第187話 母親になったんだよ…

文字数 2,297文字

春はあっという間に過ぎて、夏も過ぎ去る。


迎えた9月…臨月に既に入っている私。


私のお腹の中にいる双子はどちらも女の子だということが既にわかっており、皆にも報告してある。


妊婦検診は藤堂の総合病院の産婦人科にいつも通っていた。


病院ではたまにお父さんや旦那の修也、お母さんを見かけることもあったけど、みんな仕事中なのであんまり話しかけたりはしなかった。


隣の義両親の千鶴さんも師範も初孫の為に色々用意していた。そしてそれは家の両親も同じ。


お父さんなんて初孫の用品の為にお小遣いを全て使い果たし、紗絵ちゃんに怒られていた…


両家ともに待ち侘びてくれていることがなにより嬉しい。


生まれてくる子の名前は双子だし、藤堂家に1人、山本家に1人と名前をつけてもらおうかな、なんて思って聞いたら、修也と二人で決めなよって言われた…


私は結構子供にどんな名前をつけてあげようか迷った。


もう働いていない私は毎日予定もないので本を買って色々調べて、修也に案を出したんだけど、修也は名前何でもいい人らしく、何を言っても「良いんじゃないの」ってしか言わないので余計悩む…


参考にならないのである日、楓が遊びに来てくれたので、先輩ママなので聞いてみる。

ねぇねぇ、子供の名前何が良いと思う?
え〜そんなの親になるんだから自分で考えなよ(笑)


修也は何て言ってんの?

何て言ってるってか、どんな案出しても良いんじゃないのしか言わないんだもん(汗)


楓のとこは男の子だよね?今日連れてこなかったんだね。

楓は昔金髪で長かった髪は母親になってからバッサリ切り、今では髪はそんなに長くなくて、色も暗めになった。
まぁ、親が今日は見てくれるみたいだから、たまには息抜き(笑)


久しぶりに来たけど、ここは昔から変わらないね。


10代の頃が懐かしいね。お互いにもう27だもんね(笑)三十路見えてきたけど、紬は芸能人だっただけあって綺麗だね。


でも、子供産んだら、老けるよ(笑)

楓は昔と変わらない。私に遠慮なく言いたいことをズバズバ言ってくれる。
いやいや、化粧濃いだけだよ(笑)


楓こそ、子どもを産んた人には見えないくらいスタイルいいよ。


さすが元美少女コンテスト入賞者(笑)


あ!ごめん!今、お茶いれるからゆっくりしてて♪

私だけじゃなくて、紬だって元美少女コンテスト入賞者でしょ(笑)


体型は維持するのに努力してるから。


そんなの気を使わなくていいし、人の家だけどさ私がやるから、妊婦さんは座ってなさいよ。

楓はそう言うと、私を座らせ、お茶の準備は楓がした。
ゴメンね(汗)なんか逆に気を使わせて。
何いってんの、気なんて使ってないよ(笑)


私も経験したことだけど、そのお腹で動き回るの大変でしょ。


名前、自分で考えなよって言ったけど、両家の親は何て言ってるの?

ありがとう。両家の親は、楓と一緒(笑)双子だから、片方ずつ名前どうかななんて思ったら、自分で考えなよって言われたよ(笑)
それで一緒に考えるのが私?(汗)


しかたないなぁ。候補は?

色々ある候補から少し絞って伝える。


里奈(りな)、茉奈(まな)、星羅(せいら)、麗羅(れいら)と、とりあえず、楓にお茶菓子を食べながら伝える。

私が楓に伝えている間、楓はリビングにかざられた写真をじーっと見ていた。
ちょっと、聞いてる?写真になんかあるの?
ごめんごめん。ちゃんと聞いてるよ。双子の名前でしょ。


あのさ、紬には二人の母親がいるよね。あくまで私の案だから、別にそんなのもあるのかぐらいで聞いてくれればいいんだけどさ、絵里と紗絵にちなんで、絵奈と紗羅とか?

(そっか!やっぱり、楓に相談してよかった…)
それいいね!そうしよう!それがいい!


絵奈と紗羅か。楽しみだなぁ♪

決めるの早っ(笑)


じゃあ電話でもメールでもよかったじゃん(笑)


まぁ、でもここにこなきゃ思いつかなかったか。

ちょっと二人でその後話をしていると、朝から実は少しお腹が張っていて、痛くなることがあった…


急に結構痛くなってきた…

どうしたの?もしかして陣痛?!
ごめん…もしかしたら…
やっぱり私が来てよかった。ここに来なかったら、今日、紬1人だったんでしょ?隣の義両親も今日いないって言ってたしね。


病院行く用意はある?

楓は出産経験者だからか、落ち着いている。


頼りになる昔からの友達だ。

一応、いつでもいいようにって、そこにカバンあって中に色々入ってるから、準備はできてるよ…
まだ大丈夫そう?破水してるわけじゃないなら、私車で来てるから、病院行こう。


産婦人科は藤堂の総合病院って行ってたよね?


すぐに行こう。

そう言うと楓は、私の準備していたカバンを持ち、私を連れて車に乗せた。


そして車は走り出すと、無事に藤堂の総合病院に着く。

楓…ありがとう…せっかく来てくれたのに、ここまでわざわざごめんね。
んなこといいから、元気な子無事に産んできなよ。家族に連絡はしなくても、ここは藤堂の総合病院だから、みんな知るだろうから大丈夫だろうから、私はあと行くけど、頑張るんだよ。


絵奈と紗羅、楽しみにしてるからね。


名付け親は私だから(笑)

楓は受付等色々付き添ってくれた。


私は分娩室に看護師さんに連れていかれる。


そして数時間後…

無事に私は双子の女の子を出産した。


名前は山本 絵奈(えな)と山本 紗羅(さら)。


上のお姉ちゃんの方は成瀬 絵里の一文字をもらい、下の妹の方には成瀬 紗絵の一文字をもらった名前。


名付け親は楓だ。


初めての出産は大変だったけど、無事にこの世に生まれてきてくれてありがとう…


二人の赤ちゃんを見ながら、お母さん、私も母親になったんだよ…そう天国にいるお母さんに心の中で話しかけた…

※山本 紬 27歳


出産前臨月

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登場人物紹介

成瀬 紬(なるせ つむぎ)。

物語の主人公。紗絵の姪。内気で気弱。

成瀬 紗絵(なるせ さえ)。紬の叔母。

アーティスト、マルチタレント。

T.Kレコード所属RISE-1のメインボーカル。

山本 登(やまもと のぼる)。山本道場師範。修也の父親。絵里や紗絵の恩師。

山本 千鶴(やまもと ちづる)。修也の母親。

山本 修也(やまもと しゅうや)。のちに紬の幼馴染となる人物。初恋の人は茅ヶ崎 恵美。

沢田 水子(さわだ みずこ)。T.Kレコード会社マネージャー。紗絵の所属するグループRISE-1の担当マネージャー。

茅ヶ崎 恵美(ちがさき めぐみ)。

アーティスト、マルチタレント。紗絵と同じRISE-1のメンバー。紗絵とは親友でもありライバル。

佐々木 虎男(ささき とらお)。ギャング組織での一員。のちに紗絵の舎弟的存在となる。

藤堂 英玲奈(ふじどう えれな)。

美少女コンテストで紗絵が負けた相手。

美少女コンテストグランプリ受賞者。

紗絵より年齢は1つ上。

藤堂グループの令嬢。高飛車で性格は悪い。

安西 楓(あんざい かえで)。紬と修也と同年代で二人が高校生の頃に登場する人物。

紬の恋敵。

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