第95話 置いていこう私の想い

文字数 2,412文字

お父さんと初めて会ってから数日後…


いつも通りの毎日を送っていた私と紗絵ちゃん。


お父さんとの連絡先は紗絵ちゃんも私も交換した。


そして私とお父さんのDNA鑑定の結果が出たとのこと…


結果は…



99,999%の確率で親子だということがわかった…


鑑定結果の書類も家に送られてきた。


私は半分は成瀬の血、半分は藤堂の血が流れているということが証明された…


紗絵ちゃんに悪態をついた時の私が英玲奈さんみたいだったのも納得だ…

私も準主役として出演させてもらった、ガンダムPIECE FINALは興行収入が歴代1位となる大ヒット作となり、ガンダム映画史上初の興行収入記録を作った。


私は紗絵ちゃんのように主演でよばれることはないものの、ちょっとした役をもらえたり、ちょっとした雑誌の小さなモデルをさせてもらえたり、仕事をさせてもらえていたのだが、紗絵ちゃんのような歌って踊れる歌手になりたかったのが一番の望みなのに、全然遠くにいた…


紗絵ちゃんはソロになって「White snow」というセカンドシングルを冬に出した。


この曲は本人出演のCMソングとして使われ、オリコンは初登場第1位となった。


今度はお母さんの作詞ではなく、1から自分で、考えたらしく、作詞名は成瀬 紗絵となっていた。


結構前にお母さんの作詞ノートは紗絵ちゃんから返されており、次は私の番だと言われていた。


そして年末には紗絵ちゃんのソロデビュー曲でガンダムPIECE FINALの主題歌「Fly High」がこの年のほとんどの音楽賞を取り、最優秀作品となり、紗絵ちゃんはかつてのRISE-1のグループとしてもソロとしても名実ともに日本一の歌手となった。


紗絵ちゃんは多くの賞を受賞したこの曲は作詞は亡くなった姉がしたものですとテレビで言っていた。


多くの人の支えとのおかげで2人で受賞したものですと言っていた。


きっとお母さんも喜んでいるだろう。


自分の夢を託した妹が歌い、一緒にてっぺんまで連れて行ってくれたのだから…




私は、仕事をちょくちょくするようになると、本業の学業が、うまくいかなくなりはじめ、成績は下がり続けたが、芸能人を多く輩出している、芸能コースのある堀北学園に私は無事に合格した…


偏差値が低いので、落ちることはまずないと学校の先生には言われていたが、この時期に私は受かったが、みんなの本番は公立高校のためまだ受験シーズンは続き、学校ではピリピリした空気が流れていた…


修也、中島君、徹君、静香、美咲ちゃんは皆それぞれ受験する学校は違うが、公立高校が第一志望のため受験は終わっていない。


自分だけ浮かれて、話しかけるのも、さすがに出来ないので、私はお父さんの所に行くと言うことを言えずにいた…


私はもうすぐ卒業なのにこの高松中学校の卒業生にはならない選択をした…


お父さんや紗絵ちゃんには何度も卒業してからでいいんじゃないかと言われたが、私が早いほうがいいと急かしたため、冬休みにお父さんの住むマンションにすでに荷物は色々と移してあり、私はもうすぐ転校する…



そして、もうすぐ私は成瀬 紬ではなくなる…


紗絵ちゃんとは親子でなくなる…


養子縁組を解消し、お父さんの娘となり、私は藤堂 紬になる…


名字が変わったところで、芸能活動は引き続き成瀬 紬で行うので、藤堂でもあり、成瀬でもあるので、特にどうってことはない。

紗絵ちゃんには山本家には自分で言うから、言わないでくれとお願いしていた。


もちろん、紗絵ちゃんは私との約束を守って山本家にはまだ、私がここから居なくなることを言っていない…


そして私も自分で言うと言ったくせに言えていない…

藤堂家では会長と英玲奈さんを敵にまわしてお父さんは一悶着あったみたいだが、お父さんは性格が良く、人望も有り、病院では絶大な支持のある医院長の為、会長はお父さんを追い出したくても追い出せず、更に、実質間もなく後継者としてグループのトップに立つお父さんの方が本社やその他社員からの人望も厚く、追い出そうとした会長の方がまずい立場になっているらしい…


英玲奈さんは、最初こそ会長側に立って敵対したものの、会長の立場が逆に危ういことを知ってなのか、兄に頭が上がらないからなのかおとなしくなったらしい…


お父さんの話によれば英玲奈さんは元々はあんな性格がきつくて高飛車な性格ではなく、子供の頃はいつも、お父さんの影に隠れているような内気な人だったらしく、少しブラコン気質だったが優しい子だったらしい…


会長が母親を追い出して、自分がアメリカに留学してから、性格が変わってしまったのではないかと言っていた。

私は結局、千鶴さんや師範に言ったのは当日の朝早く。


千鶴さんも師範も残念がってくれたけど、これからもたまには遊びにおいでねって言われた。


修也はまだ起きてきていなくて、私が無理に起こさなくていいって言った…


ラインでみんなにはついさっき伝えた。


修也にもラインは入れた。


みんなにはずっと黙っていてごめんねっても入れた。事情もちゃんとラインには入れた。


本当はみんなと卒業式出たかったことも送った。


朝早いため、誰からの既読もつかなかった…


修也は覚えてるかわからないけど、私が当時エマ・リリス役に選ばれたら、修也に二人だけで出かけようと言ったことは結局都合が合わなくて受験生になって、そんなことは出来なくて、私は覚えていたけど、言わなかった…


私はここに全てを置いていく…


好きな人も、友達も、紗絵ちゃんも…


離れるといっても同じ東京。


また、会えるよね…


きっと…


お父さんの待つ車に私は乗った…


泣きじゃくる紗絵ちゃんを師範と千鶴さんがなだめていた…


走り始めた車はどんどん離れていき、紗絵ちゃん達の姿は見えなくなった…


(これで良かったんだ…)


自分にそう言い聞かせるけど、私もずっとボロボロ溢れ出る涙を止めることは出来なかった…

※成瀬 紗絵 26歳


2ndシングル「White snow」


オリコン初登場第1位

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登場人物紹介

成瀬 紬(なるせ つむぎ)。

物語の主人公。紗絵の姪。内気で気弱。

成瀬 紗絵(なるせ さえ)。紬の叔母。

アーティスト、マルチタレント。

T.Kレコード所属RISE-1のメインボーカル。

山本 登(やまもと のぼる)。山本道場師範。修也の父親。絵里や紗絵の恩師。

山本 千鶴(やまもと ちづる)。修也の母親。

山本 修也(やまもと しゅうや)。のちに紬の幼馴染となる人物。初恋の人は茅ヶ崎 恵美。

沢田 水子(さわだ みずこ)。T.Kレコード会社マネージャー。紗絵の所属するグループRISE-1の担当マネージャー。

茅ヶ崎 恵美(ちがさき めぐみ)。

アーティスト、マルチタレント。紗絵と同じRISE-1のメンバー。紗絵とは親友でもありライバル。

佐々木 虎男(ささき とらお)。ギャング組織での一員。のちに紗絵の舎弟的存在となる。

藤堂 英玲奈(ふじどう えれな)。

美少女コンテストで紗絵が負けた相手。

美少女コンテストグランプリ受賞者。

紗絵より年齢は1つ上。

藤堂グループの令嬢。高飛車で性格は悪い。

安西 楓(あんざい かえで)。紬と修也と同年代で二人が高校生の頃に登場する人物。

紬の恋敵。

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