第186話 次世代へ託したバトン

文字数 2,591文字

私は敗北して女王の座から陥落しすぐに芸能界を引退。


事務所に最後に挨拶をしに行った時に花束を贈呈役は妹のように思い、プライベートでも仲が良く、私に引導を渡してくれた千春ちゃんだった…


年明けは、ゆっくり過ごせた。ずっとこの3年間は仕事が忙しくて、休みはほとんどなかった。


3ヶ月が過ぎ妊娠中の子供はお腹の中で順調。


わかったことがあり、双子らしい。みんな楽しみにしてくれている。


妊娠3ヶ月、あまりお腹は出て来ないのでパッと見は何も変わらない。


新女王となった、成瀬 千春は成瀬 紗絵、成瀬 紬と受け継がれた女王のバトンを受け継ぎ、若者のカリスマとして君臨し、街の中は千春ちゃんで染まっており、絶賛活躍中。



映画「戦国武将姫列伝」が公開され、新女王成瀬 千春が主演を務めた作品でもあり、若者だけでなく、歴史好きの人からも人気が出て話題作となった。


本人が歌う映画の主題歌「Evolution」はオリコンシングルランキング初登場第1位を記録しただけでなく、初日にして売上枚数は200万枚を記録した。


そして今年は成瀬 千春の全国スタジアムツアーが予定されている。


アリーナからいきなりスタジアムになったのだから、その人気が凄まじい事がわかる。

テレビで見ない日はないくらい、今世の中は成瀬 千春で溢れている。


人柄も素晴らしいと業界では評判もいいらしい。


それを聞くと、(ちゃんと少しは私も役に立てたかな)なんて思う。

そして結婚式は私が出産して落ち着いついてから行うことになり、入籍だけは3月中に既に済ませた。


今の私は山本 紬(やまもと つむぎ)。


成瀬 紬、藤堂 紬、山本 紬と人生において3回も名前が変わっていて、この間久しぶりにあった楓には、面倒くさいやつって笑いながら言われた…


楓の弟は藤堂の総合病院で無事に新しい治療法で難病を克服し、退院。


藤堂 保、病院の医院長でもある私の父親が難病の治療法をチームリーダーとして発表すると、治療を受けたい患者で病院は更に忙しいらしい。


私の旦那となった、山本 修也も現在は藤堂総合病院の医師、そしてチームの一員として働いている為、毎日忙しそうだ。


お父さんも修也も病院に泊まりこみで仕事が増え、私は出産を終えるまでは、お母さん(藤堂 紗絵)のマンションにいることになった。


隣には義理の母親、父親となった、千鶴さんに師範もいて、子供の頃から知っているので、特に気を使わず、私は過ごしやすい環境。


どちらの家族もまだまだ新居なんて探さないで、ここにいればいいじゃんなんて言うけど、なんとなく住みたい場所は決まっているんだ…


ずっと紗絵ちゃんが大家さんをしていた、懐かしい横浜の丸山台のお祖父ちゃんとお祖母ちゃんの家に住んでみたいって思ってる。


今年、長年入っていた入居者が出るらしい。


まだ、誰にもそこに住みたいとは打ち明けていない…


今日、紗絵ちゃんにその話をしようと思っていた。

リビングでくつろいでテレビを見ていた紗絵ちゃんに話しかけた。
ちょっと相談あるんだけど、いいかな?
ん?どうした?妊婦さんの相談なら、私より千鶴さんに聞いたほうがいいよ?(笑)
違う違う。つわりが酷いとかそういうんじゃなくて、今すぐじゃないし、修也にもまだ相談もしてないことなんだけどさ。


神奈川の家あるじゃん?入居者、今年で出るんでしょ?


来年、そこに私、住みたいんだよね、家賃は住まなくても、入居者の人が出てから自分達が入居するまで空き家になっても払うからさ。

私がそう言うと、紗絵ちゃんは少し驚いた表情をしていた。
え?新居は都内にしないの?!何で?


だって、あの家リフォームしてあるとはいえ、私が子供の頃からあるんだよ?古いよ?


それに修也は藤堂の病院都内だよ。あそこから通わせるの?

でも、電車でも通えるし、車でも通えるよ?


病院に泊まりも多いし、いないこと多いからどこでもいいなら、あそこがいいななんて思ってさ。


二人のお母さんが育った家に住みたいな。子供達をのびのびと育てたいな〜なんて思うんだよね。


私だって住んでた事あるんだしさ。


いずれ丸山台小に丸山台中に入ったら、お母さん達の後輩だよ(笑)


それに仙台じゃないんだし、東京と神奈川なんてお隣さんじゃん(笑)

まぁね。修也が良いって言うなら、私は構わないよ?


てかさ、家賃なんていらないよ。好きに改装してもいいし、そのまま住んでもいいし、お父さんもお母さんもお姉ちゃんも紬達が住んでくれたら、一番喜ぶんじゃない?


私も一緒に住んじゃおうかな?(笑)一応おばあちゃんだし?(笑)でも、私おばあちゃんって呼ばれたくないなぁ(汗)おばあちゃんって呼ばれるのにはまだ早くない?(汗)



あ!でも千鶴さん達が一緒に住みたいかな?(笑)

修也には聞いてみる。家賃は払うよ。だって、私それなりに結構稼いだよ?(笑)それに修也も医者だし、よし!そこは旦那が払うよね普通(笑)


え〜お父さんどうするの?(笑)


お父さん来ると修也が気を使うでしょ(汗)


家でまで気を使うのって疲れるでしょ(汗)


お母さんは美魔女だからね。おばあちゃんには見えないけど、おばあちゃんだよ。子供達に紗絵ちゃんって呼ばせるつもり?(笑)

修也から渡されても受けるつもりはないよ(笑)


紬が稼いだように、私も稼がせてもらったのでお金に困ってないし、それに旦那も高給取りなので(笑)


その旦那はほったらかしにして行こうかな〜なんてのは冗談だけどさ(笑)


美魔女かぁ、もう40歳が見えてきたおばさんだよ(汗)紬の年齢が羨ましい。千春ちゃんの年齢はもっと羨ましい(笑)


さすがに孫に紗絵ちゃんはきついでしょ(汗)


その時はおばあちゃんで我慢しますよ…


そういえば、千春ちゃん元気?


ちゃんと千春ちゃんは紬の後ろ姿を見て立派になったね♪

私の後ろ姿を見て立派になったわけじゃないと思う…


本人に才能があるっていうのはもちろんだけど、私は成瀬 紗絵から学んだことを伝えただけだよ…


成瀬 紗絵、成瀬 千春の真ん中でバトンを繋いだだけかな…


世間では今は成瀬 千春ばかりが取り上げられる。


成瀬 紗絵のことは忘れ去られ始めている…


バトンを受け継いだ、千春ちゃんはもちろん、すごいと思う。


だけど、私の中ではやっぱり成瀬 紗絵が1番凄い人だと思うよ。お母さん…


本人には、そんなこと面と向かって言わないけどね…

※藤堂 紗絵(成瀬 紗絵)37歳
※山本 紬(成瀬 紬)26歳
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登場人物紹介

成瀬 紬(なるせ つむぎ)。

物語の主人公。紗絵の姪。内気で気弱。

成瀬 紗絵(なるせ さえ)。紬の叔母。

アーティスト、マルチタレント。

T.Kレコード所属RISE-1のメインボーカル。

山本 登(やまもと のぼる)。山本道場師範。修也の父親。絵里や紗絵の恩師。

山本 千鶴(やまもと ちづる)。修也の母親。

山本 修也(やまもと しゅうや)。のちに紬の幼馴染となる人物。初恋の人は茅ヶ崎 恵美。

沢田 水子(さわだ みずこ)。T.Kレコード会社マネージャー。紗絵の所属するグループRISE-1の担当マネージャー。

茅ヶ崎 恵美(ちがさき めぐみ)。

アーティスト、マルチタレント。紗絵と同じRISE-1のメンバー。紗絵とは親友でもありライバル。

佐々木 虎男(ささき とらお)。ギャング組織での一員。のちに紗絵の舎弟的存在となる。

藤堂 英玲奈(ふじどう えれな)。

美少女コンテストで紗絵が負けた相手。

美少女コンテストグランプリ受賞者。

紗絵より年齢は1つ上。

藤堂グループの令嬢。高飛車で性格は悪い。

安西 楓(あんざい かえで)。紬と修也と同年代で二人が高校生の頃に登場する人物。

紬の恋敵。

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