第149話 夏に向けて

文字数 2,188文字

あれから千春ちゃんは正式にT.Kアカデミーで特待生としてレッスンを受け、サボることはなく、ちゃんと来ている。
千春ちゃんは講師の人達からの評価が高いと聞いた。
それを聞いて私は自分のことのように嬉しかった。
私も通常業務を行う日々に戻り、通常業務は時短となっていて、レッスン時間も確保されている。


今まで、千春ちゃんとレッスンがかぶったことはない…

今日、私は仕事が終わって、レッスンを受ける日。


いつもと違うのは、今日、私がレッスンを受ける場に千春ちゃんがいる。


きっと千春ちゃんは私がいたら驚くと思う…

いつもは度の入っていないメガネをかけて、帽子を被っていたり、髪をおろすこともしないようにして、仕事しているけど、レッスンのときだけは、私は、藤堂 紬から成瀬 紬に戻る。


髪はレッスンだから、ポニーテールにするけど、メガネもいらないし、変装は必要ない。


一緒にレッスンを受けてるアカデミー生はびっくりするけど、何回か行くと慣れてきたのか、あんまり騒がれなくなった。


仕事終わり、今日も着替えて、懐かしさを覚えながらレッスンスタジオに入る。

時間も少し早めでまだ誰もいないだろうと思っていたのにそこには一人でストレッチをしている千春ちゃんがいた…
え?紬さん?何でいるんですか?!
あ〜それはね…他の人には内緒だよ。


私も紗絵ちゃんのライブに1日だけ成瀬 紬として出るからだよ。


なまってるから特訓(笑)


仕事だよ(笑)


熱心だね。まだ始まる時間じゃないないのに。

はい。内緒にします。私は全然他の人達より遅れているので…ダンス経験もないので…


その、紬さんってスタイルいいですよね…

熱心な上に向上心あって凄いね。今ね二人だけだから、千春ちゃんには言うけどね、私ね千春ちゃんくらいの歳の時、ダメダメだったんだよね(汗)


学校でもチヤホヤされて、仕事でもうぬぼれて、勘違いして、紗絵ちゃんにすら突っかかってさ。


私も紗絵ちゃんのことおばさんじゃんって、この間一緒にいた彼氏に言ったことあるんだよね(笑)


だから、千春ちゃんの気持ちわからなくもないかななんて思う。


スタイルはどうかな?私小さな頃太ってたんだよ(笑)

そうだったんですか?!私が知ってるのは、成瀬 紗絵と競っている頃の紬さんなので、血筋的なものが恵まれてるのかなと思ってました。


私も概ね、そんな感じでした…紬さんと知り合うまでは、私…勘違いしてました…調子乗ってました…


親のこともありがとうございました。


紬さんのおかげで、私の人生変わり始めました。


生意気なことばかりで、あの時はすいませんでした…

それは、近くで成瀬 紗絵を見てきたら、良い見本見てるよね。


紗絵ちゃんは私の育手の母親、でもね私を産んだ、成瀬 紗絵の姉でもあるお母さん(成瀬 絵里)もね、この場所にいたんだって。


千春ちゃんと同じ特待生だったんだってさ。


もう私の小さい頃に亡くなっちゃったけど。


紗絵ちゃんもお母さんもいたってことは、血筋かも知らないしね。


私は環境に恵まれてただけだからさ(汗)


全然謝らないで。もうおばさんって呼ばないでね(笑)


私19歳だから、一応10代だからね(汗)

そうだったんですね!納得しました。


だから「Fly high」は作詞が成瀬 紗絵じゃなくて、成瀬 絵里だったんですね。


二人の母親が作り、歌う曲で、私が紬さんに勝てるわけないですよね(汗)


そんなこと有りましたね(汗)


大丈夫です(笑)もうおばさんって呼んだりしませんよ(笑)


そういえば、よく家の親何も言わないくらいに納得させられましたね。


私が言うのもなんですけど、結構人のこと見下してませんでした?

あ〜その件はね…(笑)


千春ちゃんのお父さんが勤めているのが藤堂の本社でしょ?


私の名字、名刺渡したから千春ちゃんも知ってるよね?

はい。同じですよね。それだけでうちの親が黙るんですか?


まさか、実は成瀬 紬でしたって暴露したとか?

まぁ…これも内緒でね…


私藤堂グループのトップの藤堂 保の娘なんだよね(汗)


千春ちゃんのお父さんに私の親は何してる人か聞かれた時医者って言ったんだけど、私の父親は医院長でもあり、藤堂グループの代表取締役でもあるからさ…

色々とびっくりです(汗)


だから、うちの親は何も言わなくなったんですね(笑)


有り難いですけど。


夏のライブまでしばらくレッスン一緒ですか?


ボイトレとかも一緒だったりしますか?

多分、レッスンで会うことは多いと思うよ。


よろしくね♪白石 千春ちゃん。


もし、千春ちゃんさえよければ、一緒に成瀬 紗絵に勝ちにいこう。


まだ、駆け出しだけど、千春ちゃんならきっといけるよ。


頼りないけど、私も付いてるし(笑)

私が、女王に挑むんですか?!


全然私なんかじゃ、足元にも及ばないですよ?

私も、昔はそう思ってた。


でも、千春ちゃんはいけそうな気がするんだ。


あくまで私の勘だけどね(笑)

私がそこにたどり着くまで、成瀬 紗絵は現役でいますか?(汗)


もしくはたどり着く前に終わるかもしれないですけど(汗)

そんな弱気でどうするの?(笑)


上には上がいるんだから、努力のみ。


私も夏に向けて頑張るから、千春ちゃんも目の前のことから精一杯頑張ろう♪

そんなことを言っていると、時間が近づき、他のアカデミー生や講師が入ってきたので、私も千春ちゃんも話をやめた。
※藤堂 紬(成瀬 紬)19歳


夏のライブに1日復帰のため、アカデミーでレッスン中

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登場人物紹介

成瀬 紬(なるせ つむぎ)。

物語の主人公。紗絵の姪。内気で気弱。

成瀬 紗絵(なるせ さえ)。紬の叔母。

アーティスト、マルチタレント。

T.Kレコード所属RISE-1のメインボーカル。

山本 登(やまもと のぼる)。山本道場師範。修也の父親。絵里や紗絵の恩師。

山本 千鶴(やまもと ちづる)。修也の母親。

山本 修也(やまもと しゅうや)。のちに紬の幼馴染となる人物。初恋の人は茅ヶ崎 恵美。

沢田 水子(さわだ みずこ)。T.Kレコード会社マネージャー。紗絵の所属するグループRISE-1の担当マネージャー。

茅ヶ崎 恵美(ちがさき めぐみ)。

アーティスト、マルチタレント。紗絵と同じRISE-1のメンバー。紗絵とは親友でもありライバル。

佐々木 虎男(ささき とらお)。ギャング組織での一員。のちに紗絵の舎弟的存在となる。

藤堂 英玲奈(ふじどう えれな)。

美少女コンテストで紗絵が負けた相手。

美少女コンテストグランプリ受賞者。

紗絵より年齢は1つ上。

藤堂グループの令嬢。高飛車で性格は悪い。

安西 楓(あんざい かえで)。紬と修也と同年代で二人が高校生の頃に登場する人物。

紬の恋敵。

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