第113話 始まった私の戦い

文字数 2,221文字

紗絵ちゃんのリハビリが始まって1ヶ月が過ぎた頃


私には1通の書面が届いた。


1次審査通過のお知らせ。


(よかった…)


まだ1次審査なのに英玲奈さんにも紗絵ちゃんにも書類審査で落ちたりしないでとか言われてたから、結構プレッシャーだった…


恵美ちゃんは1週間に1回は紗絵ちゃんの病室に子供を連れて様子を見に来てくれていた。


千鶴さんも心配して結構紗絵ちゃんに会いに来てくれる。


修也は安西さんと病院に来た時なのだろうか、紗絵ちゃんの病室に顔を出していくことがたまにある。


沢田さんも結構頻繁に面会に来てくれている。


みんなのおかげなのか、紗絵ちゃんは1ヶ月全く最初と変わらないけど、諦めずに毎日倒れては立つ練習をしている。


虎男さんは、紗絵ちゃんからたまに結構きつく当たられているけど、色々と力を尽くしてくれている。

紗絵ちゃんに書類審査通過したよって今日は報告しようと思った学校帰り、校門には安西さんと修也がいた…
久しぶり。病院に行くよね?一緒に行かない?


書類審査結果出たよね?私は通過したよ。

行くよ。出たよ。私も通過したよ。
二人とも何の話してんだ?
(安西さん、修也に美少女コンテストのこと何も言ってないんだ…)
そういえば修也に言ってなかったね。


今日病院に言ったら言おうと思ってたんだ。


私、美少女コンテスト応募したんだ、

(ん?今なんつった?くんつけなくなった?)
そうだったのか。楓のことだから、めんどくさがって、弟と俺の前でまとめて発表しようとしてたのか。


で、紬も出んの?

(楓って呼び捨てになってる?!二人の距離が縮まってる?!)
お〜い!聞いてんのか?(笑)
ちょっとボケっとしてしまっていた…
あ、うん、ごめん。聞いてた(笑)


そうだよ。

安西さんの方をチラッと見ると少し勝ち誇ったような表情をしている…


(安西さんは悪い人じゃないけど、嫌いとかじゃないけど、わざわざこんなの見せたくて待ち伏せしてたのかと思うと少しむかつく…)

じゃあ行こうか♪
3人で歩き出す…


私の前には修也と安西さんが歩き、私はその後ろをついていくかたち…



二人が学校の話とか、私の知らない話を楽しそうにしながら歩く…
(こんなんだったら別に一緒にいく必要なくない?)
なんて思っていると、修也に振り向いて話しかけられた。
さっきから、あんまり喋んないんだな。


この間の集まりもどうしてこなかったんだよ?


みんな会いたがってたぞ?

私は別々の高校に入ったみんなでの集まりにいかなかった…


理由はある。紗絵ちゃんのこともだし、自分のことも色々やらなきゃないことがあったっていうのもあるけど、一番の理由はその集まりに安西さんも来るって聞いたから…


だからいかなかったけど、表向きは都合が悪いってことにしておいただけ…

いや、別に…


集まりは都合悪かっただけ。

楓、みんなと初めて会ったのに仲良くなってたぞ。


紬はそういえば新しい学校で友達出来たか?

あ〜うん。まあね。普通に学生生活送ってるよ。
彼氏は出来たりしないの?(笑)
(知ってて聞くなよ…)
出来てないよ。安西さんこそ彼氏出来たりしないの?(笑)
安西さんは私に言い返されるとちょっとムッとしながら言い返してきた。
出来ないよ今は。今はね(笑)
今はってどういうことなんだよ?(笑)


楓は結構告白されてんのに断り続けてるだけだろ(笑) 


いつでも出来るんじゃね?

そうかな?


いづれ出来る予定なんだよね♪もう少しかなぁ?

安西さんが修也と話してたのに最後のとこだけ私を見て言った…
(何がもう少しかなぁだよ…むかつくんですけど!)
じゃあ、安西さんにはいい人紹介してあげるよ!(笑)
私なりの嫌がらせで言ったんだけど、
別に紹介してもらわなくていいよ。


別に男に飢えてないし(笑)

簡単に言い合いは負けた…
私のいる堀北学園から、病院は歩いてもいける距離、
病院が近くなった時、安西さんがふと思い出したのか振り返って私に言った。
そういえば今年から美少女コンテスト、新しい事あるんだけど知ってた?


もう見た?

え?新しいこと?何?
次の審査に進む人達は概ね1500名ほどなんだけど、それが次の審査に影響はしないらしいんだけど、書類審査の段階で選ばれた人のトップ10の名前がホームページに掲載されるの。


あくまで書類審査だけの結果で、10名以内に入ってない人は名前載ってないんだけどね、


私もまだ見てない。

二人とも載ってたらすげーじゃん!!


見てみようぜ!

修也がスマホで調べ始めた、


私も安西さんも息を飲んで待つ…


修也はスマホを見てちょっと発表しづらそうな表情をしている…

別に二人とも載ってない可能性もあるし、書類審査はどっちも通過してるんだから、遠慮なく言ってよ?
あ、ああ、わかった。じゃあ俺が今見たらトップ10に名前があった。
私と安西さんはまた静かに発表を待つ…
6位に安西 楓って楓の名前がある。


紬の名前はない…

マジで?!嬉しい♪
嬉しそうに喜びながら、安西さんは私を見た。
おめでとう。よかったね。
本当は悔しい…でも始まったばかりだし。


そう思って安西さんにはおめでとうって言った。

病院の入口につくと私は安西さんと修也とは違う場所からエレベーターを乗るため、お互いに反対に歩きだしたら、ちょっと小走りで安西さんが私のところに来て耳元で小声で言った。
私が一歩リードだね♪恋もコンテストも♪
そう言って修也の方に戻っていった…
(は?なんかむかつくんですけど…まだ敗北したわけじゃないから!)
ちょっとピリつきながら紗絵ちゃんの病室に向かった…
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登場人物紹介

成瀬 紬(なるせ つむぎ)。

物語の主人公。紗絵の姪。内気で気弱。

成瀬 紗絵(なるせ さえ)。紬の叔母。

アーティスト、マルチタレント。

T.Kレコード所属RISE-1のメインボーカル。

山本 登(やまもと のぼる)。山本道場師範。修也の父親。絵里や紗絵の恩師。

山本 千鶴(やまもと ちづる)。修也の母親。

山本 修也(やまもと しゅうや)。のちに紬の幼馴染となる人物。初恋の人は茅ヶ崎 恵美。

沢田 水子(さわだ みずこ)。T.Kレコード会社マネージャー。紗絵の所属するグループRISE-1の担当マネージャー。

茅ヶ崎 恵美(ちがさき めぐみ)。

アーティスト、マルチタレント。紗絵と同じRISE-1のメンバー。紗絵とは親友でもありライバル。

佐々木 虎男(ささき とらお)。ギャング組織での一員。のちに紗絵の舎弟的存在となる。

藤堂 英玲奈(ふじどう えれな)。

美少女コンテストで紗絵が負けた相手。

美少女コンテストグランプリ受賞者。

紗絵より年齢は1つ上。

藤堂グループの令嬢。高飛車で性格は悪い。

安西 楓(あんざい かえで)。紬と修也と同年代で二人が高校生の頃に登場する人物。

紬の恋敵。

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