『リヴァイアサン ークジラと蒸気機関 ー』

文字数 1,237文字

『リヴァイアサン ークジラと蒸気機関 ー』

 / スコット・ウエスターフェルド(著), 小林美幸(訳)

タイトルからしてとってもスチームパンク!

ちょっとクドめの表紙でどんなものかしらんと心配しながら読みはじめてみれば、これがけっこうおもしろい!

ぐいぐい読ませる冒険活劇でした。


時は1914年、オーストリア大公夫妻が暗殺されたことをきっかけに、にらみ合っていた二つの文明勢力の戦争がはじまります。


その文明とは、方やドイツを中心とした〈クランカー〉と呼ばれる蒸気機関やディーゼル駆動全盛の機械文明。もう片方は英国などの〈ダーウィニスト〉と呼ばれる遺伝子組み換え技術に長けたバイオテクノロジー文明。

バイオ側が絶滅したマンモスを遺伝子から復活させて戦闘用の巨大象を生み出せば、機械文明側は多脚砲台や二足歩行のロボットを作り、機械文明(ドイツ)がツェッペリン飛行船を空に浮かべれば、バイオな英国は遺伝子操作して巨大な肺に水素を充満させた空飛ぶクジラや気球クラゲで対抗します。


戦争がテクノロジーを発展させるという言葉どおり、両陣営のテクノロジーの拮抗具合が絶妙です。〈クランカー〉や〈ダーウィニスト〉というネーミングもいいですね。クランクを回す機械大好きだからクランカー。ダーウィン進化論を文明の基礎技術にもってきているからダーウィニスト。と、お互い相反する主義主張や宗教観のぶつかり合いもおもしろい。


で、お話のほうは、〈クランカー〉側に属する、戦争のきっかけになった暗殺事件の被害者である両親を持つ公子アレックと、戦争なんかどうでもいいのだけれど、とにかく空を飛びたいという動機で男装までして〈ダーウィニスト〉の英国海軍航空隊に志願した少女デリンの、両勢力にわかれた二人の少年少女の冒険を視点を交互に切り替えながらすすみます。

どちらの子もとても魅力的で、これからどうなるんだろうってワクワクしながら読み進めれば、だんだん彼らの運命が巨大飛行獣(空飛ぶクジラ)リヴァイアサンでの出会いにつながっていくことがわかります。

もちろん、出会って終わりではなく、二人が合流してからの冒険がこれまたよいのです。

ますます切迫する状況と、スチームパンクばりばりの不思議な二大テクノロジーのぶつかり合いの戦闘描写がいいかんじ!


スチームパンクの紛れもなくSFなのですが、SFうんぬんより少年少女の手に汗握る冒険活劇を読みたいって人におすすめ!

そいでもって異文化のぶつかり合いやそれぞれの考察もしてみたいっていうSF脳にもおすすめできるワクワク本でした。


なお、これは三部作の第一部。やたら続きが気になるところで終わります。これは続きもよまなくっちゃ!!

(おまけのひとこと)

個人的にはあれですね、妙に文化人になっちゃう前(ぉぃ)の宮崎駿監督にアニメ化してもらいたいかんじ! ラピュタにバイオテクノロジー要素と多脚砲台とか出てきたらこんなかんじかなーというお話でした。

Original Post:2018/12/05
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