第22話 黙っててごめんね…

文字数 3,244文字

修也と中島君のおかげでようやく普通の学校生活を送れるようになった私。


でも…今日は授業参観だ…


私は以前に紗絵ちゃんを学校に呼ばないのか修也と中島君に聞かれたけど、仕事に忙しい紗絵ちゃんにプリントを渡すつもりはなく、呼んでいなかった…


母親になってくれたとはいえ、まだお母さんって呼んだことはない。

 

小さい頃から、紗絵ちゃんって呼んでるんだから、そう簡単に変えられない…


紗絵ちゃん自身も私に紗絵ちゃんって呼ばれるのに慣れてるからか、特に気にしてなさそうだ。

いつも通り、修也と中島君と学校に来て、授業を受け、いよいよ授業参観の時刻が近づき、校庭にはみんなのお父さんやお母さんの車が外にいる先生達に誘導され、次々入ってくる。


みんなは自分の親の車が来ると指を指してうちの親なんだと言い合っている。


私も新しく出来た友達に親が来ないのか聞かれたけど、お母さんは仕事忙しいから今日来れないって教えた。

外に1台見覚えのある車が入ってきた。黒のベンツから降りてきたのは師範と千鶴さんだ。
授業参観が始まり、私のクラスでは一つずつお父さんやお母さんに向けた作文の発表が始まった。私は35人中、15番目。


発表は進み、いよいよ私はあと3番目となった時に、ちょっとうるさい車の音が校庭の方からした。

窓側の人達が外を見ている。窓側を見ている人達の声が歓声に変わった。


その声を聞いて、クラスのみんなが窓側に集まる。そして歓声はさらに大きくなる。


隣のクラスも、同じ学年のクラスも、他の階の他の学年もベランダに出てきてたり、窓側に授業中なのに、みんな寄って外を見ている。

私も窓側に移動して、外を見ると、歓声にこたえる紗絵ちゃんが手を振りながら歩いていた…
担任の先生を見ると、担任の先生はニコニコして私を見ていた。
みなさ〜ん!静かにしてください!


席についてください!続き始めますよ〜。

紗絵ちゃんが校庭に登場したことにより、学校に親戚いるのかとか、もしかして子供いるのかとか、近くの友達同士とかがヒソヒソ話している。
先生に言われると、少しは静かになり、発表の続きが再会され、いよいよ私の前の人の番になった時、教室の後ろの出入口の扉が空いた。
ガラガラ


扉が開く

遅くなりました〜。すいませ〜ん。失礼します。
ペコペコ頭を下げながら入ってくる紗絵ちゃん。


ガラガラ


扉を閉める。


私のクラスはうるさくなる。キャーキャー悲鳴をあげる子や、スゲー本物だ!なんて騒ぐ子、マジでマジでって連呼してる子、軽いパニック状態だ。

親達もオドオドして動揺している。急に小学校にしかも自分のクラスにテレビをつければ必ず何かに出ていて、若者からは特に人気が高い、今トップクラスに売れている芸能人が現れたのだから。
親達が立っている後ろのスペースの端っこの方に立った紗絵ちゃん。
皆さん静かにしてください!


続き始めますよ〜!


SAEさん、もうすぐですし、せっかくなので真ん中にどうぞ。

では、皆さん、すいません。お言葉に甘えて、失礼しま〜す。
紗絵ちゃんはそう言うと、真ん中につかつか移動した。

真ん中に元々いた親達は遠慮して紗絵ちゃんにどうぞといわんばかりにスペースを作ってた。

私の前の子が作文を読み始め続きが始まった。


前の子が読み終わり、作文をお父さんお母さんに渡す。みんなから拍手され席に戻る。

はい!じゃあ次は成瀬さん!お願いします。
はい!


今までみんなにはちゃんと話したことはありません。この場をかりて少し聞いてもらえたらと思います。

※私の作文


私にはお父さんはいるのですが、お父さんが誰なのかはわかりません。詳しくは私もわかりません。


私を生んでくれたお母さんは私が4歳の頃に病気で亡くなってしまいました。


おじいちゃんやおばあちゃんも事故で私がこの学校に転校してくる前に亡くなってしまいました。


もう会えないけど、お母さん、おじいちゃん、おばあちゃんにもとても感謝しています。


私にはもう1人お母さんがいます。私の今のお母さんは仕事がとても忙しくて、帰りの時間もバラバラで休みも少ないです。


私の今のお母さんは、私を生んでくれたお母さんの妹です。小さい頃から、紗絵ちゃんって呼んでたので、お母さんになってくれた今も紗絵ちゃんって呼んでしまいます。


私のお母さんはテレビに出ている姿は綺麗だったり、可愛かったり、カッコよかったりしますが、家では料理は下手くそな一面もあります。


休みの日は変装して一緒に出かけてくれます。でも、変装は中途半端でバレることがないか、私の方がハラハラしてます。本人は自覚がないのか中途半端な変装でバレない自信満々です。


今日、私のお母さんは仕事なはずなので、この場にはいないと思うので、いつも言えないことを言いたいと思います。


これからもよろしくね。いつもありがとうお母さん。大好きだよ。

読み終わると私はたくさんの大きな拍手につつまれながら、紗絵ちゃんにちょっと照れながら書いた作文を渡す。


紗絵ちゃんはちょっと泣いていた。

私の番が終わったあとも、紗絵ちゃんは残って最後の子が終わるまでいてくれた。


全員が発表が終わり、時間が10分ほど余った。

皆さん。よく出来ましたね。じゃあ、少しだけ時間が余りましたので、最後にこんな機会は滅多にないと思いますので、SAEさんに自己紹介となにかしてもらいましょう(笑)

ては、前へどうぞ!

先生がそう言うと、クラスの人達や親達からも拍手が起きた。


困りながら、前にでてくる紗絵ちゃん。普段から人前に出てるからか、緊張とかはまったくしてなさそうだ。

先生に変わって、教壇に立つ紗絵ちゃん。
皆さん、こんにちは。ご紹介にあずかりましたSAEです。


芸名はSAEですが、本名は成瀬 紗絵(なるせ さえ)です。


紬ですが、産みの親は私の姉の成瀬 絵里(なるせ えり)ですが、5年前に亡くなってしまい、今は私の娘になってくれました。


皆さんは夢はありますか?


今、私は芸能界にいますが、最初からこの世界に入りたいと思っていたわけではありませんでした。


最初はパン屋さんになりたいとか、普通にお嫁さんになりたいとか、女の子がなりたいようなことに私も憧れてました。


どちらかといえば私のやることは紬の産みの母親である姉の真似ごとばかりでした。


そして、姉よりも私はいつも結果を出せませんでした。


ふてくされていた時期もあります。


姉に影響されて、私の夢は歌手になることに変わりました。


途中で、私には向いていないとか、無理なんじゃないかとか、思ったりするときも正直ありました。


でも、今は幸運なことに歌手をさせてもらえてます。


今やりたいことがあったら全力で頑張ってみてください。挑んでみてください。


時間には限りがあって嫌でも歳を取ります。


まだまだ大人になるまで先じゃんなんて思うかもしれません。


でも、あっという間に大人になってしまいます。


今は夢がないという人もいて当たり前だと思います。


自分が興味があったり、楽しいなと思うことを、自分には無理だとか向いてないとか気にしないで見つけてみてください。


そして、後ろにいる親御さん達も、自分の子供には、そんなこと向いてないとか、絶対無理とか思わないであげてください。


誰だって何にでもなれる。特別な人なんていないと私は思います。


そして、このクラスで一緒になれたのも何かの縁だと思いますので、人間ですからもちろん好き嫌いがあったり、合わないななんていうのもあるとは思いますが、もしかしたら、実は共通点があって親友になることもあるかもしれません。


嫌なところばかり見ないで、いいところ見つけてみませんか?


誰でも1つくらいは良いところあると思いますよ?


私が今日ここで何か出来るとすれば歌うことくらいですが、マイクもなければ、音源もなく、アカペラですので遠慮しておきます(笑)


ご静聴ありがとうございました!


娘の紬を皆さんよろしくお願いします!

たくさんの拍手と歓声につつまれ授業参観を終えた。

※RISE-1 SAE(成瀬 紗絵)20歳

白金小学校 授業参観

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登場人物紹介

成瀬 紬(なるせ つむぎ)。

物語の主人公。紗絵の姪。内気で気弱。

成瀬 紗絵(なるせ さえ)。紬の叔母。

アーティスト、マルチタレント。

T.Kレコード所属RISE-1のメインボーカル。

山本 登(やまもと のぼる)。山本道場師範。修也の父親。絵里や紗絵の恩師。

山本 千鶴(やまもと ちづる)。修也の母親。

山本 修也(やまもと しゅうや)。のちに紬の幼馴染となる人物。初恋の人は茅ヶ崎 恵美。

沢田 水子(さわだ みずこ)。T.Kレコード会社マネージャー。紗絵の所属するグループRISE-1の担当マネージャー。

茅ヶ崎 恵美(ちがさき めぐみ)。

アーティスト、マルチタレント。紗絵と同じRISE-1のメンバー。紗絵とは親友でもありライバル。

佐々木 虎男(ささき とらお)。ギャング組織での一員。のちに紗絵の舎弟的存在となる。

藤堂 英玲奈(ふじどう えれな)。

美少女コンテストで紗絵が負けた相手。

美少女コンテストグランプリ受賞者。

紗絵より年齢は1つ上。

藤堂グループの令嬢。高飛車で性格は悪い。

安西 楓(あんざい かえで)。紬と修也と同年代で二人が高校生の頃に登場する人物。

紬の恋敵。

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