『夢みる惑星』

文字数 860文字

『夢みる惑星』/佐藤史生

SF漫画界の個人的レジェンド。佐藤史生先生の傑作です。

私の中の「よくできたファンタジーはSFと区別がつかない」という確信はこのお話から生まれた気がします。


神官と宗教に束ねられた「谷」と、ある理由よりその谷に隔離された王国の第一王子、幻視者、大神官、そして竜を使役する人々……などなどが登場して世界観を説明する第一話は、今から思えば確かにSFなのですが、あまりにしっかりとした異世界すぎて(?)読み始めはてっきりどこか別の世界を舞台にしたファンタジーだと思っていました。


その思い込みのままこの異世界の宗教感や、美しい人々のドラマに心奪われて読み進めていくと、だんだん隠されたギミックに気が付いてくるのです。

そのチラ見せの仕方が本当に巧いのですよねー。ネタバレになってしまうので一つ一つは書きませんが、この「あれ、もしかして?」から「やっぱり!!」に至るアハ体験の連続はほんとうに気持ちがよく、「よくできているなあ」と感心しっぱなしなのです。


とまあ、お話の作り方を意識しちゃうのは私の悪い癖なのですけれど、そんなことを脇においてもこのストーリーメイクは素晴らしい。隅々まで考え抜かれている傑作なのです。しびれますよー。

もうちょっと評価高くてもいいとおもうのだけれどなー。


(おまけのひとこと)

なお、佐藤史生先生は去る2010年に他界なさっています。南無・・・。

先日、久しぶりに読みたくなり、写真の文庫3冊セットを古本屋でまとめ買いしてみたら、なんとサイン本だったのでした。(びっくり!)

どういう事情で手放されたのかはわかりませんけれど、写真のお名前部分はモザイクにしときましたです。


3冊でサインの日付が違っていたり、ひらがなと漢字のサインがあったり、そこにもなにかドラマがありそうな予感。


もしもこのサインに覚えのある方がいらっしゃったらどうかご連絡くださいませ。

もちろん連絡がなくっても、伏字の松〇〇子さんの代わりにこの本は大切にさせていただきます。

Original Post : 2019/05/28
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