第5話 プランB(その2)

文字数 1,729文字

※この物語はフィクションです。登場する人物・団体は架空であり、実在のものとは関係ありません。また、本話には少し過激な表現が含まれます。決してマネしないで下さい。


 僕たちが実行したプランBによって福沢の怒りは鎮まり、日本経済は徐々に回復していった。

 僕たちビーチ・ボーイズは日本を未曽有の不況から救ったヒーローだ。政府広報の一環として僕たちのドキュメンタリー番組が制作されることになった。

 福沢像の襲撃ミッションで僕たちの動画はバズった。拡散された動画は最終的に1億回再生にまで達していた。
 僕たち(ビーチ・ボーイズ)は有名になった。しかし、日本国民は僕たち(ビーチ・ボーイズ)が何者なのかは知らない。
 このドキュメンタリー番組は、ビーチ・ボーイズの活動を日本国民に知ってもらうためのものだ。

「「「「「霞が関のご当地ヒーロー ビーチ・ボーイズ!」」」」」

 カメラを前に完璧なポージングをする僕たち。
 二郎後のリバウンドはあったものの、僕たちは筋トレを続けてマッチョなボディを維持している。

 レポーターは僕たちにインタビューを始めた。国民には不況の原因が開示されていなかったから、まず、そこから説明することになる。
 インタビューには年長者として僕(ピンク)が答えた。

「……というわけで。福沢の怒りを収めることが重要だったのです」

 レポーターは半信半疑で僕の話を聞いていた。まあ、そうだよね。

「不況の元凶が福沢諭吉……知りませんでした」
「公表していませんからね。ちなみに、どうやって福沢の怒りを鎮めたか知りたいですか?」
「もちろんです。是非お願いします!」

 僕の提案にレポーターは前のめりになった。僕は嬉しくてしかたない。

「じゃあ、実際にお見せした方が早そうですね」
「見せる……ですか?」
「ええ。今からみんなで昼メシを食べに行く予定なんですけど、一緒にどうですか?」
「はあ」

 レポーターはカメラを撮りながら、僕たちと一緒に食堂に向かった。
 食堂に向かう間に、霞が関で勤務する職員と何度もすれ違った。
「頑張れー」という声がチラホラと聞こえる。
 霞が関のご当地ヒーロー「ビーチ・ボーイズ」。その一員になれて僕は誇らしい。

 食堂に着いた。

「この食堂は、先に券売機で食券を買うんです」

 僕は説明のために食券機にお金を入れて、Aランチのボタンを押した。
 続いてレポーターがお金を入れて食券を買おうとしたタイミングで僕は言った。

「ほら、ここ見てください!」

 僕は食券機の貼り紙を指した。

 【新一万円札は使えません】

「あー、最近、都内でよく見かけるようになりましたね。コンビニのレジにも新札が使えないと貼り紙があります」
「実は、都内だけではなく全国でこの貼り紙があります」
「全国ですか?」
「ええ。5人で全国のコンビニ、スーパー、食堂、銭湯、あらゆる場所を行脚して貼りました。新札が使えないのはシステム更新が間に合わないと報道されていますよね? あれ、嘘なんです」
「えぇっ? どういうことですか?」
「日本全国の自動販売機、レジは新札に対応しています。でも、この貼り紙を見たら旧札しか使えないと思うので、福沢の一万円札を使います」
「たしかに……ATMで新札が出てくるとガッカリしますね」
「そうでしょ。みんなが旧札を喜んで使うようになったら、福沢は機嫌を直してくれたんです。まだまだ、渋沢に負けていない、ってね」

 こうして、僕たちビーチ・ボーイズは祟り神である福沢諭吉を鎮魂することに成功したのであった。

 ***

 数カ月後。
 日本に再び景気が悪化し始めた。福沢の呪いを鎮魂して景気が回復したはずなのに……日本政府は原因を調査した。
 日本政府は不況の原因を調査したものの明確な理由は分からない。焦った政府高官は、再び祈祷師に日本の不況から脱却するために祈りを捧げることを依頼した。
 祈祷師は日本の不況の元凶について語った。

「渋沢の呪いじゃ」

<おわり>

【後書き】
番外編「祟り神「福沢」を鎮魂しろ!」はこれで終わりです。お付き合いいただきありがとうございました。
なお、番外編において福沢諭吉、慶應義塾に似た学校が登場しておりますが、筆者に特段の悪意はありませんので、念のために申し添えます。

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