第189話 授業参観

文字数 2,492文字

今日は娘達の授業参観。歩いたり、自転車でも行ける距離なのに、私は用意するのに時間がかかってしまい、車で行こうとすると修也に言われた。
小学校そんなに遠くないんだし、歩きで良くないか?


てか、化粧長いから時間なくなるんだろ(笑)


主役は紬じゃなくて、子供達だろ?(笑)

女は色々時間かかるもんなの!それにせっかく学校行くなら、子供達の自慢のお母さんになれるように綺麗にしていきたいでしょ。


男はいいでしょ簡単でさ。


え〜歩き?5月といえど外は結構暑いよ?本当なら半袖なりたいくらいだし(汗)


歩いて汗かいたらせっかくの化粧が崩れるんだけど。

はいはい。わかったよ。じゃあ車は俺が運転するからいいよ。


なんか、自分達が親になって今度は授業参観だなんて、あのときの親の気持ちが少しはわかった気がするな。


紬なんて、紗絵姉に感謝しろよ。


休みが滅多になくて忙しかった頃でも、来てくれてたんだからさ。

修也は私と結婚して紗絵ちゃんが義母となっても、昔からの言い方に慣れてしまっているのか紗絵姉って未だに呼んでいる。


紗絵姉って聞くと、私は芸能人だった頃の紗絵ちゃんをなんだか思い出してしまう。


(私が子供の頃、そういえば来てくれたっけな…)

そうなことを思いながら車の助手席に乗る。
昔は自分達が授業参観見られてた側だったのに、見る側になった感想は?(笑)
感想はってまだ見てもいないのに?(笑)


今日休み取れたからいいけど、俺は毎回、行けるか分かんないしな。


そういえば、紗羅が千春ちゃんのライブが横浜スタジアムでやるからどうのこうのとか、言われたんだけど?ママからパパが良いって言うならとか言われたとか言ってたけど、千春ちゃんに合わせてあげたらいいじゃん?(笑)

修也は車を発進させながら、そう言った。
だって、お母さんだってさ特にそのことには触れないし言わないし、私も子供達にそのこと、あえて言わなくていいと思って何も言ってこなかったのに、今更、実は成瀬 千春は自分もいた事務所の後輩でしたみたいなこと言いづらいし、なんか言いたくないでしょ(笑)


万が一知って学校で言いふらしたりしても、色々面倒なことになるでしょ。チケット取ってとか、例えば千春ちゃんに会わせてほしいとか、どうのこうのとか、巻き込まれたら面倒でしょ?


絵奈はまだしも、紗羅は根堀葉掘り聞いて来そうでしょ?(汗)

まぁ、そうだよな。その通りかもな。


俺は芸能界知らないから、素人考えで言えば、元芸能人なんだ、成瀬 千春と知り合いなんだ、じゃあ色々お願い、なんて考えそうだもんな。


でも、紬も紗絵姉も子供達にいつまで言わないつもりなんだ?


義父さんも家の親父も、お袋も空気読んで、何も言わないけど、俺も今までは知らん顔してたけど、子供達がこの先、もっと成長したら、色々知るかもしれないだろ?

(いつまでって言われても、私はいつまでも特に言うつもりないよ。)
そう思ってたら、車は小学校に着く。
私と修也は車を降りると、他の親達に挨拶をしながら、教室に向かう。


絵奈も紗羅も同じクラス。


二人で教室に入ると授業参観の内容は何かの発表みたい。

比較的活発で友達の多い紗羅の友達にたくさん話しかけられた。


紗羅のママなの?って。


だから私は「そうだよ♪いつも紗羅と絵奈と仲良くしてくれてありがとう。これからもよろしくね」って伝えると、「可愛いねとかびじんだね」って言ってもらえた。


それを聞いていた修也が私に余計なことを言ってきた。

化粧に時間かけてきた甲斐があってよかったじゃん(笑)
ちょっとカチンときたけど、ここは学校…


怒るわけにはいかない。私は愛想笑いを浮かべて言った。

本当に良かった良かった(笑)


すいませんね〜時間かけないと可愛くなれないもんで(笑)


結果的には、自慢のママでいれそうで何よりですね〜(笑)

そんなことをしていると、先生がきて、授業参観は始まった。


最初の子から、将来なりたいものについての発表だった。


将来なりたいなんて言ったってまだ小学1年生。これから、いくらでも可能性はあるし、夢だってそのままの人もいれば変わる人もいるだろう。


(そういえば、私のこのくらいの歳の時は夢ってなんだったっけ?絵奈と紗羅は何になりたいのかな?)


そんなことを思いながら、聞いていると、まずは、絵奈の番になった。


先生に山本 絵奈さんと呼ばれ席を立つ、絵奈。

はい!私の夢。


私の夢は成瀬 千春みたくなることです。


たくさんお歌を歌って、ドラマとか映画にも出たいです。あと可愛いお洋服を着て、モデルもしたいです。


おばあちゃんにこの間、この事を話したら、沢山色んなこと頑張ろうねって言われました。横浜スタジアム観に行きたいって言ったら、おばあちゃんが連れて行ってくれるって言ってました。楽しみです。


だから、私は沢山色んなこと頑張って成瀬 千春みたくなりたいです。

絵奈の発表が終わると他の子の発表のときのようにみんなが拍手する。


(絵奈、紗絵ちゃんとそんな話してたなんて知らなかった…)

間に他の人の発表もあって今度は紗羅の番。


先生に次は山本 紗羅さんって呼ばれると返事をして、紗羅が席を立つ。

はい!私の夢は成瀬 千春みたくなることです。


絵奈よりも上手にお歌も歌って、ドラマとか映画にも出たいです。絵奈よりも可愛いお洋服を着てモデルさんもしたいです。私の方が絵奈より脚が長いです。


絵奈と一緒におばあちゃんに横浜スタジアムに行きたいって私も言いました。


おばあちゃんは私も連れて行ってくれるって言ってました。楽しみです。


パパは横浜スタジアムのチケット頼んだのに何も言ってきません。ママはパパに聞いてみようね以来何も言ってきません。


ばあちゃんの方が頼りになります。


頑張ります。

紗羅の発表は少し笑いが起きた。


修也は紗羅の発表に少しバツが悪そうな顔をしていた。


私も少しバツが悪い…


でも、二人とも成瀬 千春になりたいって…


紗絵ちゃんが連れて行くってチケットどうするつもりなんだろう…


初めての小学校の授業参観は絵奈と紗羅の夢を聞いて、驚いた反面、血は争えないなとも思った…

※山本 修也 33歳
※山本 紬 33歳


娘の絵奈と紗羅の授業参観にて

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登場人物紹介

成瀬 紬(なるせ つむぎ)。

物語の主人公。紗絵の姪。内気で気弱。

成瀬 紗絵(なるせ さえ)。紬の叔母。

アーティスト、マルチタレント。

T.Kレコード所属RISE-1のメインボーカル。

山本 登(やまもと のぼる)。山本道場師範。修也の父親。絵里や紗絵の恩師。

山本 千鶴(やまもと ちづる)。修也の母親。

山本 修也(やまもと しゅうや)。のちに紬の幼馴染となる人物。初恋の人は茅ヶ崎 恵美。

沢田 水子(さわだ みずこ)。T.Kレコード会社マネージャー。紗絵の所属するグループRISE-1の担当マネージャー。

茅ヶ崎 恵美(ちがさき めぐみ)。

アーティスト、マルチタレント。紗絵と同じRISE-1のメンバー。紗絵とは親友でもありライバル。

佐々木 虎男(ささき とらお)。ギャング組織での一員。のちに紗絵の舎弟的存在となる。

藤堂 英玲奈(ふじどう えれな)。

美少女コンテストで紗絵が負けた相手。

美少女コンテストグランプリ受賞者。

紗絵より年齢は1つ上。

藤堂グループの令嬢。高飛車で性格は悪い。

安西 楓(あんざい かえで)。紬と修也と同年代で二人が高校生の頃に登場する人物。

紬の恋敵。

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