『日本SFこてん古典』
文字数 1,026文字
追悼、横田順彌さん。
(既報のとおり、横田順彌氏はさる2019年1月4日に心不全のため他界されました。謹んでご冥福をお祈り申し上げます)
と、いうわけで、私にとってヨコジュンこと横田順彌さんといえばこの本なのです。
かつて、氏がSFマガジンに連載していた日本SFの古典を紹介していたシリーズをまとめた本です。
明治や大正のころの、SFやSci-Fiなんて言葉がまだ存在しなかった時代の古き良き(かどうかはおいといて)冒険浪漫にあふれていた時代のSFっぽい科学空想小説を、これでもか、どーだまいったかと紹介し、現代の小難しいSFに凝り固まった読者のオツムをコテン古典にしてしまう、ある意味でマインドトリップ的な味わいのある恐ろしい本だったりします。
この本を読むと、SFと言えば押川春浪や海野十三。旧仮名遣いは当たり前、漢文に味わいを求め、海底軍艦は空を飛び、科学考証などより講談調。トンデモを愛し、弱きを助け強きをくじく、そんなSFフアンニワタシハナリタイ。なんて思うようになってしまう。かも、しれませんw
少なくとも私はどっぷりそんな世界を知ってしまって、だれからも見向きもされないふるいふるーーい古本を漁りに神保町をうろうろするようになってしまいました。基本的にかぶれやすい体質の方は要注意だったりします。
とはいえ、ヨコジュンさんのおかげで押川春浪の快男児っぷりを知ったり、炭素の化学的性質を豊臣秀吉の生涯になぞらえて解説する大珍奇小説『炭素太閤記』を知ったり、この本のパロディの『日本SFごでん誤伝』なんて珍書から、かの「と学会」を知ってしまったり、まあいろいろ珍妙な世界を知ることができました。
私の人生の数ppmかぐらいはヨコジュンさんのおかげ、なのかもしれません。
そんな彼の面影をしのびつつ、本棚のどこいっちゃったかわからない本を探すより、と、図書館からこの本を借りてきて、やっぱり面白いわ〜。とあらためて楽しんでいたりしつつ、氏のご冥福をなむなむと祈るのであります。
今回の表紙写真は図書館から借りてきた本からお借りしました。
しかもこれ、二巻です。司書さんにお願いしてなんとか探し出して保存庫から持ってきてもらいましたが、
一巻は家の近くの図書館にはもうなくなってしまったのだとか・・・。うーみゅ。こういう本こそ残しておいてほしいのですがね〜。なむなむ。