『元号通覧』

文字数 801文字

『元号通覧』/森鴎外

ようやく令和にも慣れてきた今日このごろ。みなさまいかがお過ごしでしょうか。

ワタクシ、理科年表や地図帳など、いわゆるデータブックってやつが結構好きなんですよねー。

で、この本は日本の『元号』のデータブック。その古典にして唯一にして決定版なのです。


日本最初の元号は、大化の改新の『大化』。そこから数えて245番目の『大正』まで、その改元の理由から改元日時、在位中の天皇、元号の勘申者、他の候補やその由来・理由・根拠となった書物や作品などなど、これらをすべての詳細をまるっとまとめて一覧できるようにしてあります。さらには天皇の諡(おくり名)についての考証『帝諡考』まで含まれているというすばらしさ。


こんな本を書かれたのは誰あろう、言わずと知れた明治の文豪にして陸軍省軍医総監であった森鴎外さんなのです。

晩年には宮内庁帝室博物館総長の上、宮内省図書頭なんてものまで兼任されていて、曰く、最後にして「最大著述」。その最後の日まで命がけで編纂していたのがこの本なのだそう。

森鴎外自身は肺結核のため大正11年に志半ばで死去。その後を託した漢学者の吉田増蔵がまとめ上げたのが本書の原題である『元号考』なのです。なお、この吉田増蔵さんこそは大正の次の元号『昭和』の発案者だというのだからこれまたスゴイ。


データブックですから、小説ではなく、物語など語られてはいませんが、西暦にして645年~1926年まで、およそ1300年にわたる日本の歴史がまるまる入っている貴重な本です。

まさに森鴎外の最大著述。話のタネにも小説のネタにもぜひご覧ください。

ぱぱっとページめくるだけでもけっこう面白いのです。

(おまけのひとこと)

そうそう、この講談社学術文庫の発行日は、「令和元年5月1日」なんですよね。令和の最初の日に初版第一刷発行というのもなかなか趣深いものを感じます。

Original Post:2019-09-02
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

神楽坂らせん

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色