第6話 もう1回、行ってこいやーーー!(その2)

文字数 1,416文字

※この物語はフィクションです。登場する人物・団体は架空であり、実在のものとは関係ありません。
また、本話には少し過激な表現が含まれます。決してマネしないで下さい。

 そんなグリーンを見かねたイエロー(総務省の佐藤)は「じゃあ、僕の案を聞いて下さい」と助け舟を出した。

「おぉっ、いいねー。どういう案?」と僕(ピンク)はイエローに尋ねる。

「ディープフェイクですよ!」

 自信満々にイエローは言うのだが、僕は嫌な予感しかしない。

「首相が『辞任します!』と発言する画像を作るんです」
「へー」
「それを、YouTube、TikTok、X、Instagram、Facebook、Weibo(微博)などで拡散します。そうすると……全世界の人が日本の首相は辞任するものだと思い込み、内閣は総辞職に追い込まれます!」

 聞いていたグリーン(防衛省の鈴木)がボソッと言った。

「それってさー、内乱罪にならない?」

※内乱罪(刑法77条)とは国の統治機構(国会・内閣・裁判所)を破壊する目的で暴動を起こす罪です。日本における国家反逆罪に相当する罪であり、テロやクーデターなどが該当します。

「テロじゃないし、国家を転覆させようという意図はないです。既に首相のフェイク動画はソーシャルメディアに溢れています。これも同じレベルのいたずら動画じゃないかな」とごまかすイエロー(総務省の佐藤)。

 その時、バタンと音とともにドアが開いた。

「イエローーー! ふざけんなよーーー!」

 そこには、鬼の形相の茜がいた。

「お前らはご当地ヒーローだろ?」
「「「「イエッサー!」」」」

「ご当地ヒーローは卑怯な手段を使わないよな?」
「「「「イエッサー!」」」」

 ご当地ヒーローは卑怯な方法で敵を倒してはならない。
 茜のロジックでは、このミッションで違法行為はご法度らしい。

 ビクビクしながら茜を凝視するチェリー・ボーイズ。
 茜は何かを僕たちの前に投げた。刃物のようだけど……包丁かな?

「イエロー、それを拾いたまえ」

 床に転がる包丁を拾ったイエロー(総務省の佐藤)。

「それをもって首相官邸に行くんだ。首相に会ったら、こう言えばいい」

 茜を見るイエロー。

「辞任してくれなかったら、ここで死ぬ!」と切腹のポーズをする茜。

 首相を包丁で脅すのは犯罪だ。内乱罪で死刑になる可能性もある。

 しかし、切腹はテロでもクーデターでもない。
 ただ、自害すると訴えるだけだ……そういうことらしい。

「いやー」と返答に困るイエロー(総務省の佐藤)。

「一人で切腹するのが嫌なのか?」
「はぁ……」

 イエローの反応を見た茜。包丁を4本取り出し、他のメンバーの前に投げた。

「拾え!」

 床に転がる包丁を拾う僕たち。

「もう1回、行ってこいやーーー!」

 そういうと茜は会議室を出ていった。

 ――はぁ、もうやだ……

 ***

 僕たちは着の身着のまま(コスチュームのまま)首相官邸に歩いて行った。

 今回は正面入り口(上側)から中に入ることにした。
 入り口で警備の警察官が金属探知機をレッド(国交省の田中)にかざす。

 “ピーーーーー”

 包丁が金属探知機に反応し、質問を受けるレッド(国交省の田中)。

「こらっ! 待ちなさい!」

 警察官を振り切って走るレッド。
 イエロー(総務省の佐藤)が続いて首相官邸に突入すると、グリーン、ブルーも続いた。

「こらっ! 待ちなさい!」

 ――ちっ、しゃーねーなー

 僕(ピンク)も警察官を避けながら首相官邸に突入した。
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