『女生徒』
文字数 959文字
太宰治29歳のときの作品。
東京のどこかに住むごく普通の本好きの女学生が、朝起きて夜寝るまでの一日をそのまんま切り取ってお話にした。ちょーリアルな、嘘偽りない少女の独白。という小説でした。
いやはや本当にリアル。これ書いたのアラサーのオッサン(失礼)なわけでしょう?
どんだけ太宰治タマシイ乙女やねん。と思いながらもそのリアルさに舌を巻きましたですよ。
もう憑依とかそんなレベルじゃなく、言語中枢からその髪、その肌にふれる身体感覚、五感のすべてまで含めてまるっと完全な一人の女子。あのくるくると興味が切り替わる脈絡の無さと言語感覚まで完璧女子。
男性が夢見ている清く正しく美しいだけじゃない、潔癖症なのに中身はちょっと汚らしいところも含めて完全再現しています。
なんでこんな文章書けるんだろう? このオッサン(失礼)おかしいんじゃないか(もっと失礼)って本気で思いましたw
(まあ、人間失格した上に玉川上水に飛び込んじゃった人なわけで、けっしてまともではなかったのかもしれませんが……)
あまりにすごいので、なんでここまでリアルなのかしらんとネットでつぶやいてみたら、「当時19歳の有明淑さんが日記を太宰治(当時29歳)に送って、太宰治がそれを元に編集に近い形で小説に仕上げたそうです。」と教えてもらいました。なんだ、元ネタあったのですね。(ひさみんさんありがとうございます)
それにしても、日記を見てここまで書けたのはやっぱり普通じゃない才能。なのかもしれません。
その後、この才能を開花(?)させてか憑依術を極めて代表作のひとつ「斜陽」までつながっていくような気がします。
この本の中には、表題作の他、やはり女性の独白形式の短編ばかり、計14篇納められています。
この『女生徒』以外は独白する主人公の年齢が上がっていて、女の汚いいやらしい部分も余さずというかやけに増えているのでちょっと読むのは苦しかったりしますが、そこらへんを描けるのも太宰治の凄さなんでしょうねえ。。