『トランスヒューマン ガンマ線バースト童話集』

文字数 1,044文字

『トランスヒューマン ガンマ線バースト童話集』/三方 行成 

すごいw

めちゃくちゃ面白い!

ハードSFからギミックや用語を借りてきて、有名な童話を語り直す、読みやすくてハイテンション、そいでもって原作(?)童話の持つ寓話的な落とし所に落としてる、おっもしろい本でしたー。


トランスヒューマンとは、人間の肉体を超越し、人工知能との共生や意識をコンピュータへアップロードした、変質(超越)した人間のこと。無限に高速化して安価になっていくコンピュータのリソースを存分に使って、望むことは何でもできるし永遠に生きることも、際限なく増殖することもできる、ついに理想の形態にまで達した人類の姿です。

でも、そんな時代であっても王子と乞食のような貧富の差は歴然としてあり、魔法と見分けのつかない高度なテクノロジーと相まって、童話の舞台が形創られています。


そしてそして、スーパーテクノロジーで武装した皇族だろうが賎民だろうが全てを無慈悲に薙ぎ払う、神か悪魔の一撃、宇宙最強のガンマ線バーストというカタストロフによって、物語構造も出来上がっているわけです。


第六回ハヤカワSFコンテスト優秀賞に輝いたという本作。この構造を編み出した時、きっと著者さんは「勝った!」って思ったろうなあという感じ。全てがピッタリくる、現代の(未来の?)寓話が出来上がっています。


お話しとしては、読み始め早々にシンデレラのいじめられっぷりがえげつなさすぎて16万8千光年ぐらい引きましたが、そのあと登場する謎の超生命体カグヤ姫がかわいいのなんのw

ハードボイルド竹取の翁とのハードな親娘(?)の交流がちょーハートフルですばらしい!

一発でこの二人のファンになりましたねー☆

その後、全てを支配する女王様と白雪姫との壮絶な戦い、木星衛星での攻殻機動隊話(これは童話というより文字通り攻殻っぽい話でした)に、マイクロブラックホールdeおむすびころりんと来て、ラストを締めくくる未来のアリとキリギリスまでの全六話。


最初に書いたとおりめっちゃおもしろくて一気読みでした。

これは良いわ〜。こういうの大好き。

一風変わったハードSFっぽいヘンテコ話を読みたいと言うか楽しみたい方にちょーおすすめです。

(おまけのひとこと)ハヤカワSFコンテスト応募作品なので、本の最後に審査員のコメントが乗ってるんですけど、これって他の著者の作品の評も乗っている上に、批評になっていて欠点もずばずば書かれているので、このお話を情報なしで楽しみたい人には不要なんじゃないかなー。
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