第4話 コングロマリット・ディスカウントを解消しろ!(その3)
文字数 1,881文字
※この物語はフィクションです。登場する人物・団体は架空であり、実在のものとは関係ありません。
垓のダイジェスト映像は株価の動きを示している。
親会社よりも子会社の方が事業や業績が複雑ではなくて分かりやすい。このため、投資家は積極的に子会社株式を購入した。
海外投資家も上場子会社の株式を買ったことによって日本の株式市場に資金が集まった。日経平均株価もつられて上昇している。
子会社上場の結果、日経平均株価は4万5,000円目前まで上がった。
ダイジェスト映像はあるニュース番組を映し出した。ニュース22だ。
番組ではキャスターの質問に対して専門家が親子上場の是非について解説している。
「最近、子会社の上場が増えていて、それが理由で株価が上がっていると聞きます。以前は違ったようですが?」とニュースキャスターが専門家に質問する。
「そうですね。今までは上場子会社を非公開化するのが主流でした。例えば、日立は上場子会社を全て非公開化しましたし、他にも多くの会社がその流れにのっていました。それが今は逆の動きをしています」と専門家は答えた。
「上場企業が真逆の行動をする理由は何だと思いますか?」とキャスターは尋ねた。
「うーん。上場子会社は親会社の言いなりですから、少数株主の意向が反映されません。だから、親子上場はガバナンス上問題があると言われていました。考えられるとすると、資金調達目的で子会社を上場させた……とかですかね」
ニュースキャスターは専門家の回答を踏まえて質問する。
「わざわざ問題が指摘されている親子上場の必要はない。なのに、子会社を上場させるということは……深刻な資金難に陥っている。そういうことでしょうか?」
「どうでしょうねぇ……その可能性はあると思います。ただ、かなりの数の大企業が子会社上場を検討していると聞いています。資金が潤沢な大企業も検討しているようですから、資金調達だけが目的ではないのかもしれません」
子会社上場の理由を専門家なりに推測して説明したものの、確証はないようだった。
**
その日の夜、インターネットの掲示板で子会社上場をしているソ〇ーについて議論されている。
『ニュース22で見たけど、ソ〇ーが資金難だって』
『倒産?』
『秒読みらしいよ』
『子会社を上場させる会社は売りだな』
その後も書き込みが続いていた。
**
垓のダイジェスト映像の場面が変わった。
ニュース22が放送された翌日、株式市場が始まる前の地場証券会社。
板情報を見ていた営業部長が部下に話しかけた。
「ソ〇ーの売り気配、何かあったのか?」
「あー、それですね。昨日、ニュース22で倒産するんじゃないかって言っていたらしいです。それで、株主は一斉に売りに出したみたいですね」
「日〇も売られてるけど、同じ理由か?」
「そうだと思います。倒産の噂がありますから、今日はストップ安じゃないですかね」
営業部長はスマホでニュース記事を検索している。部下に尋ねる。
「ニュース22では「倒産」なんて言ってないぞ」
「倒産情報はネットの掲示板です。そこでは、ニュース22でソ〇ーの倒産の書き込みがあったらしいですね」
「うちの顧客も売らせた方がいいか?」
「どうでしょうね……倒産することはないと思いますけど……しばらく株価は下がりそうですね」
営業部長は少し考えてから部内に届くように大声で言った。
「顧客に持ち株を処分するように伝えろ!」
部下たちは一斉に顧客に電話をし始めた。
『ええ、倒産の噂が出ていまして』
『情報が正しいかどうかは分かりません』
『一斉に売りが出ています』
『損失を回避するには売却した方がいいですね』
**
大型株が売られたことによって株価指数は低下し、外国人投資家も一斉に資金を引き揚げ始めた。その日から日本の株式市場は暴落していく。
日経平均株価は4万5,000円を付けたのを最後に、4万円、3万5,000円、3万円と下がり続けた。
急激に冷めた株式市場には資金が戻ってこないから、日経平均株価はしばらくの間停滞を続けた。
日経平均株価が再び4万円を超えたのはニュース22が放送されてから半年後のことであった。
***
垓のダイジェスト映像を見ていた僕は「ダメじゃん」と茜に言う。
「おかしいなー、途中まで調子良かったんだけどなー」
コングロマリット・ディスカウントの解消は案として悪くなかったと思う。
でも、何が起こるか分からないのが株式市場だ。なぜか投資家の間に変な憶測が出回ってしまった。
不確定要素が大きいから、僕たちはこの案をペンディングにすることにした。
垓のダイジェスト映像は株価の動きを示している。
親会社よりも子会社の方が事業や業績が複雑ではなくて分かりやすい。このため、投資家は積極的に子会社株式を購入した。
海外投資家も上場子会社の株式を買ったことによって日本の株式市場に資金が集まった。日経平均株価もつられて上昇している。
子会社上場の結果、日経平均株価は4万5,000円目前まで上がった。
ダイジェスト映像はあるニュース番組を映し出した。ニュース22だ。
番組ではキャスターの質問に対して専門家が親子上場の是非について解説している。
「最近、子会社の上場が増えていて、それが理由で株価が上がっていると聞きます。以前は違ったようですが?」とニュースキャスターが専門家に質問する。
「そうですね。今までは上場子会社を非公開化するのが主流でした。例えば、日立は上場子会社を全て非公開化しましたし、他にも多くの会社がその流れにのっていました。それが今は逆の動きをしています」と専門家は答えた。
「上場企業が真逆の行動をする理由は何だと思いますか?」とキャスターは尋ねた。
「うーん。上場子会社は親会社の言いなりですから、少数株主の意向が反映されません。だから、親子上場はガバナンス上問題があると言われていました。考えられるとすると、資金調達目的で子会社を上場させた……とかですかね」
ニュースキャスターは専門家の回答を踏まえて質問する。
「わざわざ問題が指摘されている親子上場の必要はない。なのに、子会社を上場させるということは……深刻な資金難に陥っている。そういうことでしょうか?」
「どうでしょうねぇ……その可能性はあると思います。ただ、かなりの数の大企業が子会社上場を検討していると聞いています。資金が潤沢な大企業も検討しているようですから、資金調達だけが目的ではないのかもしれません」
子会社上場の理由を専門家なりに推測して説明したものの、確証はないようだった。
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その日の夜、インターネットの掲示板で子会社上場をしているソ〇ーについて議論されている。
『ニュース22で見たけど、ソ〇ーが資金難だって』
『倒産?』
『秒読みらしいよ』
『子会社を上場させる会社は売りだな』
その後も書き込みが続いていた。
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垓のダイジェスト映像の場面が変わった。
ニュース22が放送された翌日、株式市場が始まる前の地場証券会社。
板情報を見ていた営業部長が部下に話しかけた。
「ソ〇ーの売り気配、何かあったのか?」
「あー、それですね。昨日、ニュース22で倒産するんじゃないかって言っていたらしいです。それで、株主は一斉に売りに出したみたいですね」
「日〇も売られてるけど、同じ理由か?」
「そうだと思います。倒産の噂がありますから、今日はストップ安じゃないですかね」
営業部長はスマホでニュース記事を検索している。部下に尋ねる。
「ニュース22では「倒産」なんて言ってないぞ」
「倒産情報はネットの掲示板です。そこでは、ニュース22でソ〇ーの倒産の書き込みがあったらしいですね」
「うちの顧客も売らせた方がいいか?」
「どうでしょうね……倒産することはないと思いますけど……しばらく株価は下がりそうですね」
営業部長は少し考えてから部内に届くように大声で言った。
「顧客に持ち株を処分するように伝えろ!」
部下たちは一斉に顧客に電話をし始めた。
『ええ、倒産の噂が出ていまして』
『情報が正しいかどうかは分かりません』
『一斉に売りが出ています』
『損失を回避するには売却した方がいいですね』
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大型株が売られたことによって株価指数は低下し、外国人投資家も一斉に資金を引き揚げ始めた。その日から日本の株式市場は暴落していく。
日経平均株価は4万5,000円を付けたのを最後に、4万円、3万5,000円、3万円と下がり続けた。
急激に冷めた株式市場には資金が戻ってこないから、日経平均株価はしばらくの間停滞を続けた。
日経平均株価が再び4万円を超えたのはニュース22が放送されてから半年後のことであった。
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垓のダイジェスト映像を見ていた僕は「ダメじゃん」と茜に言う。
「おかしいなー、途中まで調子良かったんだけどなー」
コングロマリット・ディスカウントの解消は案として悪くなかったと思う。
でも、何が起こるか分からないのが株式市場だ。なぜか投資家の間に変な憶測が出回ってしまった。
不確定要素が大きいから、僕たちはこの案をペンディングにすることにした。