第142話 私の就職先

文字数 2,450文字

紗絵ちゃんとの激闘を制した私はメディアに引っ張りだことなったが、年が明け、春を迎え契約更新はせずに表舞台から退いた…


成瀬 紗絵に競り勝った新時代の象徴成瀬 紬は表舞台から突如消えたため、マスコミには色々探られそうになったが、藤堂グループの圧力により詳しいことは明らかにならなかった…


最後のテレビ出演時に私を応援してくれた人達に謝った…


これからというときに凄く申し訳ないと思った…


裏切る形になってしまったけど、普通の人になりたい気持ちがやはり上回ってしまったということを発表すると、結果的には惜しんでくれた人もいれば批判する人もいた…


紗絵ちゃんは最初で最後になるってわかってたはずだし、最優秀賞を受賞しステージで歌う私を拍手して泣きながら喜んでいたはずなのに、家では「あれは運が悪かったからもう一回」とか、「泣きのもう1回お願いします」とか「来年は私はもっと違うんだよねとか」表では決して見せない大人とは思えない情けないお願いばっかりしてきた…


私が契約更新をしないことを伝えると、結構がっかりしていた…


でも、契約更新しなくても職員として残らないかと言われていることを言うと、嬉しそうだった。



修也は無事に現役で医大に合格した。楓や美咲ちゃん達もそれぞれ進学や就職とそれぞれの道を無事に希望通り進んでいる。



そして、4月から私はT.Kレコード事務所の職員として働くことになった。


職員として残ってくれるならイベントの企画だったりとか、新ユニットの立ち上げ等に携わる、企画部という部署に来てほしいと言われたので、進路の決まっていなかった私は面白そうと思って、是非お願いしますと申し出た。


歌手時代それなりに稼いだ。汚い話、印税も入ってくる…


紗絵ちゃんのソロデビュー曲「Fly high」の作詞も成瀬 絵里となっていたが、私に印税が入ってきていた… 


新入社員研修を受け色々と学んだが、もともと業界の表舞台にいた私は、比較的、現場のことに直結する仕事の呑み込みだけは早かった。


企画やプロデュースに携われると言っても、私はペーペーの新入社員…


雑務が中心…そして沢田さんみたくパソコンを使いこなすことも出来ない…


表で華やかな場所にいるのとは違い裏方の仕事はスポットライトを浴びることはなく、誰も応援なんてしてくれないけど、いつか自分がプロデュースしたユニットやグループが羽ばたく姿をみてみたくて、精一杯雑務もへこたれずにこなす日々…



最初こそ、少し遠慮されてたのか、丁重に扱われていたけど、入社して新人研修が終わると、普通に怒られることも増えた…


普通に考えたら、会社員ってそういうものなのかもしれないけど、芸能界で比較的スポットライトを浴びる場所にいさせてもらえることが多かった私には、


(会社員って凄い…みんなよく毎日満員電車に揺られたりしながら、通勤して、働いて、学生とは全然違うな)と実感させられた…

私はかつての名前と芸名成瀬 紬ではなく、現在は藤堂 紬としてT.Kレコード事務所の職員として働いている。


医大生になった修也とは、今も交際している。


お互いに実家暮らしと言えばいいのだろうか。お隣さんでもある。

紗絵ちゃんは、30歳までには結婚したいなんて前に言ってたけど、今年で30歳になるが、女王 成瀬 紗絵として芸能界でトップアーティストとして君臨し続けている。


変わったことと言えば、復帰して以来女優やモデルの仕事は一切していない。


他の仕事もて脚にあまり負担をかけないようにとのことらしい。


これは紗絵ちゃんの意向というよりは事務所の意向らしい。


そして、お父さんとの結婚はもうちょっと先になりそう(笑)

私は仕事の休みはシフト制で平日休み休みもあれば休日休みの時もあるけど、修也は大学生のため、私が平日休みでも、時間は取れる。


就職してはじめて二人で、私の休日に外で何気なく、ファミレスに夕飯を食べに言ったときのことだった。

ごめんな。俺、貧乏大学生だから、こんなファミレスしかこれなくて(汗)


その変装も、もう時期しなくても、気楽に外を出歩けるようになるといいよな。


なんか、就職したら地味になったな(笑)

全然。私は紗絵ちゃんみたいに金銭感覚麻痺してないからさ(笑)


ファミレス久しぶりだよ。中学生以来かな?


失礼なやつ。わざと地味にしてんの(笑)


派手にして目立ってどうすんの?(笑)


キャップは被らないけど、会社でもこんな感じだよ。

裏方にまわった感想は?


仕事は大変?


紗絵姉にも仕事であったりすんの?

裏方にまわった感想は雑務。ひたすら雑務(笑)


企画とかプロデュースに携わるって聞いたから、入ったのにさ、騙された?くらいに私の仕事は雑務…(笑)


新入社員だし、遣い物にならないからしょうがないんだろうけどさ、


でも、雑務ばっかだけど、凄くいい特権が与えられてるんだ。なんだと思う?


紗絵ちゃんとは仕事で会うこと全然ないよ(笑)

紬に負けたのがよっぽど未練あるのか、家にまできて、母ちゃんにも父ちゃんにも俺にも「あれは違う。明日から本気出す」とかわけわかんねーこと言ってたくらいだからさ(笑)


不快な思いさせたら悪いけど、何で芸能人モードの時は完璧そうなのに、プライベートなるとポンコツなるんだろうな(笑)


特権?ズル休み何日かオッケーとか?(笑)

大丈夫大丈夫(笑)それ私も思ってるから(笑)


まぁ、それも含めて成瀬 紗絵なんじゃない?(笑)


多分与えられた特権は難しいから、答え言うね。


なんか気になる子を見つけたら声をかけてスカウトしていいんだって。


それが私に与えられた特権(笑)


今のところピンと来たことがないんだけどね。


スカウトとか響きがかっこよくない?!

まぁスカウトって聞くと響きは確かにかっこいいよな。雑務兼スカウトです的な?(笑)
雑務兼ってひどくない?(笑)
他愛もない会話を修也としていると、中学生くらいの女の子達が入ってきて、私達の隣の席に座った…


これが私と白石 千春という少女との初めての出会いだった…

※藤堂 紬(成瀬 紬)18歳


社会人1年目

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登場人物紹介

成瀬 紬(なるせ つむぎ)。

物語の主人公。紗絵の姪。内気で気弱。

成瀬 紗絵(なるせ さえ)。紬の叔母。

アーティスト、マルチタレント。

T.Kレコード所属RISE-1のメインボーカル。

山本 登(やまもと のぼる)。山本道場師範。修也の父親。絵里や紗絵の恩師。

山本 千鶴(やまもと ちづる)。修也の母親。

山本 修也(やまもと しゅうや)。のちに紬の幼馴染となる人物。初恋の人は茅ヶ崎 恵美。

沢田 水子(さわだ みずこ)。T.Kレコード会社マネージャー。紗絵の所属するグループRISE-1の担当マネージャー。

茅ヶ崎 恵美(ちがさき めぐみ)。

アーティスト、マルチタレント。紗絵と同じRISE-1のメンバー。紗絵とは親友でもありライバル。

佐々木 虎男(ささき とらお)。ギャング組織での一員。のちに紗絵の舎弟的存在となる。

藤堂 英玲奈(ふじどう えれな)。

美少女コンテストで紗絵が負けた相手。

美少女コンテストグランプリ受賞者。

紗絵より年齢は1つ上。

藤堂グループの令嬢。高飛車で性格は悪い。

安西 楓(あんざい かえで)。紬と修也と同年代で二人が高校生の頃に登場する人物。

紬の恋敵。

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