『サピエンス全史』

文字数 1,252文字

『サピエンス全史』文明の構造と人類の幸福

/ユヴァル・ノア・ハラリ (著) / 柴田裕之 (翻訳)

いわゆる人類をさして普通はホモ・サピエンスといいますが、「ホモ属に属する動物」はサピエンス種だけでなく、アウストラロピテクス以降の旧人類、ネアンデルタール人(ホモ・ネアンデルターレンシス)や北京原人(ホモ・エレクトス・ペキネンシス)などなど、多くの種を含んでいます。

なので、本書はあくまで現生人類としての「サピエンス」に的をしぼり、その発生から現代(すこしだけ未来にも)にわたってのすべての歴史を一冊(上下巻なので2冊)で解説してしまおうという大書なのです。やたらと主語の大きなタイトルなのもうなづけます。


ネアンデルタール人など多種の旧人類からどうやって枝分かれし、そして、どうやって他種を滅ぼし(!)現生のサピエンス一種になってしまったか(例えばお猿にはチンパンジーからゴリラまでいろんな種がいますよね、なんで、人類種だけはホモ・サピエンス一種なんでしょう?)


それに一役かった認知革命とは何か。


脳という器官の発達で可能になった認知的能力(学習、記憶、意思疎通の能力)の増大によって現生人類は旧人類から一歩先んじます。

そして、ある大きな精神的な革命が起きます。一言でいってしまえば「虚構を信じる精神」の発現です。

その能力ゆえに他種を圧倒して、とうとう滅亡にいたらせるのですが。(その理由についても納得いく説明が本書に書かれています)


人類が人類たる根源は「虚構を信じる心!」すなわちオタク心! ってところがいいですねw


これは、認知革命以降の人類の精神と社会の進化の歴史の本と言い換えてもいいかも。そして、それによって影響を被った他の動物種(多くは絶滅!)や環境の変化についても解説されていて、人類種への知的好奇心を満足させてくれます。


いままで、生物学的な進化の末に現生人類(サピエンス)が発生しました。おしまい。なんていう生物の歴史の解説はたくさん読んできました。

そして、原始時代から中世・近代史までといった人類の歴史書も多くあります。ですが、その両者を結び付け、さらに精神的な変化も解説し、どうしてこうなったの? という理由までかみ砕いて説明してくれている本は初めて読みました。


まさに、『サピエンス全史』なのだなあと読んでいてふむふむすごーいと感心しつつ、この先どうなるんだろう? と人類の物語としても読めてくる不思議な本です。現生人類すべてにお勧めの良著です☆

(おまけのひとこと)

個人的には上に書いた「認知革命」=「オタク心の発現」についてと、下巻に出てきた「資本主義」の解説が素晴らしく良かったですねー。いままで漠然としかわかっていなかった資本主義という価値体系がすとんと納得できました。ありがたやです♪


あ、オタク心については私の勝手な解釈です。そういう意味のことは書かれていますが、本のなかにそうはっきりとは出てきませんのでそこのところよろしくですw


Original Post : 2019/08/23
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