第193話 NNN(トリプルエヌ)リハーサル

文字数 2,340文字

テレビで歌番組に出演した際に千春ちゃんはMCの人に横浜スタジアムでのライブ「NNN(トリプルエヌ)」のことを聞かれて、「成瀬 紗絵、成瀬 紬に続く成瀬 千春が行うライブだからです。紗絵さん紬さんに許可はもらってます。」と言っていた。


そのテレビ番組を見て絵奈と紗羅が「おばあちゃんとママと名前一緒だね」って言われた…


(同じだねというか本人なんだけどね…)


「そうだね〜ばあちゃんとママと同じ名前だね〜」なんて言って話を流す。


当日サプライズのつもりでいるみたいで、私達がゲストとして現れることは公表されていない。


ライブの日が近づき、集団ではなく、私と紗絵ちゃんは二人でレッスンを受けることも増えた。デモテープも渡され、ライブでの限定ユニットNNN(トリプルエヌ)の曲も覚える。


作詞は成瀬 千春。曲名は「受け継がれる光」。


私と紗絵ちゃんは二人で歌い合わせや振り付けを覚える時間はある。


千春ちゃんは多忙のため、私達と合わせの練習時間を取ることがスケジュール的に難しいらしく、合わせられるのはライブ前日のリハーサルの時だけみたい。

迎えたライブ前日のリハーサルの日。


子供達は今日は土曜日で学校が休みのため、家にいるが、師範と千鶴さんが面倒を今日は泊まりで、見てくれるとのこと。


私は、お友達と同窓会という設定とのことで、帰りは今日は藤堂のばあちゃんのとこに泊まると子供達には説明してあるらしい。


リハーサルが終われば私は都内のお父さんと紗絵ちゃんの住むマンションに今日は泊まる。


子供達とは明日千鶴さんが連れてきた横浜スタジアムで合流することになっている。


紗絵ちゃんも同じ。



久しぶりに横浜スタジアムに入る私と紗絵ちゃん。

実は私もかつては横浜スタジアムでライブを行ったことがある。


私よりも、RISE-1の頃この場所に立った紗絵ちゃんの方が思い出に浸っていそうな表情をしていた。

ここはお母さんがRISE-1の頃にライブしたよね。


懐かしいね。お互いに歳を取ったね(笑)


今日のお母さん、若いね。私の方が老けて見られそうで嫌なんだけど(汗)

ちょっと、昔を思い出してた。あの頃、周りにはメンバーのみんながいて、まだ若かったから、楽しかったなぁ♪


でも、明日は紬も千春ちゃんもいる。


そう?若作りも大変なんだよ(笑)


私みたいな40過ぎてるおばちゃん、今の若者に受け入れてもらえないかもしれないけど、頑張るよ(笑)

(いつも自信に満ち溢れていた紗絵ちゃんが弱気になるなんて珍しい…本人も時代の流れを実感しているのだろうか…)
大丈夫だよ。確かに歳は取ったよ。このライブの主役は成瀬 千春かもしれない。


でも、やるからには、見劣りしないように頑張ろう。成瀬 紗絵にはそれが出来る。


たった1曲かもしれないけど、NNN(トリプルエヌ)の時だけは主役の座奪ってやるくらいでやろうよ。

まさか、紬に励まされるなんて思わなかったよ(笑)


ホントに成長したね…

成長も何も私だって30代だからね(汗)千春ちゃんみたく現役でも20代でもないんだからさ。
二人で会話しながらスタジアムでのステージに向かうと、大勢のスタッフさんに囲まれていた千春ちゃんがこちらに気づき駆け寄ってきた。
久しぶりです!!お二方、よろしくお願いします♪


私のワガママに付き合ってくれてありがとうございます♪

千春ちゃんも28歳だけど、少女のような笑顔で現れた彼女にはまだ若々しさが溢れていた…
こちらこそ、孫の為に無理言って聞いてもらってありがとね♪


よろしくお願いします♪

私も、こちらこそありがとう♪元気そうだね♪


よろしくお願いします♪

そして、私達はNNN(トリプルエヌ)のリハーサルに入る。


立ち位置や、合わせて歌っていながら振り付けを一緒にこなす。


千春ちゃんは現役だけあって、今日初めて紗絵ちゃんと私と3人で合わせた日なのに、完璧だった。


そして1つだけ気づいたことがある…


成瀬 千春も成瀬 紗絵も成瀬 紬の私も3人共リハーサルだけど、始まれば自分が一番目立ちたい、自分が主役だという強い気持ちが全面に出ていた…


息はあっているし、何も問題はないと思う。


だけど、お互いに闘争心が凄い…なんとなくわかる…


そしてそれは何も言わなくてもお互いにわかっているはずだ…

私と紗絵ちゃんはリハーサルの最中にライブの演出家さんに、千春ちゃんより一歩下がってほしいと言われた。


ライブの演出家さんが主役はあくまでも成瀬 千春だと言いたいのはわかる…


演出家さんに対して千春ちゃんが「それはいいです。どんどん出てきてもらったほうがいいです」って言った…


千春ちゃんに言われた演出家さんはそれを認め、私達はリハーサルなのに本番さながらに体力を消耗した…


そして、珍しく弱気なことを言っていた紗絵ちゃんが、ステージに立てばすっかり当時の自信に満ち溢れ輝きを放っていた成瀬 紗絵になっていた…

今の女王、成瀬 千春と元女王成瀬 紗絵を隣に見て負けたくないと思ってしまった私がいる中で、多分一番私が冷静なはず…二人は少し熱くなっている気がする…


3人の「私が」という意地の張り合いが当日いい方向に進むと信じて…演出家さんや周りのスタッフさんが困惑する中、NNN(トリプルエヌ)の「受け継がれる光」のリハーサルは終わった。


私は千春ちゃんと昔組んだユニットCharlotteのリハーサルも終えると待っていた紗絵ちゃんとともに帰宅した。


明日はいよいよ本番だ…

※成瀬 千春(冬月 千春)28歳


自身の横浜スタジアムライブ「NNN(トリプルエヌ)」リハーサル時

※藤堂 紗絵(成瀬 紗絵)44歳


NNN(トリプルエヌ)披露曲「受け継がれる光」リハーサル時

※山本 紬(成瀬 紬)33歳


NNN(トリプルエヌ)披露曲「受け継がれる光」リハーサル時

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

成瀬 紬(なるせ つむぎ)。

物語の主人公。紗絵の姪。内気で気弱。

成瀬 紗絵(なるせ さえ)。紬の叔母。

アーティスト、マルチタレント。

T.Kレコード所属RISE-1のメインボーカル。

山本 登(やまもと のぼる)。山本道場師範。修也の父親。絵里や紗絵の恩師。

山本 千鶴(やまもと ちづる)。修也の母親。

山本 修也(やまもと しゅうや)。のちに紬の幼馴染となる人物。初恋の人は茅ヶ崎 恵美。

沢田 水子(さわだ みずこ)。T.Kレコード会社マネージャー。紗絵の所属するグループRISE-1の担当マネージャー。

茅ヶ崎 恵美(ちがさき めぐみ)。

アーティスト、マルチタレント。紗絵と同じRISE-1のメンバー。紗絵とは親友でもありライバル。

佐々木 虎男(ささき とらお)。ギャング組織での一員。のちに紗絵の舎弟的存在となる。

藤堂 英玲奈(ふじどう えれな)。

美少女コンテストで紗絵が負けた相手。

美少女コンテストグランプリ受賞者。

紗絵より年齢は1つ上。

藤堂グループの令嬢。高飛車で性格は悪い。

安西 楓(あんざい かえで)。紬と修也と同年代で二人が高校生の頃に登場する人物。

紬の恋敵。

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色