第183話 ALL T.K-nation(FLASH BACK)
文字数 2,515文字
私は大雨の中、後のことは考えずにあの時突き進んだ…
大人になって、この先の詰まったスケジュールを気にするようになってしまった…
他のアーティスト達が歌い、どんどん進んでいくと、次の千春ちゃんの番が近づいてきた…
再度化粧や髪型を整え着替え終わった千春ちゃん。
千春ちゃんの次は私、早めに準備をして付き添う。
何が彼女をそこまで奮い立たせるのだろうか…
でも、後悔したくないんだ。4年後にこの場があるかわからないし、私が出ることが確約サれてるわけでもない。
だから、無理してでもやりたいの。たくさんの人達が待ってる。
アトランティックスターズだったみんなの前で格好悪い姿は見せられない。最初ちょっと格好悪い姿見せちゃったから、名誉挽回してくる(笑)
それに万が一、どうしようもないときは、さっきみたいに紬さんがなんとかしてくれるでしょ?(笑)
ここからはソロだけど、私は一人じゃない。
じゃあ行ってきます♪
大歓声の中、成瀬 千春は今度はミスなく自身のソロデビュー曲となる「Crossroad」を歌い切って、体調不良を感じさせないパフォーマンスで裏へ戻ってきた。
汗はびっしょり…私とすれ違う時にはフラフラしていた。
私は自分の出番で自分の一番のヒット曲「絆」を歌い終える。
私が歌い終える頃…さっきまでの晴天が嘘のように空は暗くなり始めていた…8年前の時と同じように…
私は控室に戻る。
そこには紗絵ちゃんがいた…
ちょっと気になったから、入れてもらったら、紬気づいてたなら、何で千春ちゃんに無理させてるの?
上の判断すぐにあおいで、無理はさせないほうがいいでしょ。
仮にも同じユニットで、最初の段階で気づいたでしょ?
トップバッターの時は凄く機転が聞いてて、紬もさすが女王と呼ばれる立場になっただけのことはあるなと思ったけど、これじゃ後輩のこと助けたことにならないよ。
とめるべきだよ。ここで頑張ることだけが本人のためになるとは私は思えない。
そして、千春ちゃんは今、紬と肩を並べて一番良い時期。
絶対に先のことを考えたほうがいい。
ALL T.K-nationのプログラムは進んでいく…
でも行きます…実は私8年前テレビで見たんです…
大雨の中、歌う紬さんの姿を。
私は今中断されたこの時間を当時の紬さんのように会場の皆さんと一体となってきたいと思います。
言ってたじゃないですか、感謝すること、自分自身も楽しむこと、自分に負けないでって。
ステージ裏から千春ちゃんを見守る…
会場は大歓声の中、成瀬 千春色に染まる…
今の私には出来ない…
私もやるって言いたいのに言えない…
歳を重ね、勢いだけで動けなくなった自分…
先に入っている仕事に穴があけれないと思って行動出来ない自分がもどかしいだけじゃなく、悔しい…
ALL T.K-nation 観客として鑑賞
ALL T.K-nation 当時のレコード大賞最優秀賞受賞曲「絆」歌唱時
ALL T.K-nation 自身ソロデビュー曲「Crossroad」歌唱時
ALL T.K-nation新曲「new era」歌唱時