『死に山 世界一不気味な遭難事故《ディアトロフ峠事件》の真相』
文字数 1,031文字
/ドニー・アイカー
――ディアトロフ峠事件――
1959年2月2日の夜、ソ連領はウラル山脈北部で極寒のスノートレッキングをしていた大学生チームの男女9人全員が不気味で不可解な死を遂げた。
一行は摂氏マイナス30度の極寒の中、テントから1キロ以上はなれた場所でそれぞれこの世のものとは思えない凄惨な死にざまで発見される。
ほぼ全員が衣類をまともに着ておらず、靴も履いていない。三人は頭蓋骨骨折などの重傷、女性の一人は舌を喪失。さらに、遺体の着衣からは異常な濃度の放射線が検出されたという。
ただし彼らがお互いに争った形跡はなく、当時の調査では「未知の不可抗力によって死亡」とされた。
地元住民に「死に山」と名付けられたこの山の遭難事件は、その後50年にわたって未解決のまま、怪物の襲撃や雪崩、軍の実験や陰謀、宇宙人に襲われたなど、さまざまな憶測を呼んでいる……。
というめちゃくちゃ不思議で不可解な事件の謎に、事件から半世紀もたってからアメリカ人の著者が挑みます。
ほぼ関係者全員が鬼籍に入られてしまっている中、ぎりぎりまで一行と一緒に行動していたものの体調不良で引き返した10人目のメンバーとのコンタクトに成功した上、おそらくアメリカ人では初めて「死に山」まで直接足を運んでの調査までを行い、今までのさまざまな言説を覆して、ようやく納得できる結論に到達するまでのドキュメントです。
ここではネタバレになってしまうので結論は書きませんが、1959年当時に遭難した一行の行動と、遭難後困難を極めた捜索チームの尽力、そして、2012年からの著者の調査という3つの視点を行き来しながら結論にたどり着く構成は見事です。
しっかし、こんなことミステリー小説の中だけかと思っていたら、実際に起こるのですね……。現実は小説よりも奇妙なのです。
※なお、この本のおかげかはわかりませんが、2019年になってロシア検察が事件を再調査していることを明らかにしたそうです。その結論はこの本と同じなのかどうなのかはてさて??
(オマケのひとこと)
いったいどういうこと? とクエスチョンマークを頭に点滅させながら、氷点下の雪山を想像しつつ読み進めている感覚はほんとミステリー小説のようでした。でも、実際に被害者はいらっしゃったわけで。。雪山で亡くなられた9人の皆さんのご冥福をお祈りいたします。南無ー。