第75話 力不足

文字数 2,289文字

電車の中で修也と二人で出かける約束をした私はウキウキルンルン。


電車を降りると、会場がすぐ見えた。たくさんの人がいる。

じゃあ、俺はテキトーに周辺で時間つぶしに遊んでくるから、終わったら連絡よこせな。
は〜い♪じゃあまたね♪
会場に入って受付をすると、私の番号は77番。



全国で応募者数は5,000人以上らしい…


会場に来るまでは応募者数は明かされていなかったので、初めて知った…


エマ・リリス役に選ばれるのが5,000分の1って… 


(修也に選ばれたらとか言わなきゃよかった…)


私のいる会場は500名〜600名ほど…


「ガンダムPIECE FINAL」で選ばれる役は1名がエマ・リリスという新型のガンダムに乗るパイロット役となるらしい。メインに近いためセリフが多いみたい。


前作ではガンダムPIECEに乗り地球軍のエースパイロットだったサラ・メンデス(成瀬 紗絵)が結婚し、ガンダムには数年乗っておらず、ガンダムパイロットの養成所の教官となっていて、エマ・リリス含めパイロット見習い達を育てているという所から物語が始まるらしい。


エマ・リリスと共に指導を受けるパイロット見習い役が3名。


あとは新型の戦艦の乗組員役1名。


機体の整備員役2名


最終選考まで残ったものの中から、7名は出演者となるわけだが、1名のエマ・リリス役だけ、他の役とはちょっと別格扱いとなるらしい。


紗絵ちゃんから特別だよって言われて、ちょっとだけ教えてもらった。

この会場の500名〜600名くらいの中から何名くらいが最終選考に残してもらえるのだろうか…
北海道・東北ブロックが仙台会場となり、福島の衣奈さんは仙台会場でオーディションを受けると言っていた。


北陸会場が新潟で1会場。


私がいる東京は関東ブロックで、北関東が1会場、東京会場が2会場。


東海会場が名古屋で1会場


関西会場が大阪で2会場。


中国・四国会場が広島で1会場。


九州・沖縄会場が福岡で1会場


全国10ヶ所でオーディションが行われる。結構大々的な感じだ。



オーディション会場により日にちは違い、審査員には佐々木監督や主演の紗絵ちゃんも審査員としているらしい。
スタッフの人に番号順に並ばされると、1番から20番までの人は中に入ってぐださいと言われており。


始まったのだろう。


人数が多いため、ある程度の人数でまとめて何かで比較しているのだろうか。


審査内容や方法はさすがに紗絵ちゃんは教えてこなかったので、わからない。


私もずるをしたいわけじゃないので、聞きもしていないけど。

20番から40番、40番から60番、60番から80番となり、私の番も来た。


結構スムーズにバンバン進んでいく。

言われた場所に20名で1列になり、並ぶ。


たった一言のセリフを1人ずつ言うだけ。


審査員の席に紗絵ちゃんがいるのを見た。なんかちょっと浮かない表情をしている…


私の番が来たので、たった一言のセリフを言う。
セリフは「何でですか」
何でですか!!
精一杯言ったけど、みんなもこのセリフをただ言うだけ。
審査員はたまにおっというような表情をその言葉だけで見せたりする。


紗絵ちゃんは私の一言のセリフに浮かない顔のままだった…

60 番から80番の人の番が終わったので77番の私の番はこれで終わり。


前の人の待ち時間も含めて1時間くらいで私のオーディションは修了し、修也に連絡をして、合流した。

なんか思ったより、早かったな。
ごめんね待たせて。なんか一言だけ言って終わりだったよ(笑)


結果は1週間後にスマホでも確認できて自分の番号がホームページに掲載されてたら、最終選考の案内がメールで来るんだってさ♪

へぇー。なんか全国の会場とかでオーディションしてるらしくて凄いらしいな。


中島のいとこも同い年らしいんだけど、特に何か紬みたいにレッスンとか受けてるわけじゃないけど、東北だから仙台会場に受けに行くらしいぞ?中島がこの間言ってた。


紗絵姉はいたのか?

そうなんだ♪中島君。昔よくおばあちゃんの家だか連休の時帰ってたもんね。


紗絵ちゃんはいたけど、なんか表情が浮かない顔してたよ?


疲れたのかな?

私はこの時、能天気にしか考えていなかった…
帰りも修也と気楽に話をしながら帰るとあっという間に家に着く。


修也に、お礼を言って、自分の家で1人で、くつろいでいた。


夕方になると先に紗絵ちゃんが帰ってきた。

おかえり〜♪今日審査員逸材はいた?私はどうだった?
ただいま。今日は恵美は帰り深夜だってさ。


恵美いないから、私達は夕飯ウーバーイーツかな(笑)


今日ね。他の審査員はわからないけど、私の中では申し訳ないけど、逸材はいなかったよ。


紬が、共演したいって言ってくれた時本当に嬉しかったけど、私は今日、たった一言だけど、初めて紬の演技を見たけど、正直に言うと力不足だよ…


何か良いことあったのかわからないけど、ルンルンで現れて、一言のセリフを気持ち込めたんだろうけど、半分棒読み。


今回エマ・リリス役を掴めれば絶対に注目されるし、活躍したいなら、掴まなければならないのに、そういう気持ち感じられなかった…


それが私が感じたことを正直に言っただけ。気分悪くさせたらごめんね。

紗絵ちゃんの言っていることは正しい…


的確に私のためを思って答えてくれてるのはわかる…


私は周りの人に可愛いとか脚が長くてモデルみたいとか、カラオケにいけば歌がうまいとか言われて、うぬぼれていたのかもしれない…


T.Kアカデミーに入ったばかりの頃に思い知らされた、私の自分のレベルの低さを忘れていた…

※RISE-1 成瀬 紗絵 24歳


映画ガンダムPIECE FINAL 主演


新キャストオーディション審査員の一人

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登場人物紹介

成瀬 紬(なるせ つむぎ)。

物語の主人公。紗絵の姪。内気で気弱。

成瀬 紗絵(なるせ さえ)。紬の叔母。

アーティスト、マルチタレント。

T.Kレコード所属RISE-1のメインボーカル。

山本 登(やまもと のぼる)。山本道場師範。修也の父親。絵里や紗絵の恩師。

山本 千鶴(やまもと ちづる)。修也の母親。

山本 修也(やまもと しゅうや)。のちに紬の幼馴染となる人物。初恋の人は茅ヶ崎 恵美。

沢田 水子(さわだ みずこ)。T.Kレコード会社マネージャー。紗絵の所属するグループRISE-1の担当マネージャー。

茅ヶ崎 恵美(ちがさき めぐみ)。

アーティスト、マルチタレント。紗絵と同じRISE-1のメンバー。紗絵とは親友でもありライバル。

佐々木 虎男(ささき とらお)。ギャング組織での一員。のちに紗絵の舎弟的存在となる。

藤堂 英玲奈(ふじどう えれな)。

美少女コンテストで紗絵が負けた相手。

美少女コンテストグランプリ受賞者。

紗絵より年齢は1つ上。

藤堂グループの令嬢。高飛車で性格は悪い。

安西 楓(あんざい かえで)。紬と修也と同年代で二人が高校生の頃に登場する人物。

紬の恋敵。

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