『プランク・ダイブ』

文字数 1,213文字

『プランク・ダイブ』/グレッグ・イーガン

『プランク・ダイブ』


現代SF最高の作家と誉の高いご存じグレッグ・イーガンのハードSF短編集!

表題作の『プランク・ダイブ』は、実際にブラックホールに飛び込んでプランクスケールの世界を観察し、時空の構造を解明しようというプロジェクトのお話。


現宇宙に帰還することなんてそもそも想定できない(けっして帰ってこれないことが確実な)ダイバーたちは、もちろんその運命を苦などとは思っておらず、自分たちしか知りえない宇宙の神秘に触れることをモチベーションとしてこの難プロジェクトに挑むわけなのです。(もっとも、クローン技術や意識の伝送が普通に行われている時代の話なので、ブラックホールへ飛び込むのは意識情報クローン体なのですが)

無謀かもしれないけれど、純粋な科学的探究心のために行動する彼らの前に、そのダイバーたちの勲詩(いさおし)を〈目撃〉して全宇宙知らせようという謎の吟遊詩人が表れます。

ブラックホールの圏外から見える情報は全てオープンに公開しているのだからそんなものは無意味だろうと言うダイバーたちに対し、どうせブラックホールに飛び込んだら情報すらもって出てこられないのだから、自分が見て感じた物語を〈創作〉して宇宙に知らしめるのだという詩人との文化対科学のギャップが、超ハードなハードSFなのに妙にナラティブで面白いところ。

もちろん、現時点で最新の科学に基づいた特異点描写のハードさは言うまでもなく素晴らしかったです。


そのほか、ファーストコンタクトSFの『ワンの絨毯』がこれまたすごくハードなのに奇想天外な内容で面白かったですね~。後に長編『ディアスポラ』にほぼそのまま組み入れられたお話とのことなので内容ご存じの方もいるかも?


また、個人的に一押しは『暗黒整数』ですね。

この宇宙の基礎をなす数学に証明不可能な矛盾〈不備〉があることを軸にして、別の数学体系に属する、この宇宙と重なり合うパラレルな別宇宙と、その数学的矛盾や未確定な定理を使ってコミュニケーションしてしまう。その上でサスペンス&パニックSFにもなっているところが秀逸すぎます。すごすぎ! 面白い!


という感じのどれもこれも「スゴイ」ハードSFが全部で7編収録されていて、読み応えばっちり!


この短編集は日本オリジナルなんだそうです。おすすめ!

(おまけのひとこと)ハードSFいいですよー。めちゃくちゃむつかしいけど、これがまた快感になっちゃう。難しすぎて読めない!って人も大丈夫! 私の愛読書「バーナード嬢曰く。」によると「わかんないところはどんどん読み飛ばしてOK!」だそうですからね!
Original Post:2019-04-08

(とうとうGoogle+が閉鎖されてしまい、オリジナルポストのリンクが入れられなくなってしまいました。。いままでのリンクも皆デッドリンクになっちゃってます。こまったなあ・・・(´・ω・`)ショボーン)

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