第152話 SONG FOR YOU(リハーサル)
文字数 2,152文字
費用はT.Kレコード事務所が負担する。
一夜限りの成瀬 紬のバックダンサーとして、数曲だけステージに立たせてもらえることになり、振付の練習を連日行っている。
SONG FOR YOU〜hot summer〜
本番を明日に控えた前日スタジアムは観客のいない中でリハーサルが行われる。
マネージャー業務の裏方の藤堂 紬と表に立つ成瀬 紬どちらもこなさなければならない。
RISE‐1がリハーサルを行う前にも挨拶をしにいった。
みんな私が知っている昔のRISE‐1の人達のままだった。
紗絵ちゃんが凄く楽しそうで、私まで嬉しくなった。
RISE‐1のみんなと親しげな私に千春ちゃん以外のメンバーは不思議がっていた。
そう、メンバーにはまだ私が成瀬 紬とは知らせていない…
それでいいと思っていた。私はマネージャーの藤堂 紬で構わないと思っていたから。
千春ちゃんだけは知っているから、千春ちゃんは最初少し困惑してたけど、憧れの成瀬 紗絵にあえて凄く喜んでいた。
みんなでリハーサルをすると当時と変わらない息のあったパフォーマンスを見せる。
本番に類似の衣装に着替えて、ヘアメイクを受ける。そして化粧もしてもらうと、自分達のリハーサルの順番を待つため、ステージ裏に待機しに向かう。
私が着くと、アトランティックスターズの5人は私に挨拶をした。
千春ちゃん以外のメンバーも周りをキョロキョロしている。
私が言わないから、千春ちゃんは勝手に言えないと思って黙ってただけだと思うから。
私、成瀬 紬が、みんなのプロデューサーだけど、私にはもう1つ本名があるんだ。
成瀬 紬もみんなのマネージャーの藤堂 紬も私だよ♪(笑)
私達とここにいていいんですか?
久しぶりにあったRISE‐1の人達とか、成瀬 紗絵といっぱい話ししたいんじゃないですか?
凄く仲良さそうだったじゃないですか?
RISE‐1の人達は私の小さな頃からのあこがれの人達だしね。
でもね、みんなも浮ついちゃう気持ちもわかるけどね、私は今、歌手の成瀬 紬としてリハーサルをするんだよ。
あそこにいる人達と同じ場所に私達も立つ。
だから、プロとしてみんなもあこがれるよりも、より良いライブになることだけを考えて一緒に頑張ろう♪
スタジアムは広いよ。
アトランティックスターズにとって凄く良い経験になると思う。
私達が見なきゃないのはRISE‐1のリハーサルじゃないよ。
明日埋め尽くされる、観客のみんなの方だよ。
RISE‐1のみんなは笑顔で移動してきたけど、私とすれ違うと、みんなびっくりしていた…
最後にすれ違った紗絵ちゃんに言われた。
「みんなびっくりしてたよ。さすがNo.1だねって…」