第124話 見つけた私の桜

文字数 2,307文字

沈黙が破れて修也が言った。
外、暗くなってきたけど、散歩いかね?
(え…?返事は?(汗))
いいけど、散歩?
そうだよ。散歩。食後の散歩。ちょうどいいだろ?運動不足だと太るぞ?(笑)


あ!昔は太ってたか(笑)

(なにそれ…バカにされてる?)
はいはい。食後の散歩すればいいんでしょ。もう太ってないし。
修也と私は部屋を出た。リビングに行くと大人達はみんなでデザートかなんか食べながら話していた。
すいません。ちょっと暗くなってきましたけど、散歩してきます。紬を危険な目には合わせないので安心してください。マンションの周りを散歩してきます。
え?今から散歩するのかい?夜じゃなくてもいいんじゃないのかい?
修也がそう言うとお父さんは少し反対気味に言った。
いいんじゃないですか?修也は私より雑魚だけど、空手やってたので、大丈夫ですよ。


行かせてあげて。

(紗絵ちゃん雑魚って言い方あるでしょ…)
私はそう思ったけど、修也は気にしてない。
紗絵ちゃんに言われるとお父さんは引き下がった。
紗絵姉黒帯だもんな。んじゃ行ってくるよ。
ありがとう。じゃあ行ってくるね。
二人とも気をつけてね♪
紗絵ちゃんに見送られて私達は外に出てきた。
修也の横を久々に歩いた気がする…
なんか、久しぶりだね…


身長また伸びたね。安西さんに勉強教えてもらってた?


みんな元気にしてる?

そうだな…中学生以来だな…


身長は180になった。でも、紬のお父さんも身長高いじゃん。


質問多いな(笑)


楓には学校で、今でも時々教えてもらってた。


みんな元気にしてるよ。紬が帰ってきたって聞いたらきっとみんな喜ぶ。


みんなにはここに戻ってきたこと連絡したのか?

お父さんは178センチって言ってた。修也と同じくらいだけど、修也の方が大きいじゃん。


安西さんのこと何で振ったの?


あんなに可愛い子、そうそう現れないよ?(笑)


まだしてなかったよ。なんか申し訳なくて連絡出来ずにいたんだよね…

紬は新しい学校で、告られたりしてないのか?


髪染めたのか?


みんなには申し訳ないなんて思わなくていいと思う。


あいつ等はみんなそんなやつらじゃない。高校生になっても、みんなでいた中学の時と変わらずいい奴らだよ。


紬が一番良くわかってるはずだろ?


楓は可愛いよな…俺もそう思う…


周りにも言われたよ、バカだなってな(笑)


中島になんて、ありえねーだろ死ねとか言われたからな(笑)


何で振ったか、それは…

修也がそこまで言うと、マンションの周りの桜並木がきれいで私は立ち止まって見上げた。

まぁ、そういうこともあるけど…


気づいた?撮影でね、染めたの。


みんな、変わってないならよかった!


中島君なんて相変わらずだね(笑)


このマンションの周りにこんなに奇麗に桜が咲いてるなんて、昔は気にしたこともなかったなぁ〜。

俺も昔は、そんなの気にしたことなかった…


紗絵姉に教えられたんだ…丸山台行かなくてもここに綺麗な桜が咲いてるって…


紗絵姉は色々知ってる…でも、肝心なとこは口かたいから、紬には言わねーんだろうな…


たぶん自分の口で言えってことなんだと思う…

紗絵ちゃんは知ってるってどういうこと?何を知ってるの?


私この間、丸山台の公園の大きな桜の木の下でMUSIC VIDEOの撮影してきたんだ♪


でも、ここもいいね♪何本も桜の木がきれいだね。


夜だからライトに照らされてキレイだね♪夜桜ってやつかな?

俺…ずっと紬が好きだったんだ…


でも、言えなかったし、言わなかった…


紬に返事はいらないって言われたから、紬が言ってきたことは過去のことで、新しい人生歩むための区切りなのかなと思って、特に返事もしなかった…


紗絵姉がまだ、入院してた頃、何で安西さんと付き合わないのか聞かれたから、正直にこたえた…


紗絵姉は俺の話をただ聞いてくれて、特に何も言わなかった。


退院するちょっと前に病室に顔を出した時に色々あったことを言われた。


あっちに紗絵姉が行くときには、住所を教えるから丸山台の公園に紬を連れて行けって言われた。


こっちに紬達が来ることになったときには、丸山台まで行かなくても、ここに桜の木が何本もあるって言われた…


紗絵姉に紬が桜の答えを探していると言われた…

そっか。お互い気持ちは一緒だね。


じゃあさ、もう偽物の彼女じゃなくて本物の彼女にしてくれたらいいじゃん?(笑)

けど…紬はこれから歌手でデビューするんだろ?


俺と一緒にいたら、迷惑かけるだろ。


紗絵姉にもそう言ったことは話した。


そしたら、紗絵姉が自分の過去のことを俺に話した…


だから余計に言えなかった…


でも紗絵姉には、そんなのあんた達次第だから、わからないって言われた…

私、紗絵ちゃんは必ず返ってくるって信じてるんだ。


だから、私なんかじゃ、どうなるかわからないけど、私が成瀬 紗絵を世間に忘れさせたくなくて、頑張りたいって思ってる。


事務所は第二の成瀬 紗絵を探してるって言ってた…それで私に話が来た…


たぶん私が紗絵ちゃんの曲を歌っても誹謗中傷はたくさん出ると思う。


でも、私は紗絵ちゃんみたく才能に溢れてないから、選択を迫られることはないと思うんだ…


私メンタル弱いしさ…

邪魔じゃなかったら、俺、側にいてもいいかな?
よろしくね♪でもさ、そういうのってちゃんと言われた方が嬉しいよね?(笑)
じゃ、じゃあ…好きです…


付き合ってください…

喜んで!よろしくお願いします!(笑)
私は修也に抱きつくと、キスをした…


私の見た桜は夜桜でライトに照らされて綺麗な桜…


そして、今…私が思う桜は…


紗絵ちゃんの思う桜とは少し違って、暖かく温もりのある尊くて、明るい未来の始まり…


見つかったよ…私のSAKURA…

※成瀬 紗絵、山本家の住むマンションのすぐ近くの桜並木道
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登場人物紹介

成瀬 紬(なるせ つむぎ)。

物語の主人公。紗絵の姪。内気で気弱。

成瀬 紗絵(なるせ さえ)。紬の叔母。

アーティスト、マルチタレント。

T.Kレコード所属RISE-1のメインボーカル。

山本 登(やまもと のぼる)。山本道場師範。修也の父親。絵里や紗絵の恩師。

山本 千鶴(やまもと ちづる)。修也の母親。

山本 修也(やまもと しゅうや)。のちに紬の幼馴染となる人物。初恋の人は茅ヶ崎 恵美。

沢田 水子(さわだ みずこ)。T.Kレコード会社マネージャー。紗絵の所属するグループRISE-1の担当マネージャー。

茅ヶ崎 恵美(ちがさき めぐみ)。

アーティスト、マルチタレント。紗絵と同じRISE-1のメンバー。紗絵とは親友でもありライバル。

佐々木 虎男(ささき とらお)。ギャング組織での一員。のちに紗絵の舎弟的存在となる。

藤堂 英玲奈(ふじどう えれな)。

美少女コンテストで紗絵が負けた相手。

美少女コンテストグランプリ受賞者。

紗絵より年齢は1つ上。

藤堂グループの令嬢。高飛車で性格は悪い。

安西 楓(あんざい かえで)。紬と修也と同年代で二人が高校生の頃に登場する人物。

紬の恋敵。

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