『センス・オブ・ワンダー』

文字数 1,387文字

『センス・オブ・ワンダー』/レイチェル・カーソン

毎年夏には、著者のレイチェル・カーソンはメイン州の海辺のちいさな別荘で過ごすことに決めています。まだ幼い甥のロジャーとともに。

レイチェルはこの小さな友人と、朝に晩に、嵐の日に晴れの日に、海辺の自然をそのまま素直に身体いっぱいに感じるのです。


彼女は言います。


「子どもたちの世界は、いつも生き生きとして新鮮で美しく、驚きと感激にみちあふれています。」と。そして、「残念なことに、私たちの多くは大人になる前に澄み切った洞察力や、美しいもの、畏敬すべきものへの直感力を鈍らせ、あるときは全く失ってしまいます。」


ですが、純粋な子供と共に自然の中に身を置くことで、大人も子供と同じ──ほどではないにしろ、近い──視点で愛すべき地球の本来の姿を感じることができるのです。


そしてその経験は子供たちの心も豊かにします。


「もしもわたしが、すべての子どもの成長を見守る善良な妖精に話しかける力を持っているとしたら、世界中の子どもに、生涯消えることのない(センス・オブ・ワンダー=神秘さや不思議さに目を見張る感性)を授けてほしいと頼むでしょう。」


ピュアな視点と感性とで自然を見つめなおした時、海辺の小さな砂粒から夜空に広がる星々の世界まで、ありとあらゆる自然界の「美」を素直に感じることができるはず。

そうした美しさにふれ、畏敬を覚えたときのセンス・オブ・ワンダーを大切にすることこそ、人生を豊かにし、自然や生物の大切さを知ることができ、生涯にわたっての宝物を手に入れることだと彼女は語っています。


こんな経験を幼いころにできたらよいですよね~。

もちろん彼女のように海辺の別荘があれば最高ですけど、そんなのもってないわーという人でも大丈夫(?)

自然も神も細部に宿っています。道端の雑草の小さな花びらや小川の流れや蝶の羽根を見るだけでも、大いなる自然への畏敬を感じられるはず。(ちょっとお金を出して虫メガネを買うとよりパワーアップ)そこから興味が広がって、虫の名前や生態系等を調べるようになることで、「ただ草の名前を覚えている」だけではない、深い自然への理解と知恵を育むことにつながるのだそうです。


まるで絵本のような読みやすい文章と、綺麗な写真がちりばめてあって、読んでいるだけで美しい自然の中にいる気がしてきます。

地球に住む人類すべてにおすすめですけど、できれば子育て中のママさんパパさんに是非是非読んでいただきたい素敵な本です。

(おまけのひとこと)

著者のレイチェル・カーソンは、まだ誰もが平気で危険な合成殺虫剤をまきまくっていた時代に、人体や生態系に与える合成殺虫剤の害を初めて説いた『沈黙の春』という本を執筆しました。環境本のバイブルと言われ、一躍ベストセラー作家となりましたが、彼女自身が自分の事を「病気のカタログ」というほどでもう残された時間が短いことを悟り、本書の元となるエッセイを書き始めたのだそうです(「あなたの子供に不思議さへの目を開かせよう」)

残念ながら完成させられないまま彼女は世を去ってしまいましたが、残された友人たちにより翌年出版されたのがこの本なのだそうです。

とても未完とは思えない、綺麗にまとまった本です。ごく薄い本ですが、ぜひこれは本棚に加えておきたい、素敵な小さな宝物です。

Original Post:2019/06/20
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

神楽坂らせん

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色