第3話 ビーチ・ボーイズ(その3)

文字数 1,111文字

※この物語はフィクションです。登場する人物・団体は架空であり、実在のものとは関係ありません。
また、本話には少し過激な表現が含まれます。決してマネしないで下さい。


「隊長に敬礼!」

 レッドの号令で茜に敬礼した僕たち。
 茜はチラッと僕たちの体を見ると「そろそろ外に出しても問題ないか」と小さく言った。

「隊長! 任務でありますか?」

 ブルーが前のめりに質問した。茜は「ああ」というと、会議室の中央に移動した。

「諸君、そのままでいいから聞いてくれ。君たちが一週間トレーニングをしている間、私は福沢の呪いを鎮める方法を垓でシミュレーションしていた」

※垓はスーパーコンピュータの名称です。京の1万倍の処理速度を有しています。国家戦略特別室での茜の業務はプロンプトエンジニアと言えるかもしれません。

 茜は福沢の呪いを鎮める方法について語り始めた。

「ついに、祟り神と化した福沢を完全に抹消する方法を発見した」

「本当ですか?」とブルー。

「ああ、神霊が現世で活動するためには依り代(よりしろ)が必要だ。御神体という場合もあるな。福沢にも依り代がある。依り代を破壊すれば福沢は現世で活動できない。垓でシミュレーションを繰り返した結果、福沢の依り代は三田にあることを発見した」

 大分県出身の福沢なのに、三田(東京都)にあることに疑問を持ったブルー。
「大分ではなく、三田ですか?」と茜に尋ねた。

「ああ、三田のKO義塾大学に設置されている福沢諭吉像だ。あれが依り代になっている」
「あー、あれですか」

 僕もKOの三田キャンパスにある像を見たことがある。

「三田の像を破壊すれば福沢の呪いは完全に消え去る。だから、政府からKO義塾大学に対して福沢の像の破壊を依頼したんだ……」

 続きがありそうな言いぶりだ。

「どうなりましたか?」とブルーは尋ねる。

「撤去しない、これがKO義塾大学、いや、三田会の回答だ。創設者である福沢の像を破壊することはできないと言っている。さらに、政府からの攻撃に備えて、三田会は福沢の像の警備を強化したそうだ」

 政府からの破壊依頼を拒絶したKO三田会。
 政府としては強制的に破壊したい。しかし、日本には信仰の自由、教育の自由がある。
 福沢像破壊の根拠が祈祷師の占いであることから、政府は表立って動きにくい。

「それで、僕たちの任務は?」

 僕たちの不安を代弁してブルーが茜に尋ねた。

「諸君のミッションは、福沢の像の破壊だ。三田会をぶっ潰せーーー!」

「「「「イエッサー!」」」」

 僕たちは2台のタクシーで三田に向かった。
 こうして、僕たちと三田会との戦いが始まった。

【後書き】
KO出身者の方々には申し訳ないと思っています……悪気はありません。
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