第3話 ビーチ・ボーイズ(その2)

文字数 1,201文字

※この物語はフィクションです。登場する人物・団体は架空であり、実在のものとは関係ありません。
また、本話には少し過激な表現が含まれます。決してマネしないで下さい。

「レッドとピンク、これを飲んでから腹筋100回!」
「イエッサー!」

 僕たちはプロテイン・ドリンクを渡された。
 順番が逆(運動→プロテイン)だと思うが、怖くて言い出せない僕はプロテイン・ドリンクを飲んで腹筋を始めた。

「……99、100。終わったー!」

 僕が隣を見渡すとブルー、グリーン、レッドはまだ腹筋をしていた。

「ピンク、5分休憩。その後、ベンチプレスだ。イエロー、手伝ってやれ!」
「イエッサー!」

 僕が腹筋をしている間に、会議室に運び入れられたトレーニング器具。
 イエローがプレートをシャフト(バー)に設置してくれた。

「まず、50キロからでいいっすか?」
 イエローが僕に確認してきたから「いいよ」と答えた。

 僕がベンチに仰向けになると、イエローはバーをラックから下ろした。

「……9、10!」
「1セット終わりです。志賀さん、5分休憩してから2セット目いきますよ!」

 僕たちの専属トレーナーとなったイエロー。
 イエローは手慣れた手つきで次のレッドのトレーニングの準備をしていた。
 イエローはいつも一人でトレーニングをしているのかもしれない。トレーニング仲間ができてとても楽しそうだった。

 前を見ると、ブルー、グリーンは腹筋100回の2セット目に突入していた。

 彼らは筋肉をつける前に腹を引っ込めないといけないのだ。
 政府の広報用SNSに出ても恥ずかしくない体を作るために。

 ***

 それから1週間、水着で政府の広報用SNSに出ても恥ずかしくない体形を作るため、僕たちのトレーニングは続いた。

「志賀さん、おはようございます! 見てくださいよ。大胸筋が動くようになったんです!」
「おー、すごいなー!」
「いやー、ボディーメイクがこんなに楽しいと思いませんでした。筋肉は裏切らない、ですね!」
「だな」

 ボディーメイクを通して、僕たちは人として一回り大きく成長したような気がする。
 最初は嫌々だった筋トレ。だけど、続けていくとその努力が報われるのが実感できる。
 実に素晴らしい。

 筋トレ最高!!

 僕が妄想していたらブルー(財務省の山田)がやってきた。
 ブルーは最近メガネからコンタクトに変えた。
 それが功を奏したのか、同じ部署の女性から「山田さん、素敵になりましたね」と言われて浮かれている。

「ボディービルの全国大会があるらしいです。東京大会は2週間後なんですけど、志賀さんも一緒に出ませんか?」
「いいねー」
「なんなら、ビーチ・ボーイズ全員で出場しませんか? お揃いの水着とマスクで出場したら目立ちますよ」

 ビーチ・ボーイズが大会で入賞したら、政府広報用のSNSが盛り上がることだろう。
 僕たちが雑談していたら、茜が会議室に入ってきた。

<その3につづく>
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