第33話 ひまわり畑の誓い

文字数 2,839文字

恵美ちゃんが引っ越してきてから、1ヶ月が過ぎようとしていたとある日。紗絵ちゃんと恵美ちゃんは仕事が忙しく、地獄の引っ越しから、働きっぱなしだ。


夏休みもいよいよ後半に入ってきた。

私は修也と中島君と夏休み中も週の半分は稽古で汗を流していた。


明日紗絵ちゃんは1ヶ月ぶりに仕事が休みだ。


前に連れて行ってもらった時は咲いていなかったひまわり畑に連れて行ってもらうことになっている。お墓参りもしてくる予定だ。


恵美ちゃんは明日仕事らしいので、出かけるのは私とお姉ちゃん。


師範と千鶴さんと修也は明日1日師範の実家の丸山台に帰省するらしい。


千鶴さんが、私が1人にならないように、明日の朝にはみんな帰って来るとのことたった。


なんか、申し訳ない…

恵美ちゃんは、あんまり人見知りするタイプではないので、引っ越してきてから師範と千鶴さんともすぐ仲良くなっていた。


千鶴さんは娘が3人出来たみたいと喜んでくれていた。


私のことも娘のように思ってくれていることにとても感謝した。

この日、紗絵ちゃんは夕方前には帰ってきて、恵美ちゃんは帰りが遅かった。


次の日の朝、紗絵ちゃんは早起きしていた。

おはよう。今日はちゃんと早起きしたからね(笑)


久しぶりに休みだよ。1ヶ月休みないとかヤバイよね(汗)


過労死レベルだよね(笑)


今日は最初にお墓参り行こうか。


私車まわしてくるから、紬ロビーで待っててね。

お墓参りのあとは、ひまわり畑だね!


私ひまわり畑はじめてだから、早く観てみたいよ!!


1ヶ月ぶりのお休みなのに紗絵ちゃんは朝には早起きだったんだね。この前の連休は初日寝てたのに(笑)


ロビーわかった!

だって、休み今日しかないから、寝てたら1日もったいないでしょ?(笑)


恵美も休み一緒の時は私は寝るって決めてる(笑)


じゃあ、また下でね!

そう言うと紗絵ちゃんは車を取りに行った。


私はロビーで紗絵ちゃんの車が見えるのを待つ。

紗絵ちゃんの車が見えると私は外に出て車に乗った。
やっぱり電車とかバスじゃないと変装しなくていいから、いいよね(笑)


ひまわり畑が咲く前に行った時は帰りに災難にあったしね(笑)

そうだ。前回は電車やバスで中途半端な変装をした紗絵ちゃんと帰りにトラブルに巻き込まれたんだ…
あの時の、あの人、虎男だ。あの人元気なのかな?
さあ?でも、殺されたりはないと思うよ?(笑)


山根には穏便にって言ったし、一応、私あいつの歯を折っちゃったから、治療費いらないって言われたんだけど、無理やり払ったからさ(笑)

え?紗絵ちゃん、あの人達にまた会ったの?
結構前なんだけど、仕事帰り車運転中に見かけたから、治療代は払いたいからってその時言ったら、あの虎男だっけ?私の顔見て凄い怯えていらないですっていうから、受け取らないと殺すって言ったら


ビビって謝りながら受け取ってた(笑)

そりゃあ前歯折られてボコボコにされてるんだから、怯える上にそんな相手に殺すって、言われたら、怖いよって思った…
ちゃんと、折れた歯を治してくれるといいね(笑)
紗絵ちゃんといろいろお話してると、なんだかんだで、あっという間にお墓についた。


ご先祖様と祖父、祖母、お母さんの入っているお墓を少し掃除するとお線香とお花を添えた。


横を見ると紗絵ちゃんは手を合わせて何かお祈りかわからないかど、しているので私も真似した。

もちろん、今でも悲しみが消えたわけではない。


でも、私は生きていかなければならない。


お母さんが自分の夢を諦めてまで私を産んでくれたのだから。


私が出来る恩返しは生きて成長した姿をお墓や仏壇で見せて上げることぐらいしか出来ない。


お母さんや紗絵ちゃんみたく、私には何も才能はないけれど、一生懸命私なりに今を生きるからね。


そう手を合わせて心のなかで思った。

目を開けると紗絵ちゃんが私をじーっと見てた。
一生懸命手を合わせてたけど、何を報告したの?
え?普通に頑張るからねとか、そんなもんだよ?(笑)紗絵ちゃんは?
いきなりで私は結構ビックリしながら、やや、テキトウだけど答えた。
私はね〜秘密(笑)
ズルいよ〜!私には聞いておいてさ。
まぁまぁ、気を取り直して、ひまわり畑行こうよ!
紗絵ちゃんが何をお墓に向けて報告していたのかは、私にはわからない。


歩き出した、紗絵ちゃんの後ろ姿についていく私。


(お母さん、また来るね。紗絵ちゃんがお母さんになってくれたよ)


お墓を去る前に、お母さんに伝えたつもりだ。

車に戻ると社内は夏の日差しで熱くなっていた。


この日も東京は37度となかなかきつい。


車のエンジンをかけ、ちょっとすると冷房が効いてきたので車内に入り、ひまわり畑を目指し発進する車。

また、紗絵ちゃんと日常会話をしながらいると、あっという間にひまわり畑についた。
車を降りると、あたり一面にひまわりがたくさん咲いている。凄くきれいだ。
※紬、紗絵の訪れたひまわり畑
ひまわり畑を進んでみると、低いひまわりから高いひまわりと意外と色んなのが生えていた。
紬、ちょっとついてきて!!
そう言うと、紗絵ちゃんはスタスタとひまわり畑を歩いていく。
ちょ、ちょっと紗絵ちゃん待ってよ〜!
頑張って紗絵ちゃんをおいかける私。


ちょっと進むと、紗絵ちゃんは急に立ち止まってこちらを振り返った。

紬、昔ね、ちょうどここらへんでね、お姉ちゃんと私は誓ったの。


二人で、歌手になって共演しようって。紅白歌合戦とか歌番組とか、たくさん共演しようって。


私はT.Kレコードアカデミースクール生でも何でもなかった時だけど。


そして、一緒にドームとかスタジアムとかで姉妹で歌いたいねって。


あの頃はどっちもデビューなんてしてないし、姉妹の約束でしかなかったけど。


私ね、お姉ちゃんが見たかった景色を代わりに全部見て報告してあげたいって思ってる。


お姉ちゃんの夢は日本一の歌手になることだったから、私は途中までの景色しか、もしかしたら伝えられないかもしれない。


紬が、大きくなってこの世界にもし興味を持った時は、お姉ちゃんに日本一の歌手が歌う景色伝えてあげてね。


そして、私にもその時は教えてね。

そう言った紗絵ちゃんの表情はどこか寂し気だった。
紗絵ちゃんが出来ないこと、私に出来るわけないよ(汗)


私には紗絵ちゃんみたく才能ないんだよ(汗)


仮に私が興味を持って、歌手を目ざしても、

日本一の歌手の景色伝えられるわけないよ(汗)


まず、私じゃデビューすらさせてもらえないよ…(汗)

紬は、その気になれば日本一になるよ。お姉ちゃんの娘だから。


根拠はないけど、私にはわかる。


押し付けたりしてるわけじゃないから、安心してね。


お姉ちゃんはいつも光だった。私はいつも影…


そんなお姉ちゃんの光を紬は受け継いでるはずだよ。


影の私が光になれない時は、その時は任せた(笑)

良くわかんないけど、その時は任された(笑)
紗絵ちゃんに果たせないことを私に本当に出来るのだろうか…


子供の頃の私はそのことについてはあまり深く考えたことはなかった…

※RISE-1 SAE(成瀬 紗絵)20歳


紬とひまわり畑

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登場人物紹介

成瀬 紬(なるせ つむぎ)。

物語の主人公。紗絵の姪。内気で気弱。

成瀬 紗絵(なるせ さえ)。紬の叔母。

アーティスト、マルチタレント。

T.Kレコード所属RISE-1のメインボーカル。

山本 登(やまもと のぼる)。山本道場師範。修也の父親。絵里や紗絵の恩師。

山本 千鶴(やまもと ちづる)。修也の母親。

山本 修也(やまもと しゅうや)。のちに紬の幼馴染となる人物。初恋の人は茅ヶ崎 恵美。

沢田 水子(さわだ みずこ)。T.Kレコード会社マネージャー。紗絵の所属するグループRISE-1の担当マネージャー。

茅ヶ崎 恵美(ちがさき めぐみ)。

アーティスト、マルチタレント。紗絵と同じRISE-1のメンバー。紗絵とは親友でもありライバル。

佐々木 虎男(ささき とらお)。ギャング組織での一員。のちに紗絵の舎弟的存在となる。

藤堂 英玲奈(ふじどう えれな)。

美少女コンテストで紗絵が負けた相手。

美少女コンテストグランプリ受賞者。

紗絵より年齢は1つ上。

藤堂グループの令嬢。高飛車で性格は悪い。

安西 楓(あんざい かえで)。紬と修也と同年代で二人が高校生の頃に登場する人物。

紬の恋敵。

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