『薄紅天女』

文字数 1,020文字

『薄紅天女』/萩原規子

あの『勾玉シリーズ』三部作の最終章! 完結編! ということでめっちゃ読むのにも力が入ります!


でもご心配なく。ごく普通のお話としてちゃんと読みやすくて面白いのです。

勾玉シリーズは『空色勾玉』『白鳥異伝』と、本作『薄紅天女』の三部作ということですが、どれから先に読んでも大丈夫。それぞれ同じ世界のお話で時代順になってはいますけれど、直接のつながりは乏しく、(すめらぎ)と神の残した勾玉が鍵になっているほかは、大きな同一テーマが語られているぐらいで、それぞれ別のお話にちゃんとなっています。実際、文庫版にオマケで入っている対談の相手、児童文学作家の佐藤多佳子さんは娘さんに最初にこの『薄紅天女』を読む事を薦めたのだとか。(おもしろいとあっというまに読み終わっちゃって、次に『空色勾玉』にすすんだそうです)


お話は、前作までの神話の時代からさらに近代に近づいて(?)桓武天皇(かんむてんのう)の時代、『更級日記(さらしなにっき)』にでてくる「たけしば」というお話がモチーフになっているそうです。

武蔵の地(今の関東地方)や蝦夷(えぞ)のあたりまで出てくる前半の男の子(達)のお話と、がらっと舞台が変わって長岡京やら伊勢がでてくる後半、女の子のお話、これが組み合わさって大きなストーリーになっています。

さきほど、『空色勾玉』や『白鳥異伝』は読んでいなくてもOKと書きましたが、この話が収束に向かうあたりではこの前作たちを読んでいるとまた違う面白さが味わえるというおまけつき。

神代時代よりちょっと最近(?)になっている分、歴史上の人物がけっこう登場して、それも物語にうまくはまって好奇心を刺激してくれます。(歴史はそんなに詳しくないのでいろいろ調べちゃいましたw)


大きすぎる力を得てしまったことで戸惑い、傷つけあう男たちと、それを受け入れ、癒す女性の力。善悪二元論に陥りがちな西洋のファンタジーとは違い、ただ戦いで決着をつけるわけではない清濁併せ呑む和風のカタルシス。

勾玉シリーズ不変の構図ですが、今回は男性の中に女性性がはいりこむ重層的な設定があり、多くのキャラクターの思惑や男同士の友情もありで個人的な見どころはばっちりw おんもしろかったー♪


『勾玉』はこれで最後とのことですけれど、できれば萩原規子の歴史ものがまた読みたいなーと思ってしまう、壮大な日本の歴史ファンタジーでした♪

Original Post:2018/04/23
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