『天冥の標 II』 救世群

文字数 1,040文字

『天冥の標 II』 救世群 / 小川一水

I のメニー・メニー・シープから続けて読んだ読者は、「あれれ?」と首をかしげることになります。

「たしか、『天冥の標』ってはるか未来(二十九世紀)のお話じゃなかったっけ?」と。

そう、すくなくとも「I」ではたしかにそうだったんですが、第二巻でいきなり時代は現代へ、それも日本が舞台になります。(最初のうちは南洋の「天国にいちばん近い島」が舞台。このあたりで時代設定もわかりますね〜w)


とはいっても、そこはそれ、簡単な話ではありません。南国のリゾートの眩しい太陽のもと、美しい砂浜には変死した人々の姿が累々と……。

高級リゾートで、人類がまだ知らない、新種の恐ろしい伝染病がアウトブレイク。

異常なほど高い感染率と死亡率に人々は戦慄します。

患者の額に鬱血による特徴的な斑紋が現れるため、後に冥王斑と名付けられるこの伝染病と戦う日本人医師が今回の主人公。彼のよれよれの白衣と、冥王斑の恐るべき病魔に読者はぼんやりと「I メニー・メニー・シープ」とのつながりを思い出します。

が、そんなことが脇に追いやられるほどとにかく襲いくるアウトブレイクの危機。人類はいかに細いタイトロープの上のバランスで生きているのかという重い恐怖が読者を襲い、主人公の背中にはどっしりと人類の生存という重荷がおおいかぶさってくるのです。きっつー。


次々とテクニカルな医療用語が飛び交い、リアリティたっぷりに描かれる疾病危機がもう怖いのなんの。

その中で、やっぱり「天冥の標」だとわかるキーワードがだんだんと増えてきて、あ、これってもしかして? と、「I」でまったく不明だった謎の片鱗がいくつか見え隠れしてきます。その種明かしはまだまだ先ですが、この先、どうなっていくのだろうと期待と不安をいっぱいに高め、またさらなる謎と、この世界に傷跡を残して、またまた読者の予想を遥かに超える方向へお話は突き進むのです。


ああー、もうこれはとまりませんわ〜。


※あまりに情報が多いので、この二巻目から著者による登場人物とキーワード解説が巻末に出てきます。コレを見ながらいろいろ考えをふくらませるのも「天冥」の楽しみ方なのかもしれませんねー。


(おまけのひとこと)

まさかの連続。Iは元日に、IIは一月二日に読んじゃいました。(おかげで怖い初夢みちゃったぎゃー!)

さて、このペースのまま、一月三日にIIIを読もうかとしているけれど、はてさて体力もつかしら??w

Original Post:2019/01/02
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

神楽坂らせん

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色