第172話 藤堂 紗絵はポンコツ…

文字数 2,207文字

春を迎え、私はレッスンの日々を送る。


職員じゃなくアーティスト兼タレントに戻った私…


楓の結婚式には修也とともに出席することが出来た。


最初こそあまりいい出会いではなかったものの、楓は今では私の大切な友人の一人。


東京に戻ってきてから、みんなには表舞台へ復帰することを決めたことを報告したら、修也からすでに聞いていたみたいで、みんな知っていた。


みんなからは、頑張ってねって応援された。


一方の千春ちゃんは高校を卒業し上京し、色々と新生活の準備をしている最中らしい。

修也は6年目、最後の医大生生活となる年。


世間は狭いもので、修也の研修生としての勤務先はなんと藤堂グループの経営する総合病院…


お父さんが医院長を務めている病気で楓の弟が入院している病院。


修也は私のお父さんには頭が上がらないみたいで、隣の家だから、たまに会うとかなり恐縮しているようだった…

紗絵ちゃんからはお父さんは修也の面倒をちゃんと見てやれと結構言われているみたいだけど…


一人だけを特別扱いできないお父さんの立場もわからなくはないが、修也の話によると仕事になると厳しい一面もあるらしい。





私は復帰してすぐに昔紗絵ちゃんが出ていた飲料メーカーのCMの仕事をもらえた。


今日はその撮影日。順調に撮影は進むとスタッフさん達に紗絵ちゃんは元気なのか聞かれた。


辞めて暇人してますよと答えるとスタッフさんたちは笑っていた。


(辞めても気にかけてもらえるなんて、やっぱり紗絵ちゃんは凄いよ…)


偉大な女王、成瀬 紗絵の親の七光りで多分もらえた仕事なんだろう…


(千春ちゃんは復帰したらどうなんだろうか。順調にスタート出来るのだろうか)


ふと思ったけど、今はまた昔みたいに成瀬 紗絵の劣化版なんて言われないように、撮影にだけ集中しよう…

無事に撮影を終えて家に帰ると紗絵ちゃんは出かけていたみたいでちょうど帰ってきたばっかりみたいだった。
ちょうどタイミング良かったね♪今日撮影だったんでしょ?


久しぶりの現場はどうだった?

まぁまぁかな(笑)


やっぱり久しぶりだからね(汗)


でも、ずっとここ何年も職員してたから、裏方さんの大変さや有り難さ、身にしみてよくわかったから、きっと失礼なことはないと思うよ?


結局、お母さんは元気なのかとか、そんな話ばっかりされたよ(笑)


私は久しぶりだねくらいしか言われなかったよ(汗)

まぁそうすねないの(笑)


ちゃんと頑張って、千春ちゃんの道しるべになるんでしょ?


簡単に負けちゃいけないよ?先輩なんだからさ(笑)

言いたいことはわかるけど…


そう言えば今日出かけてたの?

そうだよ。だってさ家に一人でいてもつまんないでしょ?


私ね、引退してから毎日ダラダラしてたわけじゃないんだよ。


医療事務の資格を取りました♪


病院で裏の権力で雇ってもらった(笑)

え?!いつの間に?!凄いね♪


裏の権力ってさ…お父さん?(笑)

そうだよ♪(笑)私も藤堂の総合病院でたまにだけど、アルバイトみたいな感じで、働くんだ♪


今日が初日だったんだけど、私芸能界にそれなりに長くいたから、普通の仕事まったくできないんだよね(汗)


めちゃくちゃ仕事できない人間なんだなってわかったよ(笑)


でも、みんな凄い遠慮して優しいの♪(笑)

(それは…みんな遠慮してるのは紗絵ちゃんが院長婦人だからだよ…多分普通の人なら怒られてるようなこともしてないといいけど…)
そ、そうか(汗)あんまり職員の人に迷惑かけないようにね(汗)
そう?そんなに迷惑かけてなさそうだよ?


あと、そういえば病院で修也にあったよ!


研修らしいんだけど、先生は先生だからね♪


若い看護師さんに取られないようにちゃんと見張りもしてきてあげるからね♪(笑)


今日の所は、若い看護師さんにとりあえずガンつけといたから、大丈夫だと思うから♪(笑)

(ガンつけといたって…そんなことしなくていいよ…お父さんも修也も紗絵ちゃんがろくでもないことばかりしてたら、先生なのに気が散ると思うんだけど…)
あんまりみんなに迷惑かけないようにね…(汗)
ん?もしかして私迷惑かけてる?


修也が患者さん診てたから何やってんの〜?って聞いたら凄い迷惑がられたんだよね(笑)


恥ずかしかったのかな?(笑)

あのね…私もあんまり人のことは言える御身分じゃないけどね、それは邪魔してるって言うんだよ(汗)


芸能界だったらね、知ってる人がいたら、話しかけたり、会話するの別にね周りの人がそういうの許してくれれば、いいと思うんだけどね、普通の仕事って言うのはね、業務中に知ってる人がいたからって、いちいち、そっちに話しかけに用もないのにいかないんだよ(汗)

私がそう言うと、紗絵ちゃんは気まずそうな顔をし始めた…
もしかして、1日中そういうことしてたの?(汗)
保さん見かけたら、話しかけに行ったし、修也見かけたら話しかけに行った…(笑)


周りの人何も言わなかったけど、二人とも苦笑いだった…


もしかして私常識知らず的な?!


この歳で恥ずかしい…(泣)

明日から気をつければいいんじゃないかな(汗)


今日お父さん帰ってきたら言われるだろうし…(笑)

その後も、色々と話すと紗絵ちゃんは、やっぱり芸能界の生活が長かったため、感覚が人とズレていそうだったので、一応、私の知っている範囲で説明はした…


芸能界にいた頃は完璧だと思っていた紗絵ちゃんは普通の仕事はポンコツなんだなと思った…

※成瀬 紬(藤堂 紬)23歳


大手飲料メーカーCMイメージガール

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登場人物紹介

成瀬 紬(なるせ つむぎ)。

物語の主人公。紗絵の姪。内気で気弱。

成瀬 紗絵(なるせ さえ)。紬の叔母。

アーティスト、マルチタレント。

T.Kレコード所属RISE-1のメインボーカル。

山本 登(やまもと のぼる)。山本道場師範。修也の父親。絵里や紗絵の恩師。

山本 千鶴(やまもと ちづる)。修也の母親。

山本 修也(やまもと しゅうや)。のちに紬の幼馴染となる人物。初恋の人は茅ヶ崎 恵美。

沢田 水子(さわだ みずこ)。T.Kレコード会社マネージャー。紗絵の所属するグループRISE-1の担当マネージャー。

茅ヶ崎 恵美(ちがさき めぐみ)。

アーティスト、マルチタレント。紗絵と同じRISE-1のメンバー。紗絵とは親友でもありライバル。

佐々木 虎男(ささき とらお)。ギャング組織での一員。のちに紗絵の舎弟的存在となる。

藤堂 英玲奈(ふじどう えれな)。

美少女コンテストで紗絵が負けた相手。

美少女コンテストグランプリ受賞者。

紗絵より年齢は1つ上。

藤堂グループの令嬢。高飛車で性格は悪い。

安西 楓(あんざい かえで)。紬と修也と同年代で二人が高校生の頃に登場する人物。

紬の恋敵。

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