第155話 SONG FOR YOU(女王のワガママ)

文字数 2,056文字

突然の出来事で少し困惑しながら、衣装室に向かう…


アトランティックスターズが紗絵ちゃんのバックダンサーを務めるのはいいと思う…


RISE‐1が一夜限り復活するのも有りだと思う…


着替えの準備の間のつなぎとして、私が途中歌ったのは、あくまでつなぎとしてだから、それも構わないと思う…


でも、この後はフィナーレなのに成瀬 紗絵のライブなのに私が一緒に出てしまうのはいいのだろうか…


もちろん、こんな機会はもうないかもしれないし、出来るならそうしたいけど、成瀬 紗絵を見に来た観客の人達に申し訳ないとか失礼なんじゃないかとか葛藤しながら歩く…


紗絵ちゃんがソロで最後、ライブのフィナーレを迎えたほうが、いいんじゃないかって気持ちの方が強い…

衣装室に入ると恵美ちゃんがいた…
きたきた♪


私の出番は終わったんだけどさ、紬ちゃんはこの衣装の出番残ってるんだよ。

そう言われて用意されていた衣装を見ると、ちょっと前のことだけど、懐かしい衣装がそこには用意されていた…
私、これを来て最後紗絵ちゃんとフィナーレ歌うの?


成瀬 紗絵のライブなのに…私が一緒にフィナーレはおかしいよね…


リハーサルで確認もしてないし、最後変になっちゃったら、申し訳ないよ… 

まぁ普通はそう思うよね(笑)


私の格好見て。RISE‐1は久しぶりだったし、私はもう芸能界引退して、何もレッスンも受けてないし、たった数曲でも結構大変だったのにさ、紗絵のために私はもう一度だけあの場所に行こうと思うんだよね。


後半、もう始まってるし、紬ちゃんが悩んでるうちにフィナーレ迎えるだろうからと思って、私ここに来た。


紗絵に昨日、突然アドリブでこうしたいとか言われて私もびっくりしたけど、そう言うとこ理解してあげられるの私くらいだしさ(笑)

恵美ちゃんの姿は出番が終わった後とは思えない…


またここで準備してたみたいな感じ…

恵美ちゃんが今着てるのは衣装だよね?


出番が終わった後の服でも私服でもないよね?

そうだよ。これは衣装。着替えて、メイクし直して、もう出番は終わったはずなのに、もう一回私はあのステージに戻るの(笑)
何で?だってこの後の曲の予定は恵美ちゃんも知ってるよね?
知ってるよ。紗絵のソロ曲で終わるのが本来の予定。


でも、紗絵から聞かされたのは紗絵と紬ちゃんで最後の曲を歌うかもしれないこと。


だけど、もしかしたら紬ちゃんにとっては突然のことで、準備が間に合わないかもしれない。


だから、私にしか出来ないことするの。


この後、予定にはないチガナルで1曲分、だいたい5分前後かな。


紗絵は前半のソロ、中盤のRISE‐1、後半のソロで、同い歳だから、わかるけど体力は限界なはずだよ。


更に今私が出ていけば本人の負担は増えるし、来てくれた人は望んでないかもしれないけど、私は行く。親友のために。


長引かせるから。急遽私が沢田さんに言って無理やりだから、スタッフの人もバタバタ(笑)


紬ちゃんが最後、出てきてくれなくても、予定通りライブは紗絵の歌唱でフィナーレを迎える。


まぁ強要できることじゃないし、紬ちゃん次第だけどさ(笑)

そう言って恵美ちゃんは準備が出来たのか部屋を出ていった…
用意された衣装を見て思う…


(女王はワガママだな…)

私が準備している間、スタジアムからはどよめきが起きているのがわかった。


チガナルが一夜限り復活したんだ…

なるべく急いだ…


メイクを直したり、髪をセットするのはメイクアップアーティストさんが急いで頑張ってくれた。


(多分、なんとかギリギリ間に合う…)

私は準備ができると、ステージ裏に向かう…


チガナルの曲の最後のあたりでスタンバイすることに間に合った…


(紗絵ちゃんが最後あの衣装を来てた理由、私にこの衣装を用意させた理由があたってるかわからないけど、二人でステージに立つなら自分の最高の状態でってことなのかな?)


紗絵ちゃんが着ていたあの衣装は、私と紗絵ちゃんが競った時の日本レコード大賞の時に着ていた衣装とまったく同じ…


そして、私に用意されていた衣装もその時とまったく同じだった…

何もお互いに確認してないのにチガナルの突然のアドリブで歌われた1曲は当時と変わらない息がピッタリあっていた…


(恵美ちゃん、ありがとう…私来たよ…)

曲が終わると、照明が一度消える…


もう一度、ライトがついて照らされた時、ステージの真ん中には、紗絵ちゃんと私が立つ…


後ろにはバックダンサーとしてアトランティックスターズがいる。


アトランティックスターズの5人に一度しか見せれないから、しっかり一番近くで見ていてほしい…


女王 成瀬 紗絵とかつて競った成瀬 紬の姿…


(最高の1曲になるように全力を尽くすよ紗絵ちゃん…今日、私は日本レコード大賞最優秀賞に輝いた、あの時の成瀬 紬だ!!)

※成瀬 紗絵 30歳


SONG FOR YOU〜hot summer〜


フィナーレ「Endless voyage」歌唱時

※成瀬 紬(藤堂 紬)19歳


SONG FOR YOU〜hot summer〜


フィナーレ「Endless voyage」歌唱時

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

成瀬 紬(なるせ つむぎ)。

物語の主人公。紗絵の姪。内気で気弱。

成瀬 紗絵(なるせ さえ)。紬の叔母。

アーティスト、マルチタレント。

T.Kレコード所属RISE-1のメインボーカル。

山本 登(やまもと のぼる)。山本道場師範。修也の父親。絵里や紗絵の恩師。

山本 千鶴(やまもと ちづる)。修也の母親。

山本 修也(やまもと しゅうや)。のちに紬の幼馴染となる人物。初恋の人は茅ヶ崎 恵美。

沢田 水子(さわだ みずこ)。T.Kレコード会社マネージャー。紗絵の所属するグループRISE-1の担当マネージャー。

茅ヶ崎 恵美(ちがさき めぐみ)。

アーティスト、マルチタレント。紗絵と同じRISE-1のメンバー。紗絵とは親友でもありライバル。

佐々木 虎男(ささき とらお)。ギャング組織での一員。のちに紗絵の舎弟的存在となる。

藤堂 英玲奈(ふじどう えれな)。

美少女コンテストで紗絵が負けた相手。

美少女コンテストグランプリ受賞者。

紗絵より年齢は1つ上。

藤堂グループの令嬢。高飛車で性格は悪い。

安西 楓(あんざい かえで)。紬と修也と同年代で二人が高校生の頃に登場する人物。

紬の恋敵。

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色