第148話 一緒に叶えよう!!

文字数 2,610文字

千春ちゃんの家を出て、車に戻ると運転する沢田さんが言った。
この場だから言いますけど、結構人を見下した感じのご両親でしたね(汗)


紬のお父様が藤堂グループのトップで良かったですね。すっかり大人しくなりましたね(笑)


千春ちゃんも、もしかしてですけど、そんな感じですか?

そうですね。親のおかげで、私はいつも助けられて、ちょっと情けないですけどね…


千春ちゃんはそんな感じですね…


電話をよこした時は威勢がなくなってましたけど…


でも、きっと根はいい子だと思います。約束はしっかり守ろうとしてますし。


それに紗絵ちゃんのファンだと思います。


素質は充分にあると思います。


まだ中学1年生ですし、きっと成長すると思います。

何か約束したんですか?
はい。簡単に言うと私と千春ちゃんはファミレスで会いました。


私にスカウトされる前にも、他からもスカウトを当日されていたみたいです。


友達の子が今日だけで3回目とか行ってたので。


修也と一緒にいたんですけど、千春ちゃんをスカウトしたら、いいこと思いついたとか言われて、カラオケで対決して私が勝ったら、来てくれるってことでした。

それでカラオケで千春ちゃんの歌声も聞いたってことですか?紗絵のファンだとは何故ですか?


ちなみに紬が負けたら、なんだったんですか?

対決した曲が、千春ちゃんに選ばせたら、紗絵ちゃんの曲だったからです。


私が負けたら、修也と別れろってことでした。


おばさんって呼ばれてました(汗)

そうだったんですね。まぁ舐めてかかってやられたって感じですね。


紬が負けてたら、千春ちゃんはもっと調子に乗っていたでしょうね。


でも、ちゃんと連絡してきたんですね。


逃げないで、ちゃんと約束守ろうとして、偉いじゃないですか。

そうですね。だから、根はいい子だと思うんです。


きっと両親からのプレッシャーからのストレスとかで、少し性格がネジ曲がっただけかなと思ってます。

私達は休憩を取り、少しすると千春ちゃんが学校が終わる時間となり、沢田さんに運転してもらって聖心中等・高等学校へ向かいに行った。


千春ちゃんには事前に学校の前で待ってるねと伝えていたので、千春ちゃんが出てくるのを待つ。


千春ちゃんが出てくると、私と千春ちゃんは後部座席に乗った。


沢田さんと自己紹介し合う時の千春ちゃんはこの間とは別人のいい子だった。

そして車の移動中、千春ちゃんが私に聞いてきた。
家の親なんて言ってましたか?
(あれ?私にも敬語になってる?この間と違うな(笑))
なんか、千春ちゃんこの間と感じ違うね?


両親は文句言わなくなったよ。千春ちゃんの好きにしていいと思うけど、ご両親のためにも、勉強は頑張ったほうがいいとは思うよ?

そうですか。なら良かったです。説得したと言っても、半分反対状態だったので。


この間はこの間です。私はその、紬・さんに負けたので。

私の名前をおばさんじゃなく呼ぶのを千春ちゃんは少し気まずそうに言った。
勝ったとか負けたとか、そんなの気にしなくていいよ。


所詮、カラオケだから(笑)千春ちゃんは歌が好きなのかな?


今日は施設見学だからね。両親も許可してくれたし、遠慮なくレッスン受けれるからね。


これから通う所なんだから、しっかり見て行ってね。

私がそう伝えると、千春ちゃんは目を輝かせながら言った。
その、小さい頃から好きです。アイドルとかそういうのになってみたかったんですけど、親に勉強ばかりさせられて…やりたいこと歌を歌うって言ったら、両親にバカじゃないのって言われて…
(千春ちゃんがひねくれたのはやっぱりそういうことだったのか…)
大丈夫だよ!千春ちゃんの夢を一緒に叶えよう!


私じゃたよりないかもしれないけど、うちの部長は昔トップアイドルだったんだよ(笑)

やめてください。調べないでください(汗)


今と昔ではギャップが凄すぎてみんな笑うので(汗)

運転している沢田さんがそう言うと、千春ちゃんは笑った。


千春ちゃんの純粋な笑顔はあの日カラオケで歌っている時と同じだった。

千春ちゃんは私に聞いて、車内で沢田さんのアイドル時代をスマホで調べた。


でも、調べた後、沢田さんに色々とアイドル時代の話を聞いていた。


T.Kアカデミー東京校に着くと、沢田さんはそのままT.Kレコード事務所へ帰っていった。

沢田さんに私と千春ちゃんは頭を下げると、二人で施設の設備等を案内して見せる。


ふと、千春ちゃんが聞いてきた。

紬さん。成瀬 紗絵と紬さんは一般組出身なんですよね?


この場所で当時はレッスン受けてるんですか?

そうだね。紗絵ちゃん、いえ、成瀬 紗絵さんはここからまったく無名で自力で這い上がった人だから、凄いと思うよ。


私は一般組だけど、途中で一回アカデミーは卒業してるし、ただ成瀬 紗絵さんが不在の時に代わりに担がれただけだからさ…運が良かっただけ。


千春ちゃんはここで成瀬 紗絵さんみたく一生懸命頑張って、夢を叶えるんだよ。

私も同じ場所に来れたんですね。


変なこと聞いていいですか?

どうぞ。答えられる範囲でなら(笑)
成瀬 紬さんは成瀬 紗絵と競っている時、どんな気持ちでしたか?
そうですね。正直複雑でした。成瀬 紗絵さんは、成瀬 紬の小さな頃からの憧れでした。


憧れがいつしか目標になり、追っていた人と競うことになり、そして同じ場所に立ってしまったわけですから。

当時、成瀬 紬さんが勝ったわけですよね。


新旧対決は新の時代になるはずだったんじゃないんですか?


辞めたのは彼氏さんと居たいからですか?


それだけで辞めてしまうのですか?

それは、それもありました。でも、成瀬 紬が当時、頑張れたのは正直に言うと成瀬 紗絵さんに返ってきてほしかったから。


成瀬 紗絵さんが芸能界に復帰して、成瀬 紬は役目を終えました。


自分の中で最後に成瀬 紗絵さんと競えて、燃え尽きました。


勝っても負けても、燃え尽きたことに変わりはなかったと思います。


歌うのは今でも好きです。


これからは私の分も白石 千春に輝いてほしいと思います。


千春ちゃんは成瀬 紗絵が好きですか?だから選曲がFly highだったのかな?

はい!そうです。成瀬 紗絵も最初はRISE‐1っていう人気グループだったんですよね?
そうだよ。千春ちゃんがグループでデビューすることになるのか、ソロになるのかは、まだ私にも分からないけど、頑張ったら、きっと、成瀬 紗絵さんと同じ場所に行けるからね。
私達はこのあとも話をしながら、施設見学を続けた。
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登場人物紹介

成瀬 紬(なるせ つむぎ)。

物語の主人公。紗絵の姪。内気で気弱。

成瀬 紗絵(なるせ さえ)。紬の叔母。

アーティスト、マルチタレント。

T.Kレコード所属RISE-1のメインボーカル。

山本 登(やまもと のぼる)。山本道場師範。修也の父親。絵里や紗絵の恩師。

山本 千鶴(やまもと ちづる)。修也の母親。

山本 修也(やまもと しゅうや)。のちに紬の幼馴染となる人物。初恋の人は茅ヶ崎 恵美。

沢田 水子(さわだ みずこ)。T.Kレコード会社マネージャー。紗絵の所属するグループRISE-1の担当マネージャー。

茅ヶ崎 恵美(ちがさき めぐみ)。

アーティスト、マルチタレント。紗絵と同じRISE-1のメンバー。紗絵とは親友でもありライバル。

佐々木 虎男(ささき とらお)。ギャング組織での一員。のちに紗絵の舎弟的存在となる。

藤堂 英玲奈(ふじどう えれな)。

美少女コンテストで紗絵が負けた相手。

美少女コンテストグランプリ受賞者。

紗絵より年齢は1つ上。

藤堂グループの令嬢。高飛車で性格は悪い。

安西 楓(あんざい かえで)。紬と修也と同年代で二人が高校生の頃に登場する人物。

紬の恋敵。

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