第38話 謝罪記者会見

文字数 2,075文字

記者会見当日。


紗絵ちゃんに恵美ちゃんは朝早くから行ってしまった。


いつも通り修也と中島君と学校に登校する私。


授業中に会見の時刻が迫る。


(どうなったかな?紗絵ちゃんはちゃんと会見できてるのかな?)


ソワソワして落ち着かなかった。


給食を食べ終われば、休み時間が長いので、そこでニュースになっていればスマホで、会見を見ようと思っていた。

授業がろくに頭に入ってこない…


休み時間になると美咲ちゃんに話しかけられた。

そのさ、あんた結構授業中ソワソワしてるのわかったからさ。SAEの会見が気になってたんでしょ?


私授業中先生にバレないようにスマホで見てたからさ、知りたかったら、結果だけでもどんな感じだったのか教えるけど?

ありがとう!知りたい!教えてくれる?
結果から言うと、ちゃんと誠実に自分の黒い過去を語った上で、謝罪して、今は関係ないみたいな感じだから、中にはアンチいるだろうけどさ、もともとファンだった人がみんなが離れるとかそんなことはないと思うよ。


あくまで私の感想だけどさ。


でも、SAEよりリーダーの茅ヶ崎の方がいいこと言ってたよ(笑)


SAE改名するみたいだよ。


最初の芸能界デビュー時の成瀬 紗絵(なるせ さえ)に戻すみたいだよ。


なんで戻すかは会見で言ってたから、後で見てみなよ。


私が見たのはそんな感じ。でも、娘なんだから、あんたのほうが詳しい話はわかるだろうけどさ。


じゃあそれだけだからさ。

そう言うと美咲ちゃんは自分の席の方に戻って行く。
ありがとう!私が気になって仕方ないのも気づいてくれてありがとう!
美咲ちゃんは振り返らず自分の席に戻っていった。


振り返らなかったのは、嫌がらせとかそんなんじゃないのはわかった。


不器用な人だから、恥ずかしかっただけなんだろう。


私が転校してきた時とは違って、美咲ちゃんは、ちゃんと私を見てくれるようになったから、ソワソワしてたのも気づいてくれて、わざわざ話しかけてくれたのだろう。



前と違って、もっとちゃんと仲良くなれたらいいなと思えた。

給食を食べ終え、お昼休み時間で私はスマホを取り出しRISE-1の会見をネットで探し、見つけると周りの迷惑にならないようにイヤホンをつけて、会見動画を再生する。
紗絵「まずは本日お集まり頂き誠にありがとうございます。この度は私のことでファンの皆様並びに関係者の方々の信用を損ねてしまい誠に申し訳ございませんでした。


週刊誌に書かれた記事については事実です。私は過去に人の道をそれていた時期があります。それは消せない過去です。皆様に黙っていたこと、裏切っていたことを心より謝罪いたします。


一時期の期間は確かにそうでしたが、それ以降はそのようなことはございません。私は今後SAEから、かつて芸能界にデビューした時の成瀬 紗絵に改名させて頂き、再出発したいと思っております。この度はお騒がせして誠に申し訳ございませんでした。」


紗絵ちゃんがそう言って頭を下げると、他のRISE-1のメンバーも頭を下げた。


頭を上げるとマイクを恵美ちゃんに渡す紗絵ちゃん。




茅ヶ崎「この度は誠にお騒がせいたしました。この件は週刊誌にのりました紗絵の件については、私達RISE-1のメンバーもデビュー前に知っておりました。知っていて私達も本日まで歩んできました。


世間では決して許されることではないことだと思います。その過去のことで本人は私達といる中でずっと悩み続けてきたと思います。


私達メンバーはそばにいて、紗絵が苦しみ、悩み、壊れてしまいそうなそんな姿も見てきました。


過去は誰も変えられません。私達は私達と知り合ってからの紗絵、今の紗絵、未来の紗絵を見ていきたいと思っています。


誰にでも一度や二度の過ちはありませんか?だから許してほしいとか、だから信用してほしいとか、私達は言うつもりはありません。


私達の曲のランキングや出演番組など見れば、この報道の前と後では全然違うのは一目瞭然です。


それが世間の皆さんの私達に対する評価なんだと思います。


でも、私達はもともと0から始まってます。この中に小さな子供の頃からこの世界にいたメンバーはいません。


だから、私達RISE-1は今日、この日から、また始めます!6人でてっぺんを取ると誓ったあの日に戻ります!


今回のことで私達に見切りをつける方々もいると思います。でも、私達は必ず這い上がります!


この度は誠に申し訳ございませんでした。」



恵美ちゃんがそう言うと全員揃って深々と再度頭を下げた。


動画のコメント欄には、応援するとか、頑張れとか、消えろとか、やめろよとか賛否両論だった。

紗絵ちゃんは謝罪記者会見後、事務所からの自宅謹慎は解かれ、はれて復帰することになるのだが、新CM女王からの転落、ドラマや映画からの降板、番組出演依頼のキャンセル、多額の違約金など、この先の課題は山積みだ…


この時の私はまだ子供で、お金のことはお小遣い程度の金額しか知らない…


多額の違約金は数億にのぼる。この金額の重さを当時の私は全く理解できていなかった…

※RISE-1 SAE(成瀬 紗絵)20際


謝罪記者会見前、準備中

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登場人物紹介

成瀬 紬(なるせ つむぎ)。

物語の主人公。紗絵の姪。内気で気弱。

成瀬 紗絵(なるせ さえ)。紬の叔母。

アーティスト、マルチタレント。

T.Kレコード所属RISE-1のメインボーカル。

山本 登(やまもと のぼる)。山本道場師範。修也の父親。絵里や紗絵の恩師。

山本 千鶴(やまもと ちづる)。修也の母親。

山本 修也(やまもと しゅうや)。のちに紬の幼馴染となる人物。初恋の人は茅ヶ崎 恵美。

沢田 水子(さわだ みずこ)。T.Kレコード会社マネージャー。紗絵の所属するグループRISE-1の担当マネージャー。

茅ヶ崎 恵美(ちがさき めぐみ)。

アーティスト、マルチタレント。紗絵と同じRISE-1のメンバー。紗絵とは親友でもありライバル。

佐々木 虎男(ささき とらお)。ギャング組織での一員。のちに紗絵の舎弟的存在となる。

藤堂 英玲奈(ふじどう えれな)。

美少女コンテストで紗絵が負けた相手。

美少女コンテストグランプリ受賞者。

紗絵より年齢は1つ上。

藤堂グループの令嬢。高飛車で性格は悪い。

安西 楓(あんざい かえで)。紬と修也と同年代で二人が高校生の頃に登場する人物。

紬の恋敵。

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