第2話 日本の人口を増やそう!(その1)

文字数 1,951文字

※この物語はフィクションです。登場する人物・団体は架空であり、実在のものとは関係ありません。

 僕は政府への政策提案について考えている。

「日本の国際競争力を強化する」という漠然とした依頼だから、日本のGDPを伸ばすことだと考えることにした。
 GDPを伸ばすためには、「1人当たりGDP」を高めるか「人口」を増やすかのどちらかだ。

 日本は既に人口減少過程に入っている。だから、常識的に考えて「人口」を増やすことは難しいかもしれない。でも、最初から諦めてしまう必要はないと僕は考えている。
 なぜなら、出生率が伸びなくても外国から移民を増やせばいいのだ。

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 移民の話に入る前に、世界の出生率について説明しておこう。
 図表55は国別出生率(女性1人が生涯何人の子供を出産するかを示したもの)のランキングのうち、上位10位までの国、先進国、アジア諸国を抜粋したものだ。


【図表55:国別の出生率】


出所:世界銀行

 出生率の第1位はニジェールの6.82人だ。
 2位以下はソマリア、チャド、コンゴ……と上位10位までのほとんどがアフリカ諸国だ。このランキングからアフリカの出生率が際立っていることが分かると思う。
 つまり、アフリカ大陸は絶賛人口増加中なのだ。

 ちなみに、このランキングの上位10位には入っていないが中東も出生率は高くて人口が増加しているエリアだ。

 次に、アジアを見てみよう。東南アジア、南アジアの出生率はフィリピンが70位で2.7人、インドネシアが95位で2.17人、インドが101位で2.03人となっている。この辺りまでが人口が増加している国だ。
 マレーシアの出生率は1.8だから既に人口減少過程に入っている。さらに、タイは1.3だから人口減が深刻な状況にある。

 先進国の出生率はフランスが112位で1.83人、アメリカが133位で1.66人、ドイツが147位で1.58人、イギリスが152位で1.56人となっている。イタリア、スペインは184位(1.25人)と185位(1.19人)なのでさらに低い。
 先進国の出生率は2を割っているから、自然に人口が増えない。

 特に日本を含めた東アジアの出生率は極端に低い。ランキングの抜粋の最下位付近はほぼ東アジア諸国だ。
 日本の出生率は183位で1.3人、中国が186位で1.164人、シンガポールが189位で1.12人、韓国が191位で0.8人、香港が192位で0.77人だ。
 中国は1979年から2014年まで実施された一人っ子政策によって出生率が低かったのに加えて、近代化してからは教育費が高くなって子供の数が増えなかった。

 ちなみに、出生率は1人の女性が生涯何人の子供を産むかを表しているから、2人未満であれば人口が減少することを意味する。この点から、インドが辛うじて人口を維持しているものの、全ての先進国、アジア諸国のほとんどは人口減少過程に入っているといえる。

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 日本の出生率は1.3人だから先進国の中でも低い部類に入る。でも、先進国の中で少子化対策を頑張っているフランスでも出生率は1.83人だ。
 日本政府がどれだけ少子化対策を頑張っても、出生率が2を上回ることは期待できないだろう。

 日本政府は少子化対策を何もしていないわけではない。例えば、少子化対策に繋がる子育て支援策として様々な施策を採用している。

 最近の子育て支援策では、児童手当の支給対象を18歳(高校生)までに延長し、所得制限を撤廃、第3子加算を行うように変更した。育休取得については育休時の手取りが維持できるための制度を作った。出産費用については保険適用に変更し、保育所利用要件の緩和、住宅ローン金利の優遇などを変更している。
 日本政府が少子化対策をしていないわけではない。子供を出産し、育てやすい環境を作ろうとしているから、出生率が少しは上向くのかもしれない。
 ただ、出生率が2を上回ることはないだろう。

 僕が考えた人口増は移民によるものだ。
 例えば、G7の中でカナダは特殊な人口政策を採用している。
 カナダの出生率は1.43人(168位)で高くはない。しかし、カナダは外国からの移民を大量に受け入れることによって人口を増加させている。
 カナダの人口は3,800万人。その国民の4人に1人が移民だ。
 カナダ政府は今後も年間50万人の移民受け入れを表明している。だから、移民によってカナダの人口は増えていく見通しだ。

 先進国では自国の出生率を高めようと努力しても人口増加は望めない。
 出生率の低い先進諸国は、他の発展途上国から人を奪ってくるしか人口を増やす方法がないのだ。

 僕は、日本の人口を増やすためには、カナダと同じ移民戦略を採用するしかないと思っている。

<その2に続く>
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