第89話 さよならRISE-1

文字数 2,171文字

6月中旬いよいよ、恵美ちゃんの卒業となるスタジアムツアーが始まった。


このスタジアムツアーが終われば、恵美ちゃんは卒業、そしてRISE-1は恵美ちゃんを送り出した後すぐに解散となる。


やっと名実ともに日本一の歌手グループとなったRISE-1の突然の解散は私以外のファンや音楽業界にとっても惜しまれることになるが、1番の痛手を負うのはT.Kレコード事務所だろう。


RISE-1はT.Kレコード事務所の1番の稼ぎ頭だったのだから…



RISE-1FINALのスタジアムツアー


静岡のふもとっぱら(約10万人)静岡で2日間


ヤンマースタジアム(約5万人)大阪で2日間 


豊田スタジアム(約4万4千)愛知で2日間


味の素スタジアム(約5万人)東京で2日間


キューアンドエーススタジアム(約4万9千)宮城で2日間


最後が日産スタジアム(約7万2千)神奈川で2日間


という総観客動員数約73万人という大規模なスタジアムツアーとなっている。


梅雨時にも被っている地域があるにも関わらずチケットは完売し、取れない状況となっていたが、私達は神奈川で行われる日産スタジアムの最終日は紗絵ちゃんからの招待で行けることになっている。


最終日の神奈川は卒業する恵美ちゃんと紗絵ちゃん二人の出身の県、その他のスタジアムも各メンバーの出身地域の方のスタジアムで設定されているとのこと。



スタジアムライブツアーが始まり、いよいよ最終日当日…



中島君、美咲ちゃん、徹君、静香、山本家と私の8人で日産スタジアムに電車で向かった。


会場は人であふれ横浜スタジアムのときよりも日産スタジアムは規模も大きく歓声が凄かった。



今日の日産スタジアムが終われば恵美ちゃんは卒業。数日後にはRISE-1は解散となる…


私がずっと応援してきた、RISE-1は間もなく終わりを迎える…


最終日6人で最後の公演、RISE-1は結成7年紗絵ちゃんと恵美ちゃんは共にアカデミーの頃から歩んだ15年は間もなく終わりを迎える最後の曲となったとき…


メンバーが皆泣き出した…


最後の曲はデビュー曲Memoriesだった…



泣きながら、あまり声が出なくても、RISE-1のメンバーは最後まで曲を歌い終えると、恵美ちゃんと紗絵ちゃんは抱き合って泣いていた…


この二人がどういう道を歩んで、どれだけの苦労をしてここまでたどり着いたのか、昔のことを少ししか知らない私にはわからない…


でも、いろんなことを乗り越えてきて今があるんだろうと思うと、私も涙が止まらなかった…



ちょっと前に紗絵ちゃんが、どんなグループでも遅かれ早かれいつかは終わるときが来るんだよ、永遠はないからさって言っていた…


たくさん日の目を見ないで解散していくグループや途中で挫折していく人達を見てきたから、自分達は夢を叶えて解散出来るんだから幸せ者だよと…


今までは6人だったけど、これからはそれぞれの道で、自分だけの力で頑張らなきゃないわけだから、ここからが本当の勝負なんだよって言っていた…


紗絵ちゃんは凄いと思う…私だったらきっと、落ち込んでしばらくの間、何も手につかなくなりそう…



会場内に鳴り響くアンコールの声。


私も精一杯泣きながら声を出して叫んだ。

紗絵ちゃんと恵美ちゃんがこっちに手を振ってくれた気がする…私に向かってとは限らないけど、二人のRISE-1の最後の姿をしっかりと目に焼き付けておきたくて、必死に涙を拭って応援した…
アンコールで歌われた曲は映画ガンダムPIECEの主題歌となった「never give up」


次にRISE-1最後のシングル曲となる卒業する恵美ちゃんがセンターを務める「希望〜またいつの日にか〜」で締めくくった。

曲が終わるとサプライズで、電光掲示板に「圭吾 恵美 結婚おめでとう!!」と表示された。


そして二人以外のメンバー4人が自費で会場にいる7万人にブリザードフラワーを入場の際配っており、スタッフの人に合図があったら、ステージに投げてくださいと言われていた。


スタッフの合図があってスタジアムに集まった多くの人の声が一体となっておめでとうと言って花が舞いながらステージに向かって投げられた。

南野さんと恵美ちゃんはサプライズの為この事は知らされていないらしく、凄くおどろいていたけど、喜んでいた。


ステージ周辺に沢山落ちたブリザードフラワーを紗絵ちゃんは拾いまくって、おめでとうって言いながら、南野さんと恵美ちゃんに投げつけまくっていたので、恵美ちゃんは少し怒っていた。


人前ではそんな姿を紗絵ちゃんは見せないので、スタジアムに来ていた人達はそんな子供みたいな紗絵ちゃんの一面を見て驚いていた。


私は恵美ちゃんにちょっかいを出す紗絵ちゃんを日頃から見ていたので、RISE-1のメンバーとしてだけじゃなく、きっと紗絵ちゃんは親友として恵美ちゃんを送り出しているんだろうと思った。


メンバーはみんな紗絵ちゃんに続いて真似し出して拾った花を二人に投げつけていた…


南野さんは苦笑いで、恵美ちゃんは最初少し怒ってたけど、最後は呆れていた…

この日をもって恵美ちゃんはRISE-1を卒業…


数日後、RISE-1は解散した…

※RISE-1 16thシングル 希望〜またいつの日にか〜


オリコン初登場第1位


解散前最後のシングル

※RISE-1 スタジアムツアー


RISE-1FINAL


総観客数約73万人

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登場人物紹介

成瀬 紬(なるせ つむぎ)。

物語の主人公。紗絵の姪。内気で気弱。

成瀬 紗絵(なるせ さえ)。紬の叔母。

アーティスト、マルチタレント。

T.Kレコード所属RISE-1のメインボーカル。

山本 登(やまもと のぼる)。山本道場師範。修也の父親。絵里や紗絵の恩師。

山本 千鶴(やまもと ちづる)。修也の母親。

山本 修也(やまもと しゅうや)。のちに紬の幼馴染となる人物。初恋の人は茅ヶ崎 恵美。

沢田 水子(さわだ みずこ)。T.Kレコード会社マネージャー。紗絵の所属するグループRISE-1の担当マネージャー。

茅ヶ崎 恵美(ちがさき めぐみ)。

アーティスト、マルチタレント。紗絵と同じRISE-1のメンバー。紗絵とは親友でもありライバル。

佐々木 虎男(ささき とらお)。ギャング組織での一員。のちに紗絵の舎弟的存在となる。

藤堂 英玲奈(ふじどう えれな)。

美少女コンテストで紗絵が負けた相手。

美少女コンテストグランプリ受賞者。

紗絵より年齢は1つ上。

藤堂グループの令嬢。高飛車で性格は悪い。

安西 楓(あんざい かえで)。紬と修也と同年代で二人が高校生の頃に登場する人物。

紬の恋敵。

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