『スタートボタンを押してください』

文字数 1,552文字

『スタートボタンを押してください』

 /D・H・ウィルソン&J・J・アダムズ編

内外(主にアメリカ)の新進気鋭のSF作家たちによる「ゲーム」を主題にしたSFの傑作選です。日本からは『All You Need Is Kill』の桜坂洋さんが参加、それ以外は皆英米の作家さんたちです。注目は『火星の人』のアンディ・ウィアーさんと『紙の動物園』のケン・リュウさんでしょうか。

皆さん「ゲーム」という点以外は好き勝手に書いているので良い意味でバラバラなのですが、FPS(一人視点シューティング)やMMORPG(同時接続型RPG)ネタが多く、やっぱりアチラではこのあたりのゲームが人気なんだなーと言う感じでした。

そういえばテキストアドベンチャーネタもぽつぽつあって、それもおもしろかったです。

そういった古典的なゲームも英語圏ではほそぼそと人気なんでしょうね。


さて、個人的に一押しはアーネスト・クラインさんの序文(笑)ゲームは人間の本能に基づいた現代人の必須科目なんだそうです。


そして、素晴らしかったのが当初ノーチェックだったコリィ・ドクトロウさんの『アンダのゲーム』!

アンダというちょっと糖尿病ぎみの運動に向いていない体形(オブラート表現)の女子中学生が、憧れのクラン(ゲーム世界内のプレイヤーの集団、一族的なグループ)に加入し、才能を発揮させていくお話です。

ゲーム内の仮想通貨だけでなく現実のお金をやり取りするRMT(リアル・マネー・トレード)に絡んだ問題に踏み込みながら、少女自身もリアルに成長していくのがとてもよかったです。

ゲーム(?)SFの古典『エンダーのゲーム』のオマージュタイトルなだけでなく本歌取りにちゃんとなっていて素晴らしい出来でしたねー。


それと、やっぱり上手いのはラストを飾っているケン・リュウさん。テキスト・アドベンチャーをモチーフにゲームの中と外との出来事が不思議な調和を見せていいところにストンと落とす技はさすが。余韻が感じられる良いお話でした。


思えば、ゲームは(今はもう海外のほうが強いですけど・・・)日本がしばらく先頭をはしっていた分野で、いまの日本のSF作家さんたちもゲーム好きが多いはず。このあたりの作品も日本作家主導でアンソロジーとか組めるとおもしろいかもですねー。

どこかやってくれないかなー?

そいでもって私も参加させてくれたらうれしいなーヾ(´∀`)ノ ウキャキャッ♪

【収録作】(アマゾンさんより)

序文=アーネスト・クライン

「リスポーン」桜坂 洋

「救助よろ」デヴィッド・バー・カートリー

「1アップ」ホリー・ブラック

「NPC」チャールズ・ユウ

「猫の王権」チャーリー・ジェーン・アンダース

「神モード」ダニエル・H・ウィルソン

「リコイル!」ミッキー・ニールソン

「サバイバルホラー」ショーナン・マグワイア

「キャラクター選択」ヒュー・ハウイー

「ツウォリア」アンディ・ウィアー

「アンダのゲーム」コリイ・ドクトロウ

「時計仕掛けの兵隊」ケン・リュウ

解説=米光一成

(おまけのひとこと)

↑上の最後にちょっとかきましたけど、このあたり、きっと日本人作家のほうが得意なんじゃないかなーって気がすごくしています。

私ってのは半分冗談ですけど(半分か!w)いとうせいこうさんの『ノーライフキング』を筆頭に、ゲームをモチーフにしたお話って多いし、それぞれ名作な気がします。(みんな思い入れがあるわけですから、半端なのは出せないんでしょうねー)

このあたりの思い、どこかの編集さんにどどかないかなーw


※それと、長い間お世話になっていたGoogle+の『本が好き』コミュニティがこれにて終了となります。G+由来のポストはこれが最後になるはずです。なむなむG+世界(ー人ー)

Original Post:2019/04/02
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神楽坂らせん

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