第4話 内閣支持率を30%に上げろ!(その1)
文字数 1,397文字
※この物語はフィクションです。登場する人物・団体は架空であり、実在のものとは関係ありません。
チェリー・ボーイズの任命式を終えた僕たち。
他の4人が着替えたから、僕もコスチューム(ピンクのタイツ)に着替えた。
全身タイツの残念なキャリア官僚5人。会議室に座っている。
さて、僕たちの使命は内閣支持率を30%に上げること。
現在9%の内閣支持率を、約2週間で30%にしないといけない。
「茜、何かいい方法はあるの?」と僕は質問した。
「ピンク! 私のことは隊長と呼べと言ったよな?」
高圧的な態度で僕を睨みつける茜(隊長)。
山田(財務省)も僕を睨みつける。
「分かったよ」
「イエッサーだ!」
「イエッサー!」
アウェイの僕は素直に従う。
「諸君、聞いてくれ。内閣支持率を30%にする案だが、既に私が垓でシミュレーションしている。これを見てくれ!」
茜が垓のシミュレーション結果をスクリーンに表示した。
【垓のシミュレーション結果】
①ロシアとウクライナの戦争を終わらせる:支持率 70%
②ガザ地区に救援物資を運び込むボランティアをする:支持率 60%
③現内閣は総辞職し、新内閣が発足する:支持率 40%
僕は垓のシミュレーション結果を見ながら「だよなぁ」と呟く。中途半端な対策では内閣支持率は上がらない。
垓のシミュレーション結果から、難易度が高くなれば内閣支持率が高くなるようだ。
まず、①と②は内閣支持率が30%を超えるものの危険だ。さらに時間が掛かり過ぎる。2週間で戦争を終結させるなんてできるはずがない。それに、桜を咲かせるためには内閣支持率が30%を超えればいいのだから、60%や70%も必要ない。
手頃なのは③であるが、首相は辞めると言わないだろう。
「隊長、①と②は危険じゃない?」と僕は茜に尋ねた。
山田(財務省)に怒られそうだからわざわざ「隊長」と付けた。
「危険かもしれないな。死ぬかもしれん」
「もし、首相が死んだら国際問題に発展するよね?」
他の4人も頷いている。この点については僕と同意見のようだ。
一方の茜は呆れている。
「ピンク、お前はバカか?」
「バカってなんだよ!」
「それはない。例えば、首相がガザ地区にトラックで救援物資を運び込むとしよう。その時に、ドローンでトラックが爆撃されて首相が死亡する」
「首相がドローンで爆撃されるの?」
「そうだ、その時、日本はどういう対応をする?」
山田(財務省)が挙手した。茜は山田に答えるように促す。
「厳重に抗議します!」
「だな。『誠に遺憾』とか言うんだろう」
「そうであります!」
「それで、相手国はどう出る?」
「どう出る……ですか。『あれは我々ではない』とかですかね」
「いいぞ! 『テロ攻撃に巻き込まれた』と言うはずだ」
「いいそうですねー」
「そうだ。そして、テロ組織は『我々ではない』と言う」
「間違いなく言いますね」
「そうすると……誰が本当のことを言っているか分からない」
「分かりませんね」
「つまり、真相は藪の中……」
たしかに、爆撃が誰によるものかについて、日本は情報を持っていない。同盟国や協力国もそれぞれの利害があるから、日本政府に正確な情報を提供しない。
そして、国際社会では「〇〇の爆撃だ!」「いやいや、敵勢力の仕業だ!」と罪のなすり合いが起こる。
日本としてはどの情報を信じて良いか分からない。だから、日本政府は動けない。
<その2に続く>
チェリー・ボーイズの任命式を終えた僕たち。
他の4人が着替えたから、僕もコスチューム(ピンクのタイツ)に着替えた。
全身タイツの残念なキャリア官僚5人。会議室に座っている。
さて、僕たちの使命は内閣支持率を30%に上げること。
現在9%の内閣支持率を、約2週間で30%にしないといけない。
「茜、何かいい方法はあるの?」と僕は質問した。
「ピンク! 私のことは隊長と呼べと言ったよな?」
高圧的な態度で僕を睨みつける茜(隊長)。
山田(財務省)も僕を睨みつける。
「分かったよ」
「イエッサーだ!」
「イエッサー!」
アウェイの僕は素直に従う。
「諸君、聞いてくれ。内閣支持率を30%にする案だが、既に私が垓でシミュレーションしている。これを見てくれ!」
茜が垓のシミュレーション結果をスクリーンに表示した。
【垓のシミュレーション結果】
①ロシアとウクライナの戦争を終わらせる:支持率 70%
②ガザ地区に救援物資を運び込むボランティアをする:支持率 60%
③現内閣は総辞職し、新内閣が発足する:支持率 40%
僕は垓のシミュレーション結果を見ながら「だよなぁ」と呟く。中途半端な対策では内閣支持率は上がらない。
垓のシミュレーション結果から、難易度が高くなれば内閣支持率が高くなるようだ。
まず、①と②は内閣支持率が30%を超えるものの危険だ。さらに時間が掛かり過ぎる。2週間で戦争を終結させるなんてできるはずがない。それに、桜を咲かせるためには内閣支持率が30%を超えればいいのだから、60%や70%も必要ない。
手頃なのは③であるが、首相は辞めると言わないだろう。
「隊長、①と②は危険じゃない?」と僕は茜に尋ねた。
山田(財務省)に怒られそうだからわざわざ「隊長」と付けた。
「危険かもしれないな。死ぬかもしれん」
「もし、首相が死んだら国際問題に発展するよね?」
他の4人も頷いている。この点については僕と同意見のようだ。
一方の茜は呆れている。
「ピンク、お前はバカか?」
「バカってなんだよ!」
「それはない。例えば、首相がガザ地区にトラックで救援物資を運び込むとしよう。その時に、ドローンでトラックが爆撃されて首相が死亡する」
「首相がドローンで爆撃されるの?」
「そうだ、その時、日本はどういう対応をする?」
山田(財務省)が挙手した。茜は山田に答えるように促す。
「厳重に抗議します!」
「だな。『誠に遺憾』とか言うんだろう」
「そうであります!」
「それで、相手国はどう出る?」
「どう出る……ですか。『あれは我々ではない』とかですかね」
「いいぞ! 『テロ攻撃に巻き込まれた』と言うはずだ」
「いいそうですねー」
「そうだ。そして、テロ組織は『我々ではない』と言う」
「間違いなく言いますね」
「そうすると……誰が本当のことを言っているか分からない」
「分かりませんね」
「つまり、真相は藪の中……」
たしかに、爆撃が誰によるものかについて、日本は情報を持っていない。同盟国や協力国もそれぞれの利害があるから、日本政府に正確な情報を提供しない。
そして、国際社会では「〇〇の爆撃だ!」「いやいや、敵勢力の仕業だ!」と罪のなすり合いが起こる。
日本としてはどの情報を信じて良いか分からない。だから、日本政府は動けない。
<その2に続く>