第4話 再エネ事業をしよう(その3)

文字数 1,227文字

※この物語はフィクションです。登場する人物・団体は架空であり、実在のものとは関係ありません。

 垓のダイジェスト映像はニュース番組を映し出した。
 何人ものレポーターが政治家を追いかけている。

「大臣、太陽光発電施設の土地売却で、入札に参加予定の事業者から金銭を受け取ったと週刊誌の報道がありました。賄賂を受け取ったのですか?」
「あー、あれは賄賂ではありません」

 賄賂ではないと答えた大臣。後ろめたいことはないと言わんばかりに自信に満ちた顔をしている。

「賄賂でなければ何ですか?」
「政治資金団体への寄附です。収支報告書にも記載していますから、何の問題もありませんよ」

 レポーターの質問を余裕でかわす大臣。

「その寄付は太陽光発電事業者への便宜を図った見返りではないのですか?」
「違いますよー。ただの寄附金です。政治資金団体であれば、誰から幾ら寄附金を受取ったとしても、収支報告書に記載して公表していれば違法ではありません」

※政治資金規正法には寄附の年間上限額が設定されており、個人は2,000万円、会社は資本金等に応じて3,000万円~7,500万円です。

 少し前に、政治資金団体が開催した政治資金パーティの収入が収支報告書に記載されていないことが報道された。各方面から裏金と批判があったことから、政治資金団体の収入は漏らさず収支報告書に記載するように政党幹部から指示があったようだ。

 大臣は党の方針に乗っ取った対応をしており、何も悪いことはしていないと主張している。

「実質的に賄賂ですよね?」
「だから、違いますって。たまたま入札予定の民間事業者から寄附金があったんです」
「たまたまですか?」
「そうです。たまたまです。それに、寄附金として受け取ったことを収支報告書において公表しているのですから、賄賂ではありません」
「あくまで賄賂ではなく、寄附金だと言い張るのですか?」
「そうですよ。寄附金です。政治資金団体への寄附金とはそういうものです」
「それは詭弁です!」
「業界団体は自分たちに都合の良いように法案を通してほしいから、政治資金団体に寄附しますよね? 業界団体からの寄附も賄賂になるんですか?」
「ぐぬぬぅぅぅぅ」
「ほら、反論できませんよね。じゃあ、私は急ぎますから、これにて!」

 大臣はレポーターの前から颯爽と去っていった。
 太陽光発電事業者へ便宜を図ることは違法ではない。政治資金収支報告書に寄附だと書けば全てオッケーと解釈されたのであった……

 ***

「後味が悪いわねー」という新居室長に対して、「表に出せば賄賂じゃない。いいやり方だと思うけどなー」と茜。

「まぁ、シミュレーションは結構いい結果が出たじゃない」と新居室長はご機嫌だ。
「そうでしょ」と茜も満足そうだ。

「環境保護団体が可哀そうな気がするけど」と僕が言ったら、「アイツら口だけだろ。金出せよ!」と茜がキレている。

 僕たちはこれを政府に提案すべきだろうか。
 不正の温床になるような気がしてならない……
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