第52話 負けられない戦い(決戦3)

文字数 2,374文字

主演候補者のオーディション用会場へ移動すると、そこには、審査員になるであろう、佐々木監督、ガンダムPIECE脚本家、映画製作会社の制作チームの人達が横にずらりと並んでいた。


1番の人から呼ばれて、自己紹介や自己PRをすると、審査員側の要望があり、言われたちょっとしたセリフを言ってみたり、質問されたりしている。

1番、2番の人が終わり英玲奈さんの番。


他の人と比べて英玲奈さんはやはり別格な感じだ。 


自己PRでは帰国子女だけあって、ペラペラの英語を話していた。


私は英語は学校で少し習うくらいで、何を言っているかはわからないけど、ガンダムと英語ってなんか関係あるのかな?私にはわからない…


英玲奈さんにたいしては最初の人達より審査員側の質問は少し多い気がする。


やはりトップクラスの女優だからだろうか。


私が聞いた話によると英玲奈さんは関係者上層部の人達には凄く感じが良いらしい。


共演者やスタッフには評判は良くない…


さっきの控室の感じなんだろう…


今は審査員の前だからか、さっきとは別人だ…


私は沢田さんと合流して、一緒に席から、オーディション光景を見ていた。



あの〜私さっき英玲奈さんに、控室であったんですけど、全然別人ですね…
あの方は容姿は非常に恵まれているのに、そのへんは残念ですね…


でも、人には少なからず表と裏の顔があるものですからね。


それに才能があるのは間違いないのに、活かしきれてないので残念ですね。


私にはわかりませんが、あれだけ魅力的なのですから、もっとハリウッドとか上を目指すような人なのではないのかと思いますが。


その方が英語も役に立つのではないかと思いますよ。


いつまでも自分より格下であろう紗絵にこだわっているようにしか見えないんですよね。


二人に何があったとか経緯は知りませんが…


固執してしまうことによって、もっと上に行けるはずなのに、ある程度で止まってしまっているんでしょうね。

沢田さんは凄く人を見てるんですね。


私なんて英語とガンダム関係あるのかなぐらいしか思ってませんでした(汗)



そうですか?でもね。私以上に人を見る目のある監督が、あそこにいますから。


あの監督は厳しい人ですけど、無名の紗絵をかつて主演に抜擢して、スターまで押し上げた人ですから。


今回誰を選ぶのか楽しみですね。

審査は審査員の投票で決まるんですか?


もし、そうだったら監督の目にとまっても、投票数少なかったら、主演はないんじゃないですか?

どういう決め方をするのかはわからないですが、同じ票の数だったり、接戦だったら、監督とか脚本家の意見が強くなりそうな気が私は勝手にしてますよ。
じゃあ紗絵ちゃんは有利ですよね?監督さん知ってるんですよね?
あの監督はその作品にあっている人物でなければ、たぶん選ばないと思うので、紗絵をかつて起用し成功をおさめたからと言って、また選ぶという可能性はないと思いますよ。


実際に紗絵は、佐々木監督の手掛ける作品には、売れてから呼ばれたり選ばれたことはないですからね。

沢田さんと話しているうちに、3番目の英玲奈さんと4番目の候補者がオーディションが終わり、5番目の紗絵ちゃんの番になった。


1番から4番までの人は自分の席に戻って座っている。

次の方どうぞ。自己紹介と自己PRお願いします。


(大丈夫。私なら出来る…確かにブランクはある…でもここで私は必ず勝つ。私は一皮向けて見せる!全力でぶつかろう。そして、私のせいで落ちたRISE-1をもう一度浮上させる)


はい!!成瀬 紗絵です!!よろしくお願いします!!


申し訳ないですけど、私はガンダムシリーズ全ては知っていません。


私が知っているガンダムシリーズはガンダムSEEDとガンダムSEEDDESTINYです。


劇場版も昔見たことがあります。


今回のガンダムPIECEの女主人公のコンセプトはどうなのかはわかりませんが、他の候補者と違って私なら、ラクス・クラインのように歌うこともできます!!


私ならアクションもスタントなしで行うことができます!!


今の私なら、転落していくダークな役だとしても表現できます!!


私を使ってください!!


絶対に後悔はさせません!!


本物とメッキの違いを私が見せつけてやります!!

紗絵ちゃんの自己紹介と自己PRが終わると、審査員から色々と質問を受け答えていた。


最後に佐々木監督が紗絵ちゃんに質問した。

では、私からは質問というか要望になりますが、今まで1番から4番の方の時も必ずお願いしていたセリフ、「私は絶対に負けない、力をかしてPIECE」っていう劇中でも使われる主人公のセリフを実際に主演に選ばれたつもりで主人公になりきってやってもらっていいですか?
はい!!
そして、紗絵ちゃんは主人公になりきってセリフを言った。


私が紗絵ちゃんに肩入れしてそう感じていることもあるかもしれないけれど、1番2番4番の候補者の人よりも、3番の英玲奈さんよりも、気持ちがこもっていたような気がした。



その後、6番、7番の人と順番が終わり、主演候補者1番から7番まで全員順番を無事に終えた。


このあと30分後に結果発表がこの場で発表される。


審査員は別室へ。


その他の人達は休憩時間となった。


私は今日来て良かったと思った。英玲奈さんと紗絵ちゃんがお母さんのことで何か知っていることがあるっていうのは気がかりだけど、凄く勉強になった。


私がこれから目指す世界は凄く大変な世界だということも目の前で実感できたし、ここにいる人達は一般の人のオーディションと違って、主演を争う人達だから、レベルが高い人達の表現力というのを目のあたりに出来て良かった。


私なんてまだアカデミースクール生受かったわけでもないけど、いつか私もあの場所に立ってみたいと思った。

※RISE-1 成瀬 紗絵 23歳


実写映画ガンダムPIECE 主演オーディション時の服装

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登場人物紹介

成瀬 紬(なるせ つむぎ)。

物語の主人公。紗絵の姪。内気で気弱。

成瀬 紗絵(なるせ さえ)。紬の叔母。

アーティスト、マルチタレント。

T.Kレコード所属RISE-1のメインボーカル。

山本 登(やまもと のぼる)。山本道場師範。修也の父親。絵里や紗絵の恩師。

山本 千鶴(やまもと ちづる)。修也の母親。

山本 修也(やまもと しゅうや)。のちに紬の幼馴染となる人物。初恋の人は茅ヶ崎 恵美。

沢田 水子(さわだ みずこ)。T.Kレコード会社マネージャー。紗絵の所属するグループRISE-1の担当マネージャー。

茅ヶ崎 恵美(ちがさき めぐみ)。

アーティスト、マルチタレント。紗絵と同じRISE-1のメンバー。紗絵とは親友でもありライバル。

佐々木 虎男(ささき とらお)。ギャング組織での一員。のちに紗絵の舎弟的存在となる。

藤堂 英玲奈(ふじどう えれな)。

美少女コンテストで紗絵が負けた相手。

美少女コンテストグランプリ受賞者。

紗絵より年齢は1つ上。

藤堂グループの令嬢。高飛車で性格は悪い。

安西 楓(あんざい かえで)。紬と修也と同年代で二人が高校生の頃に登場する人物。

紬の恋敵。

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