紗絵ちゃんは歩行のリハビリに移ると、車椅子が嘘だったかのように、トントン拍子に歩ける距離が長くなり、歩行速度もゆっくりだったのが.普通の人と同じように歩けるようになった。


そこまで来ると普通の人と変わらないくらいまで回復するのは比較的すぐだった。


冬の間、私は女優の仕事やモデルの仕事は紗絵ちゃんみたくオファーがほとんどない人間なので、新曲も延期になったままのため、ちょっとしたCMに出させてもらったり、歌の番組に少し出させてもらったりくらいしか仕事がなく、比較的普通に堀北学園に通っていた。


そんな感じでもプライベートで出かけることは出来ずに、気をつけながら隣の修也の部屋にたまに遊びに行くのだが、もうすぐ受験生となるためか、そんなに相手はしてもらえない日々を送っていた。


2月になると紗絵ちゃんはT.Kレコード事務所と再度契約を結び、当時、芸能界復帰は絶望的と報道され、自主退所を選んだのが嘘のように、マスコミ達に騒がれ、帰ってきた女王とか報道された。


T.Kレコード事務所は紗絵ちゃんが自分達の事務所で復帰して活動してくれるならと、紗絵ちゃんの条件を全て飲んだらしい。


紗絵ちゃんから、復帰報道前に聞かされた。


仕事がちょくちょくしかない私は紗絵ちゃんのリハビリの様子を結構見に行くことも出来た。


2年間ずっと諦めないで頑張り続けた紗絵ちゃんを目の当たりにしてきた私…


どんなに絶望的な状況でも、成瀬 紗絵は決して諦めずに前を見て奇跡を掴んだ…


小さな頃から私は成瀬 紗絵を目の前で見てきた…


成瀬 紗絵が売れない時代も、売れてからも、転落してからも、トップに登りつめてからも、ほとんどを見てきた…




憧れはやがて目標になり、全然実績では遠く及ばない私が、成瀬 紗絵に挑むことが出来る…


英玲奈さんには紗絵さんに勝つことが出来るかはあなた次第でしょって言われた…


お父さんはどう思っているだろうか?私も紗絵ちゃんも家ではいたって昔と変わらず普通に話すし、とてもこれから勝負する相手という雰囲気は今のところない。


二人の曲を車で聞いているというお父さん。お父さんのことだから、発売された日にどうせ両方買って聴くんだろうなとは思うけど…


そして延期されていた私の3rdシングル制作が動き出すことになる。


私の3rdシングルは紗絵ちゃんの復帰後、初のシングルと同時発売となることが事務所からは発表された。


まだ、どちらも曲が出来たわけでもないけど、成瀬 紗絵と成瀬 紬の親子の新旧対決としてメディアでは話題を呼ぶことになった。


そして春になり、私は高校3年生になった。


私の進路は進学する学力はまずない…


専門学校とかに特に行きたいわけでもない…


特に決まっていない…


修也は大学進学で医学部の受験、楓は就職、美咲ちゃんは専門学校、静香は大学進学、中島君、徹君は就職とそれぞれ皆目標があるらしく、全然、家でみんなで近況報告なんて機会もほとんど無くなった…


みんなは何かしら、目標がある。私は紗絵ちゃんとの直接対決が終わったら、その後のことはまだ一人だけ何も決められずにいた…

紗絵ちゃんも私もいよいよ曲づくりのために作詞し始めるという日に二人で夕飯を食べながら話した。
ねぇねぇ、なんかさ、お互いに曲とか似てたら、嫌だから聞いておきたいんだけどさ、もし言いたくなかったら言わなくてもいいんだけど、テーマというかどんな感じにするか紬もう決めてる?
全然大丈夫。なんかお互いに知ってた方がいいかもしれないよね。偶然被ったら、なんか嫌だしさ(笑)


私は決まったよ!絆をテーマにしたいと思うんだよね。そんな感じの曲にしたいと思う。


紗絵ちゃんは?

絆か。そっか。じゃあ被ってないから大丈夫(笑)


そういうの私も考えてはいたんだけど、紬はそのまま、続き考えてもらって大丈夫。


私は夢とか終わらない旅とかそういうのにしようかな。


緊張する?(笑)

そりゃあ緊張するでしょ(汗)だって、目の前にいる成瀬 紗絵と私が戦うんだよ?


こんな日が来るなんて思ってもいなかったよ(汗)

恵美が卒業することが決まってRISE-1が解散する時に言ったことあったよね?


永遠なんてないんだよって。紬はまだ若いからいいけど、私も紬も歳をとっていくでしょ。


演歌なら、70歳でも80歳でも歌手いるけど、J-POPだとある程度の年齢にいくとどんなに有名な時代の象徴の人でも衰退していくでしょ?


私も紬も女だし、結婚とか出産とかでブームが終わることもあるよね。


だから、こんな日は遅かれ早かれ来る予定だったんだよ。二人とも歌手なんだからさ。

ふと思ったことがあるので聞いた。
全然仕事とは関係ない話なんだけどさ、紗絵ちゃん、お父さんといつ結婚するの?
私の質問に紗絵ちゃんが食べていたものをぶーっと吐き出した…
汚いよ(汗)私まで米粒飛んできてるんですけど(汗)
ごめんごめん。いきなり、凄いこと聞いてくるからびっくりして(笑)


30歳前には結婚出来たらいいかなぁ〜くらいにしか考えてないよ(笑)


特にプロポーズされたわけじゃないし(笑)

お父さん、仕事でいないから言うけどさ、当時さ、いきなりプロポーズしたくせに、付き合いだしたら、プロポーズしないって変な人だよね(笑)


私は二人のことだから、ご自由にって思ってるから、いつでもどうぞ♪(笑)


紗絵ちゃんがまたお母さんになってくれるの大歓迎だからさ♪

ねぇお母さん…私ね紗絵ちゃんと対決するんだよ。


お母さんの夢を全て叶えた、あの成瀬 紗絵と…

※成瀬 紗絵 28歳


約2年ぶりに芸能界復帰後

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登場人物紹介

成瀬 紬(なるせ つむぎ)。

物語の主人公。紗絵の姪。内気で気弱。

成瀬 紗絵(なるせ さえ)。紬の叔母。

アーティスト、マルチタレント。

T.Kレコード所属RISE-1のメインボーカル。

山本 登(やまもと のぼる)。山本道場師範。修也の父親。絵里や紗絵の恩師。

山本 千鶴(やまもと ちづる)。修也の母親。

山本 修也(やまもと しゅうや)。のちに紬の幼馴染となる人物。初恋の人は茅ヶ崎 恵美。

沢田 水子(さわだ みずこ)。T.Kレコード会社マネージャー。紗絵の所属するグループRISE-1の担当マネージャー。

茅ヶ崎 恵美(ちがさき めぐみ)。

アーティスト、マルチタレント。紗絵と同じRISE-1のメンバー。紗絵とは親友でもありライバル。

佐々木 虎男(ささき とらお)。ギャング組織での一員。のちに紗絵の舎弟的存在となる。

藤堂 英玲奈(ふじどう えれな)。

美少女コンテストで紗絵が負けた相手。

美少女コンテストグランプリ受賞者。

紗絵より年齢は1つ上。

藤堂グループの令嬢。高飛車で性格は悪い。

安西 楓(あんざい かえで)。紬と修也と同年代で二人が高校生の頃に登場する人物。

紬の恋敵。

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