『ハロー・ワールド』
文字数 1,393文字
藤井太洋さんはIT関係のリアリティにとても定評のある方なのです。
で、本作は今まで以上にめちゃくちゃリアル! 本当に起きてもおかしくないというか、まさに今起きてんじゃないこれ!? という出来事が綴られていて、「今」と地続き感ばっちりなのがこの本。
実際、お話の中のキーポイントになる日付が2019年4月6日(ついこのあいだ!)。その1年前から2~3年後ぐらいまでの出来事がまとめられています。まさにちょー「今」ですよね!
お話に出てくるガジェットやサービスもそのままそこらへんで使われているものばかり。なんていうか自宅の近所が舞台になってる聖地巡礼感に近いかんじで、「ああこれ知ってる!」とか「そうそうそう!」ってなるので、とっても現実感たっぷりでコーフンしましたですわ。
主人公の設定がごく普通のシステムエンジニアさんなところもよいですね。
C系の言語はちょっと苦手で、JavaScriptなら読み書きできて、できればPythonがいいなあとおもっている系。いろいろちょっとづつ出来るなんでも屋さんだけれど、どの分野でもスーパーエンジニアというわけではない。と言えば、わかる人にはわかる、ふつーのIT系によくいるタイプです。
(わからなくても問題ないです)
それでもって、そういう人にこれまた良くある(気がする)クレバーで頭が良く、普通の正義感を常識として持っている人。
このあたり、おそらく読者にそういうタイプが多いのを見越しているのか、実際著者がそういう人なのかな、強い親近感をかんじます。
主人公が強烈な「正義」に突き動かされているというわけではないけれど、臆病でもしっかりと芯のある「良識」にしたがって行動する姿はなかなか読んでいて気持ちが良いのです。
普通の人(エンジニア)が、普通の(正しい)ことをして、普通に成功して、普通に認められて社会正義まで実現していく姿が、めちゃくちゃリアルに描かれているので、いまつらい現場で戦っているプログラマさんやエンジニアさんたちにぜひぜひ読んでほしい。そんなお話です。
あ、ここまで書いていて気が付きましたが、もしかしてこれ、SE版「島耕作」なのかも?(あんなにえっちぃじゃないですけどもねw)
ああでも、「島某」ほどファンタジーではなく、とてもとてもリアルです。
私は紙の本で買っちゃったのですが、ぜひこれは電子書籍で、京王線に乗ってiPhoneで読みたくなる。そんな、非常に現実的な、今の世界についてのお話なのです。
スマホやSNSや、コンピュータに囲まれて現代を生きている皆におすすめ! です!
現実を演繹して先の先を見通すというか。それですごく先にいくのではなく、ちょうど手のとどく(?)範囲の未来について語ってくれるのでとても良いです。
タイトルの『ハロー・ワールド』はコンピュータ言語を学ぶとき、最初に教わる呪文のようなものです。これでコンピュータは世界に挨拶するのですね。まあこのあたりも本書のテーマになっています。そこらへんも上手いですねー。
あと、中を読んでから表紙を見ると、あることに気が付ける。そんなちょっとした仕掛けもあったりします。このあたりもお楽しみポイント♪