第96話 例えどんなに恋しくても…

文字数 2,162文字

紗絵ちゃんとみんなと離れて3ヶ月が過ぎた…


私はお父さんとこの3ヶ月、最初こそお互いにぎこちなかったが、今は遠慮なく普通に話せるくらいになった。


みんなは私のラインに気づくと挨拶したかったとか、一緒に卒業迎えたかったとか、同じ都内だし、落ち着いたら会おうよとか、ずっと友達だよとか暖かい言葉ばかりを送ってくれた。


修也だけちょっとラインの返事が、みんなとは違って、バカヤロー!!俺の彼女役途中で投げ出すなとかちょっと批判的なものだった…


その後はみんなはそれぞれ第1志望の高校に合格したとのことだった。


紗絵ちゃんは今やトップ歌手でありトップ女優でありトップモデルとほとんど休みのない多忙の身にもかかわらず、私に毎日連絡をよこした。


毎日新しい生活どう?とか友達出来た?とかたまには泊まりに来てよとか、一人じゃ寂しいよとか、彼氏できたとか?変な男に引っかかっちゃ駄目だよとか、欲しいものある?とか家出したらすぐ連絡よこすんだよとか3ヶ月毎日仕事の合間によこしているのだろう…


紗絵ちゃんに彼氏いるから寂しくないでしょ、わたしじゃなくて彼氏に連絡してあげなよって送ったら、仕事が忙しいから、お互いにスケジュール合わないし、そんなに会ってないとか言っていた。


私は転向した中学校で少しの期間を過ごし卒業した。少しの期間しか新しい中学校には滞在していないし、私が転向した時には受験前の人もまだ多くて、正直少ししか友達は出来なかった…


それに私に近寄ってくる人はみんなミーハーな人達ばかりで、高松中の人達とは少し違う感じがして、私自身があまり心を開けなかったのもあるのかもしれない…


転校先で突然告白されたりもしたけど、まったく知らない人達ばかりで何人もお断りした…


4月から私は堀北学園の1年生となった。



入学式にお父さんと一緒に行くと、紗絵ちゃんと同じ色のベンツが駐車場にとまっていて、紗絵ちゃんはが来てくれた!!って思ったら、違う人が降りてきてがっかりした…


よく見ると車のナンバーが違っていた…


紗絵ちゃんの車のナンバーは23‐45。


何でそのナンバーなのか昔聞いた時、紗絵ちゃんは2月生まれはお父さん、3月生まれはお母さん、4月生まれはお姉ちゃん、5月生まれは私と紬だから、みんなの誕生月をとったって言っていた。

私は紗絵ちゃんに幸せになってほしくて、自分の人生を歩んでほしくて、今ここにいるはずなのに、どんなに忙しくても、沢田さんを困らせて、私の入学式や卒業式、授業参観、いつでも、一生懸命私を見てくれていた紗絵ちゃんが恋しかった…


私の大事な出来事の記憶は紗絵ちゃんで埋め尽くされている。


実のお母さんよりもお母さんをしてくれていた期間が長いのもある。


紗絵ちゃんはいつでも本当のお母さんになろうとしてくれていた。


会いたい…


過去の記憶と共に紗絵ちゃんを思い出してしまう…


一生懸命お父さんになろうとしてくれるお父さんには申し訳ないけど、本当は紗絵ちゃんに私の高校生の制服を着た姿を見て欲しかった…


もう私は高校生。まだ大人からしたら子供かもしれないけど、もうすぐ私はお母さんが私を産んだ年齢になる。


半分大人で半分子供。


だから、紗絵ちゃんがここには来てくれなくても、今度、電車に乗って紗絵ちゃんに見せに行こう。


きっと喜んでくれるはず。


紗絵ちゃんの所に遊びに行ったら、みんなにも会えるかもしれない。


そう思って、涙をこらえた…

お父さんはこの4月から藤堂グループ全社員のトップに立つ本社の代表取締役に就任した。


代表取締役でありながら、系列の総合病院の医院長も務めてる。


お父さんと一緒に住み始めてから、知ったことなのだが、中学3年生の秋に卒業を待たずしてお父さんは急遽アメリカへ留学。


アメリカでは日本と違い飛び級制度があるので17歳にしてハーバード大学へ入り経営学を学んだのち、医学部へ入り国際医師免許を取得し、何年かアメリカの最新医学の進んでいる病院に勤務し、去年日本へ帰ってきて、藤堂の経営する総合病院の医院長に就任。


アメリカでも日本へ戻ってきてからもずっと独身な上に彼女もいなかったらしい…


ずっと立派になってお母さんを迎えに行くことだけを目標に生きてきたと語っていた…


アメリカではどうだったかわからないけれど、日本ではお父さんはモテるはずなのに一途だなと思った。


実際に私が病院に仕事中のお父さんに会いに行くことが、一緒に住み始めてから何度かあったが、身長も高くハーフなので顔も整っている上に、藤堂の御曹司にして、高学歴で性格も優しく真面目。年齢だって31歳と男性として結婚適齢期を迎えている。


一人暮らしが長いからなのか家事も完璧にこなす…


だから、余計に家事が苦手だった紗絵ちゃんのことを思い出す…


病院の女性職員さんや若い女性の患者さんは、お父さんを狙っている人がたくさんいるのが私にもわかった…


私が娘だとわかると病院の女性職員は残念がったが、それでも諦めていなさそうな人も多々いるくらい…


そして、今も入学式では、お父さんは多分父母さんの中では一番若い…


周りのお母さん達に俳優さんかモデルさんと間違われていた…


職業を聞かれると医者ですってしか言ってなかった…


英玲奈さんと違って控え目なタイプなんだろう…

※成瀬 紬 15歳


堀北学園 芸能コース 新入学生(1年生)


入学式

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登場人物紹介

成瀬 紬(なるせ つむぎ)。

物語の主人公。紗絵の姪。内気で気弱。

成瀬 紗絵(なるせ さえ)。紬の叔母。

アーティスト、マルチタレント。

T.Kレコード所属RISE-1のメインボーカル。

山本 登(やまもと のぼる)。山本道場師範。修也の父親。絵里や紗絵の恩師。

山本 千鶴(やまもと ちづる)。修也の母親。

山本 修也(やまもと しゅうや)。のちに紬の幼馴染となる人物。初恋の人は茅ヶ崎 恵美。

沢田 水子(さわだ みずこ)。T.Kレコード会社マネージャー。紗絵の所属するグループRISE-1の担当マネージャー。

茅ヶ崎 恵美(ちがさき めぐみ)。

アーティスト、マルチタレント。紗絵と同じRISE-1のメンバー。紗絵とは親友でもありライバル。

佐々木 虎男(ささき とらお)。ギャング組織での一員。のちに紗絵の舎弟的存在となる。

藤堂 英玲奈(ふじどう えれな)。

美少女コンテストで紗絵が負けた相手。

美少女コンテストグランプリ受賞者。

紗絵より年齢は1つ上。

藤堂グループの令嬢。高飛車で性格は悪い。

安西 楓(あんざい かえで)。紬と修也と同年代で二人が高校生の頃に登場する人物。

紬の恋敵。

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