第132話 時代がどちらを選ぶのか?

文字数 2,046文字

その週の日曜日に楓は修也と手を繋ぎ、編集者に乗り込んでくれたみたい…


楓はあれは私なのでもうやめてくださいと言ったらしい。


週刊誌の人は最初二人を返そうとしたらしいが、楓の服装を見て間違いないとなり、


見事に誤報だったと後日週刊誌側が謝罪を行っていた…

私は自宅謹慎がとけ、3rdシングルに向けて動き出していた。


なるべく修也とは外では会わずに、どちらかの家の部屋でしかデートと言えるのかわからないけど、そんな場所でしか会うことは出来なかった。


そして、楓が助けてくれて以来。私はたまに楓と休日この家でだけど、一緒に話をしたり、ちょっとした出前をとって一緒に食べたり飲んだり、そんなことしかできないけど、話す機会が増えていた。

次はバレないようにしなよ。やっと謹慎とけて活動できるようになったんでしょ。


まぁ誤報ってことになってくれたから、よかったじゃん。


借りた服クリーニングしてあるから。

ありがとう。楓のおかげだよ、クリーニングなんてしなくてよかったのに(汗)
一応ね。


紬に聞きたいことあるんだけどいい?


成瀬 紗絵がもし復帰したら、成瀬 紬はどうするの?

お父さんは仕事でいなくて、紗絵ちゃんはリハビリでいない。


ここにいるのは私と楓だけ…

紗絵ちゃんは奇跡を掴むよきっと。何かに掴まって立てるようになったよ。


一生車椅子かもしれないって言われたのに、もうすぐ、自分の足できっと何にも捕まらないで歩けるようにもなると思う。


紗絵ちゃんが復帰したら、楓にも最近相談したことあるよね。私は何も決めてない…


もしかしたら、事務所側が、成瀬 紗絵をもう一度欲しがって、私はお役御免になるのかもしれないし…

そんなんでいいの?成瀬 紗絵の後釜なだけじゃなくて、歌が好きだから歌手になったんだよね?


成瀬 紗絵が復帰したらお役御免なんて、闘わないの?

(え?私が紗絵ちゃんとたたかうって?)
私と紗絵ちゃんじゃ、そんな私じゃ足元にも及ばないよ?
私は所詮美少女コンテストで、その先へいかなかった人間だからわからないけど、紬は自分で作詞した曲で、首位だって取ったよね?


悪い意味で敵対してほしいんじゃなくて、良い意味で、勝負してみたら悔いは残らないんじゃない?


成瀬 紗絵が復帰したらお役御免なんて応援してくれた人達に失礼だよ。

私の曲が売れたのは事務所が宣伝に力を入れてくれたからとか、アニメの主題歌とかにもしてもらえたからとかの影響が大きいと思うよ?

私はそんなふうには思わないけどな。


成瀬 紗絵が復帰してもブランクがある。


かつてはトップアーティストだったかもしれない。


一時代を築いた人かもしれない。でも、辞めるつもりなら、勝負してみたら?


時代がどっちを選ぶのか、私は面白いと思うよ?

楓にしか言わないけど、私は歌が好きだよ。


でも、今回スキャンダルになったこと、楓にも修也にも迷惑かけたから…きっと他の人にもたくさん迷惑かけてる。


紗絵ちゃんが前に言ってたんだ。自分が成り上がるために当時の彼氏を捨てたって…


私はこのままじゃ、歌も修也も捨てれず中途半端になっていくと自分で思うんだ…


応援してくれた人達には申し訳ないけど、プライベートのない世界で成り上がるよりも、普通の人として私は生きていきたいと思ってる方が気持ち強い…


自分でも正直何が正しくてどうしたらいいかわからない…

苦しむことはないと思うよ。


紬の人生なんだからさ、最初は成瀬 紗絵に憧れて自分も歌手になりたいと思った、でもプライベートが欲しくなった。


自分を応援してくれた人達に申し訳ないから無理やり歌い続けますとか、そんなのはいらないと思う。


でもさ、続けるならとことんやればいいよ。私とか修也は別に迷惑に感じてないし(笑)


辞めるなら、勝負してみてほしい。


私も修也も成瀬 紗絵じゃなくて、成瀬 紬を推すと思うよ?(笑)

ありがとう楓…


楓は修也が私を推していいの?(笑)

いいよ(笑)もう、踏ん切りついて、特に未練もなく、スッキリした気持ちで今入るからさ。


もしね、辞める方を選択するならだけどね、


紬が成瀬 紗絵を越えて惜しまれながら引退するほうが、私は見る目間違ってなかったって思えるじゃん?(笑)


最初の頃なんて、紬はネット民に成瀬 紗絵の劣化版とか言われてたんだからさ(笑)


まぁ事務所との契約とか何かあるとか、そういうのは私にはわからない世界だから、それ絶対無理でしょみたいなこと言ってたらごめんだけどさ。

(楓とは色々あったけど、いつからか私を応援してくれている人の1人なのは間違いないと思う…)
闘ってみようかな。きっともうすぐだよね…
私が小さな頃見ていた、今の私ぐらいの年齢の紗絵ちゃん…RISE-1として歌手デビューを果たして、どんどん上に登っていった。


ソロになってからも紗絵ちゃんはずっとトップアーティストだった。


私がまだ争うにはとても届かないような位置にいる人…


ずっと憧れていた人…


でも、私だって今、同じアーティスト。


紗絵ちゃんがもし復帰したら、私は全力で成瀬 紗絵越えに挑戦することを決めた…

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登場人物紹介

成瀬 紬(なるせ つむぎ)。

物語の主人公。紗絵の姪。内気で気弱。

成瀬 紗絵(なるせ さえ)。紬の叔母。

アーティスト、マルチタレント。

T.Kレコード所属RISE-1のメインボーカル。

山本 登(やまもと のぼる)。山本道場師範。修也の父親。絵里や紗絵の恩師。

山本 千鶴(やまもと ちづる)。修也の母親。

山本 修也(やまもと しゅうや)。のちに紬の幼馴染となる人物。初恋の人は茅ヶ崎 恵美。

沢田 水子(さわだ みずこ)。T.Kレコード会社マネージャー。紗絵の所属するグループRISE-1の担当マネージャー。

茅ヶ崎 恵美(ちがさき めぐみ)。

アーティスト、マルチタレント。紗絵と同じRISE-1のメンバー。紗絵とは親友でもありライバル。

佐々木 虎男(ささき とらお)。ギャング組織での一員。のちに紗絵の舎弟的存在となる。

藤堂 英玲奈(ふじどう えれな)。

美少女コンテストで紗絵が負けた相手。

美少女コンテストグランプリ受賞者。

紗絵より年齢は1つ上。

藤堂グループの令嬢。高飛車で性格は悪い。

安西 楓(あんざい かえで)。紬と修也と同年代で二人が高校生の頃に登場する人物。

紬の恋敵。

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